表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/267

56:連邦国の実状






 カルロスト連邦国。


 大陸内で唯一、奴隷制度を設けている国。

 その国土は大陸一だが、それ程発展しておらず、人口も、アルゾナ王国やサルラス帝国の方が多かった。



 その昔。カルロスト連邦国が成立する前。

 そこには、国力の小さい小国が沢山集まっていた。

 その中でも一際国力が大きく、とりわけ国土も大きかった国がある。

 その国の名は、ギャリグローバ共和国。

 小国群の中では、最強の国であった。


 だがある日その小国群は、サルラス帝国からやって来た帝国国家とも商売を行なっている商人に、不法占拠された。

 そしてその商人は、帝国から連れてきた魔法師で国民を殺し、黙らせ、その小国を全て統合し、カルロスト連邦国を成立させたのが、この国の始まりであった。


 そして、ビルクダリオと呼ばれる原住民は、突如現れた帝国民によって定められた身分法で奴隷階級と設定され、その生活は窮困を極めた。

 元々あった小国はスラムと化し、連邦国中央付近の小国は、そこにいたビルクダリオを全員殺して街を造られ、今やこの国の首都、ジズグレイス(別称:中央都市.貴族都市)となり、そこには、サルラス帝国からやってきた移民が、平民階級、または貴族階級として何不自由ない生活を送っていた。


 奴隷階級となったビルクダリオは、度々そこに訪れる連邦国政府の人間に、一人、時によっては複数人ジズグレイスへと連行され、奴隷として働く事を強制させられる事があった。

 人々は日々、その恐怖に耐えながら、生活していたのだ。


 その連行された奴隷の行き先と言うのは、大まかに言うと三つあった。

 一つは、国王(初めに不法占拠した商人)の()()()()となる。つまり、王城に居ると云うもの。

 これは主に女性が多く、国王の欲求不満の解消の為の道具と言った方が分かりやすいか。

 そして二つ目が、ジズグレイスに住む平民や貴族に買われるパターン。

 この場合の処遇は奴隷の売却先によるが、このパターンでも、やはり女性が大多数を占めていた。

 そして三つ目が、サルラス帝国への出荷。

 国王は元々サルラス帝国の商人だった為、帝国との繋がりがあった。

 それを使って国王は、サルラス帝国に自国の奴隷を売っているのだ。

 此方は主に男性が重宝される。

 主な利用用途としては、帝国の国力増強や軍事力強化や、戦争の時の囮などだろう。

 少なくとも、良い待遇が受けられる事は無い。


 国王の名は、ジャーナ・カルロスト。

 身勝手な王であった。







 ――――――――――――――――――








 更地と化した故郷。

 そこでエルダは、自分の名を知る、見知らぬ女性に声をかけられた。


「サラナ…………さん?」

「呼び捨てで結構です。エルダ様。」


 またその名を呼んだ。

 エルダは、この女性を知らない。

 なら何故、自分の名前を知っているのか。

 先の戦争で名が広まったとか?

 はたまた、ただ一人の浮遊魔法師として大陸全土がマークしつつあるとか。

 だが、自分がそこまで有名人になった訳では無いだろうから。なら尚更、この女性、サラナは、どう言った手段でエルダの名を知ったのだろうか。

 謎は深まるばかりである。


「エルダ様は、此処で何があったか、ご存知ですか?」

「いいや、知らないが………………」


 サラナが、とても静かに、冷徹に話す彼女は、何処か自分を心の奥底に閉まっている様で、話していてとても擬かしさを感じた。


「三週間ほど前。此処らに住んでいたビルクダリオ全員が、サルラス帝国へ売却されたのです。そして誰も居なくなったので、連邦国政府は、此処を更地にする様命じたのです。」


 サラナは淡々と、そう話した。



 サラナから詳しく話を聞くと、売却された故郷(ここ)のビルクダリオは、サルラス帝国軍として、アルゾナ王国への侵攻時に使ったそう。

 その時のビルクダリオの安否は不明。

 抑も、奴隷の安否など、誰も確認していなかった。


 大体の奴隷売却は、前触れも無く、突然連行されるが、今回はその中でも最悪の例である。

 此処に居た人間を、一人残さず地獄へ送り込んだ政府の考えている事が解らない。

 きっと、生涯一度も、分かり合える事は無いだろう。

 出来れば、この国の貴族には会いたく無いな。

 エルダは切にそう願った。


「…………で、サラナは何故此処に?」


 エルダはサラナに問いかけた。

 更地にされた故郷に、サラナは住んでいなかった。

 顔を見かけた事も無かった。

 じゃぁ何故、わざわざ此処まで出向いたのか。

 サラナは、今まで更地に向けていた体を、エルダの方へと向けて言った。


「エルダ様にお願いがあって来ました。」


 サラナの顔を見る限り、真剣な願いである事は直ぐに理解出来た。


「この国を、カルロスト連邦国を、ぶっ壊して欲しいのです。」









 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ