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27:王都へ






 エルダは、門兵に渡されたギルシュグリッツへの地図と、その中にある市場までの地図を片手に、キョロキョロと周りを見ながら歩いていた。




 門兵の話だと、門の近くにある駅から走る路面電車で、約六時間程かかるそう。

 それでも早い方で、歩きで行こうとすれば、三日はかかるらしい。

 路面電車という存在は知っているが、実際見たこともなく乗ったこともないので、今回が初めてである。


 門から徒歩十分。

 なにやら、長細い建造物が見えて来た。

 そこに、人だかりができている。



 エルダは、グルダスから路面電車の使い方は習っていたので、ある程度は知っている。

 まぁ、使い方と言っても、ただ単に駅に来た路面電車に乗り組むだけだが。

 乗車料金は発生しない。

 路面電車は完全に国営化されたものなので、その運転手の給料も、税金から(まかな)われる。



 エルダもその人だかりを掻き分けて、何んとか電車に乗り込んだ。

 そしてそのまま、電車に揺られて、エルダは、ギルシュグリッツへと向かっていった。


 浮遊魔法で行く方が早いと感じるだろうが、目立つのは避けたかったので、公共交通機関を利用する。





 出発はもう既に夕暮れだったので、数時間経った今、日は落ち、辺りは暗がりに覆われていた。

 路面電車も止まり、エルダは、降車を余儀なくされた。

 夜も進めると思っていたエルダは、突然追い出された事に困惑した。


 もう既に夜中。

 当然、今から泊まる宿を見つけなくてはいけない。


「どこかになぁ………………あったらなぁ………………」


 そんなことを考えていると、道の傍らに、宿屋を見つけた。


「ラッキー」


 そう呟きながら、エルダはその宿屋へと入っていった。




「らっしゃい。」


 図太い男の声が、木造のロビーの中で響いた。

 エルダがドアをゆっくりと閉め、料金表と自分の財布を照らし合わせた。


「…………一泊七百ギールだ。」


 男が、静かな声で言った。


「なら一泊で。」

「まいど。」


 そう言ってエルダは金を払い、部屋の鍵を貰った。

 そんなエルダの視界の中に、受け付けの近くに立て掛けててある新聞が入った。

 見出しを見ると、『サルラス宣戦。』と、見たことも無いほどに大きな文字で書かれてあった。


「すいませんが、この『サルラス宣戦』っていうのは何なんですか? 暫く国を離れていたので知らなくて。」

「そんな事も知らないのかい? ったく、世間知らずも居たもんだな。いいだろう。私も今は暇だから。」


 いちいち癪に触る言い方をする男だったが、今の情勢を知ることが出来るなら、丁度いい。


「一週間前。突然、サルラス帝国がアルゾナ王国に向けて、宣戦布告をして来た。目的はどう考えても、帝国の領土拡大だろう。ったく。こちとら、戦争準備やらサルラスからの物資供給のストップのやらで大変なんだよ。物価も上昇し続けるし。もう散々だ。」


 男が、深いため息をほぉっと吐いた。


「すまんすまん、話がそれた。そんで王国政府は、国民(おれたち)に向けて、国民兵の募集をかけた。報酬金は百万ギールだとよ。」

「百万ギール?! こりゃまた大層な金額ですね。」

「あぁ。でもまぁ、そんくらいしないと兵が集まらないんだよ。ったく。軍用費でもう金が無いってのに……」


 男はまるで、兵を集めたのが自分であるかのような口振りで話した。


「まぁ、今のこの国の状態はそんな感じだ。分かったかな?」

「あぁ、ありがとう。」


 そう言いながらエルダは、そっと男の前に七百ギールを置いて、


「一泊頼む。」


 と言い、部屋へと続く階段を登っていった。



 部屋に入った。

 壁 床 天井全て木造で、ベットも下は木で出来ている。

 その上に、高そうな布団と毛布が綺麗に乗っかっていた。

 部屋の広さは、一つで止まるにしては少々大き過ぎる程の大きさで、ベットも合計四つ程置いてあった。

 洗面台やトイレも清潔で、お風呂は無かった。

 入るなら、大浴場などに行かないと入れない。

 それであっても、この質で七百ギールなら、とても安い。

 良い宿を見つけた。

 そう思いながらエルダは、一番奥の、窓から月が見える位置で、深い眠りについた。






 次ぐ日。


「……よく眠れたか?」


 階段から降りてきたエルダに、受付の男は声をかけた。


「あぁ、お陰様で。」

「なら良かった。」


 そう言いながらエルダは、扉に手をかけた。


「もう行くのか?」

「生憎、この後、ギルシュグリッツに用事があるもので。」

「そうか。行ってらっしゃい。」

「はい。行ってきます。」


 そう言いながらエルダはにこやかにし、宿を後にした。


 その後、目の前を走り過ぎようとする路面電車を見つけたので、浮遊魔法で自分の背中を押して加速しながら、その路面電車に乗り込んだ。



 数時間後。



「ここが……………………!!」


 路面電車を降りたエルダが目の当たりにしたのは、今まで見てきた街並みとは賑わいの次元の違う場所。


 そう。此処こそが、アルゾナ王国王都、ギルシュグリッツ。

 大陸一の、科学技術発展都市だ。

 

 






 

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