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26:進行する窮困

七月だ!

日付け的にも夏っぽくなって来た!

(これを書いているのは、6/14の火曜日です。)





 サルラス宣戦対策会議の次ぐ日。

 アステラが危惧していた通り、この日から、帝国からの物資の供給がストップした。

 これにより、帝国物資を買ってアルゾナ王国で売っていた者たちが職を失い、それにより様々なサルラス帝国物資で作られていた物の生産がストップした。

 そして、王国内の工場の生産量が著しく低下し、王国国民への一部物資の供給が行き届かなくなった。


 そしてその一週間後。

 市場に並ぶ物は全てアルゾナ王国産の物のみになり、元々サルラス帝国産の材料を使用していた工場もアルゾナ王国産の材料を使用するようになったので、必然的に物価が上がり、国民の生活が窮困した。

 その頃王国政府は、南部に住む国民の避難場所とする建物の建築に着手していた。

 だが、物資不足はここにも及び、深刻な木材不足となった。

 建設が一時ストップし、只々時間だけが過ぎた。


 そして物価上昇が深刻化する今、アステラは、全国民に向けて、国民兵の募集を呼びかけた。

 王国中の号外や、未だあまり普及していない無線放送で、全国民へと呼びかけた。

 その内容はこうだ。


『サルラス帝国の宣戦布告により、物資の供給停止が深刻化している今。私たちは、我が国を守ってくれる勇敢な国民兵を募集する。勿論、戦争中に、命を落としてしまうかもしれない。だが、命を賭して戦い、生きて帰ってくれば、他の国民からの名声が轟くだろう。

 しかし、何の報酬も無しに兵を志願するのは無理な話である事は、此方も重々承知している。そう思い、我が王国政府は、今回の国民兵志願の報酬として、一人百万ギールの報酬金を与える。志願したい者は、下記の申込書に必要事項を記入の上、ギルシュグリッツの兵まで。』


「百万ギール?!」


 その額を聞いた国民は、目を擦り、その文字が本当なのかを何度も確認した。


 ギールというのは、アルゾナ王国の通貨単位で、パン一本分が10ギール程度と言われている。

 それが百万ギール。

 それ程の金があれば、家が一軒余裕で買えるほどの、高額な報酬金であった。

 そしてその金額は、アルゾナ王国の今あるお金で出せる、最高額であった。



 翌日。

 ギルシュグリッツの訓練場に集まった志願兵は、約四十人程度。

 軍事力としては微々たるものかもしれないが、それでも、いるかいないかでは戦況が大きく変わってくる。


「えー初めまして。アルゾナ王国軍総長を務めております、ルーダ・グシャルダと申します。以後お見知り置きを。」


 志願兵の前で、ルーダは喋った。


「先ず、戦争中の君たちの仕事について説明します。

 君たちの仕事は、怪我人の救護。なのでこれから受ける訓練は、救護に関するものとなります。宜しく頼みます。」


 そう言ってルーダは、その場を去った。

 その後訓練場入り口から、ルーダと入れ替わるように、肩幅の広く身長も高い、“ゴツい”男が入ってきた。


「これから暫く、君たちの教育を仰せつかった、ガラブ・ビューレと言う。こんな体格なので戦闘員と間違えられるが、こう見えても、王国軍救護師団の師団長だ。宜しく頼む。」


 そう言って、肉厚の手を掲げた。

 その時。


「ガラブ。ちょっと来てくれますか?」


 さっきの入り口から、ルーダが手招きをしている。

 ガラブは指導を一時中断し、ルーダの元へ行った。


 暫くして、ガラブは志願兵の前に立ち、言った。


「すまない。今から私に、重要命令が下った。ので、これから私が帰るまでのお前達の指導は、ルーダが行う。すまんな。」


 そう言ってガラブは、颯爽とこの場を去った。

 そしてこの日から、国民志願兵の教育が始まった。

 そしてその志願兵の中には、グルダスもいたのだった。

 


 

 アルゾナ王国の財政難の原因の多くは、避難所建設の資材費だった。

 全て木材で作り低コストを狙う筈が、サルラス帝国からの物資供給ストップの影響で、木材不足が深刻化していた。

 そんな時だった。


「国王! 大変です!」


 玉座に突然、アルゾナ王国財務課課長、ペルト・マークヒッツがやって来た。


「ギルシュグリッツの中央市場に、大量の木材が販売されています! それも、ギルシュグリッツの半分の面積を埋め尽くす程の量の!」

「何だと?!」







 ――――――――――――――――――








 一週間前



「久しぶりに来たな。アルゾナ王国。」


 エルダは、大量の木材を浮遊させたまま、王国門の前に来た。

 あまりの木材の多さに、門兵が口をパクパクしていた。


 その時、ある門兵が、エルダに話しかけた。


「エルダ様ですよね。その木材は、一体どうするおつもりで?」

「別に必要無かったので、この国で全て売り払おうをと思ったいたのだが。」

「それなら早くしてくれると嬉しい。出来れば、『ギルシュグリッツ』って街の中にある市場に売って欲しい。」

「何故……?」

「まぁ、何故かどうかは、その売った店で聞いてくれ。」

「わかった……」


 その門兵の発言の意味が、今のエルダには分からなかったが、取り敢えず、あんな量の木材を持っていく訳にもいかないので、品質確認のための木材以外は、アルゾナ王国前においておく。

 エルダが不在の間は、その門兵が木材を守っていてくれる。

 アルゾナ王国の国兵犯罪は罪が重いので、わざわざ木材を盗むなんて愚行には及ばないと考えたエルダは、特に躊躇いもせずに、木材を放置していった。






――――――――――――――――――――――







 一週間後王宮。


「ペルト。その木材を、建設に十分足りる量、購入しておけ。」

「りょーかいです!」


 そう言いながらペルトは部屋を飛び出し、木材購入の手続きをし始めた。




 ここから、アルゾナ王国の戦争準備は急速に進んでいくこととなる。











 

 

 

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