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159:Dream of Journey








 後メルデス大森林と言えば……

 リカルと、色んな事を話したな。

 リカルの思い出話とか、友達がどう……とか。

 あの時は楽しかったし、オーザック以外で初めて出来た友達だったから、嬉しかった。

 それに、リカルとの距離も、その一件のおかげで縮まった。

 嬉しかった。

 高揚した。

 人と関わるのが、話すのが、楽しかった。

 このまま時間が止まって仕舞えばいい。

 本気でそう思う程に、嬉しかった。

 そんなメルデス大森林は、今や焼け野原。

 思い出もクソも全部無くなってしまった。

 心にぽっかりと穴が空いてしまったようだ。

 思い出は残っているのに、思い出が感情の無い只の事実の羅列の様に、無機質なものとなってしまった。

 生きる意味を見失ったかの様な。

 この世への期待を失念したかの様な。

 兎に角、落ち込んだ。






 カルロスト地区。

 元はカルロスト連邦国という名で、サルラス帝国の属国的な位置にいた。

 だが今はアルゾナ王国の一部となり、アリゾナ王国人として、元ビルクダリオは生きていた。

 いや、“今”では無い。

 嘗て、だ。

 今は何もかもが無くなった焦土と化している。

 嘗ての我が故郷も。

 元々連邦国時代の王の意思で俺の故郷は更地と化していたのだが、その時よりも、今は荒廃している。

 ただの更地と、ボロボロの更地。

 その差は無い様でとても大きい。

 ただの更地であれば王政を憎んだ。

 だが今は。

 とても寂寥感に(まみ)れている。

 とても此処に我が故郷が在ったとは思えない。

 ――静かだ。

 ――とても静かだ。

 ――静か過ぎて、耳が痛くなる。

 此処では色んな事があった。

 サラナと出会って。王政打倒を依頼されて。

 グリリアと再開して、ギニルとも会って。

 そして皆んなで孤軍奮闘した後。

 カルロスト連邦国の王政を打倒し、新たな主に父さんを据えて。

 奴隷制を廃止して、連邦国を救った。

 とても忙しい日々だったが、完遂した時の達成感と喜びは、何物にも変え難いものであった。

 それが。

 俺達の努力を全て消し去られた。

 そこにあった命。

 人。

 物。

 何もかもが、消え去った。

 もう全てを超越して、何も感じない。

 何も感じられない。

 今この風景に何かを思って仕舞えば、その途端にあまりの絶望で死んでしまいそうだから。

 何も感じたく無い。

 こうしておけば、俺は苦しく無い。

 苦しく無い……筈だ。








 そしてそれから何日も歩き。

 何日も、何日も、東に歩いた。

 そして、辿り着いた。


 父さんの故郷。

 俺の仲間が居た場所。

 アステラ(叔父さん)が居た場所。

 ルーダが居た場所。

 ガラブが居た場所。


 リカルが居た場所。


 足元に、何か落ちていた。

 何故これは消えなかったのか。

 俺が此処を認知する為にジュルカがやったのか?

 それとも、俺を悲しませる為か?

 俺はそれを拾い上げ、埃を払った。

 俺に手にあるは。

 形は崩れて、一部が破れている。

 

 赤いリボン。

 

 リカルが、話してくれた。

 このリボンの事を。

 メルデス大森林で、二人でギルシュグリッツに向かっていた時。

 忘れもしない。

 忘れるものか。

 リカルは言っていた。

 今は、自室に仕舞っている。

 流石に今の私には似合わない、と。

 そんな事は無いと言いたいが、その相手はもう……この世には…………。

 生きていたら。

 若し彼女がこの状況下で生きていたら?

 いや、有り得ぬ話でも無い。

 このリボンが残っていたのは、恐らくジュルカの仕業。

 それをリカルにもかけていれば、リカルは生き残っている。

 転生魔法に果たしてそんな力があるのか、聞いた事は無いが、このリボンがあるのなら、そういう事だろう。

 いや、リボンが此処にあったのは偶然か?

 確かに、誰かが消さない様にしたのなら、こんなに破れたりしていない。

 なら、リボンがあったのは、偶然か?

 否、そんな筈は無い!

 ジュルカは、俺のことを見ていた筈だ。

 なら、俺にとってリカルが大切な人である事は知っている。

 なら、助けてくれているんじゃ無いのか!

 いや、きっとそうだ!

 絶対そうだ!

 だって、そうじゃなきゃ……

 そうじゃなきゃ……………………


 リカルはもう死んだって事だろう。


 俺は此処で、初めて涙が流れた。

 膝から崩れ落ちて、地面に両手をついた。

 そのまま腕を曲げて、額を地面に擦り付けた。


「クソォ!! クソォ!!!」


 そう叫びながら地面を叩く。

 何度も、何度も。

 血が滲む程強く握った拳で。

 何秒かして。

 本当に血が出て来た。

 腕を空中に振り上げる度に、紅い鮮血が頭に降りかかる。

 だが、それでも、何度も地面を殴り続けた。

 自分の弱さを。

 自分の愚かさを。

 呪いたかった。

 こうやって殴り続けていたら。

 

 死ねるかな。












 

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