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【完結】王子で平民な浮遊魔法師の世界放浪記  作者: terurun
第一章:エルレリア開村編
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19:新たな試み









 エルダは、平らな平地を前に、深呼吸をした。

 その背後には、村民全員がいて、エルダを凝視している。

 少し緊張する中、エルダは、地面に向かって、両手を差し出した。





 ――――――――――――――――――――


 

 

 一昨日の夜。村の再建構想会議。

 一応エルダも参加していたものの、その発言力は無に等しく、傍観者も同然だった。


 そんな中、会議は進んでいった。

 これを機に、村の防衛システム強化と、村の拡大、文明発達と、各重要施設の建設が、目的とされて設置された。



 防衛システムの強化。

 今までの村は、防衛能力が無に等しく、誰でも外から侵入出来るようになっていた。

 なので、黄色人の往来も激しく、奇襲も受け易かった。

 そこで考えられたのが、村を囲む堀と、開閉式の橋。

 それが、今の技術力で出来る最高の防衛システムだった。

 発案はクレリア。

 それを聞いた議員は、頭を悩ませた。

 第一、そんな大層なものを作る上で、時間がかかる。

 堀を掘る時間、可動橋の構想と建設にかかる時間。

 とても、気の遠くなるような時間だった。


「村長。確かに、それが実現出来れば、村の安全性は抜群に上がります。ですが、そこにかける時間と労力に関しては、どうお考えで?」


 ある議員が、クレリアに聞いた。

 それに対しクレリアは、こう答えた。


「確かに、今の私たち()()の力ではなし得ないだろう。だが、彼の力を借りれば、それらが短時間で可能になる。」


 そう言ってクレリアは、突然、エルダを指差した。


「彼の持つ浮遊魔法なら、地盤を抜いて彫りを作ることも可能であり、可動橋を建てるのも容易に出来る。しかも、堀を作るのに抜いた岩を、堀の内側に建てて、侵入を拒む壁を建てることも出来るだろう。」


 エルダは、その事を事前に少し聞いていて、出来るだろうと言っていたので、悠然と前に出て、クレリアの隣に立った。


 場は騒めいた。

 先ず、エルダは黄色人だった。

 黄色人は、緑色人から嫌われている。

 なので当然、エルダを良く思わない。

 それに、魔法という未知の力をあまり信用してなく、その力を本当に所持しているのかさえ疑っていた。

 痛い視線が、エルダとクレリアを刺す。


「すいません村長。幾ら村長の紹介と言えど、私共はどうも、その黄色人を信頼出来ません。何か信頼に足るものを提示して貰わない事にはどうにも………………」


 議員の一人が、クレリアに対して言った。


「抑も私が緑色人素材商人だった場合、何故今こうして会議に参加しているのですか? 只素材が欲しいだけなら、さっさと殺して帰っている筈です。」

「じゃぁ、貴方がこの、村の再建情報を、何処かの国へと持っていく可能性は?」

「それは先ずありません。私の出身はカルロスト連邦国の北東部にある小さなスラムなので。そこから此処に来たので、何処かの国に加担したりとかは考えられませんよ。」

「……本当なのか?」

「あぁ、私が保証する。」


 クレリアが、エルダをフォローした。


「皆。オーザックが、村に炎を放った黄色人に殺された。」


 突然クレリアが、オーザックの話を仕出した。

 場に再び、騒めきが起こる。


「その時に、その黄色人を殺し、オーザックを埋葬したのは、紛れも無い。此処にいる、エルダだ。」


 それを聞き、議員の心が揺らいだ。

 この男(エルダ)は、緑色人(じぶんたち)のうちの一人の仇を取る為、同じ黄色人を殺した。


「なんなら、その黄色人の死体が、今も村跡に残っている。見たいなら後で見に行くがいい。明らかに、浮遊魔法でしかなし得ない殺し方だ。」


 クレリアの眼光は、反論を許さない姿勢を大いに表現していた。

 なので議員も、反論せざるを得なかった。



「エルダ殿。本当に、ほんっっとうに、堀を作ることが可能なのですね?」

「あぁ、勿論。」

「……その言葉に二言は?」

「ありません。」


 エルダは、堂々とした態度で、そう言った。

 此処で逆にヘコヘコして出来なかった時の責任を逃そうとしても、それは結局、自分への信頼を失うだけで、堂々としていた方が、成功した時に絶大な信頼を得る事ができる。



 その後会議では、可動橋の構想を練り、日が昇りかけていた頃、やっと完成した。



 日が完全に昇った頃、会議は終了した。

 一夜ぶっ通しの会議だったが、議員は皆、期待に満ち溢れた表情をしていた。

 これならいける。

 皆、そう確信していた。


 本格的な制作は、今日から行う。



 村の再建へと繋がる、始めの日であった。







 

橋の構造の図も投稿します。


追記:

その図が上手く作れず、投稿出来ませんでした。本当に申し訳御座いません。

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