転生魔法師の旅路録⑥
「ん?」
突如、寒気がした。
全身の毛が逆立ち、鳥肌が立った。
直様転生魔法で世界の様子を見た。
先ずカルロスト連邦国を見た。
だがここは特に異常なし。
異常しか無い国だが、この寒気の原因はこれではない。
ではアルゾナ王国か?
いや、ここも何ら変わりなし。
サルラス帝国も同様に変わり無し。
そして、オームル王国を見た瞬間。
思わ事吐き気がした。
何だ? これは。
何故こうなった?
こんな事、あって良い筈が無い。
随時世界の様子と未来は見ているが、見落としていた。
まさか、まさか。
いや、この後にあれが起こるのだとすれば、妥当な展開ではあるのか。
兎に角、彼女が地下牢に幽閉されているが、それから救い出すことは出来ない。
やろうとすれば可能である。
だが、出来ない。
してはいけない。
すれば、未来が変わってしまうから。
彼女は此処で死ななければならない。
彼女は死ぬ運命にある。
心苦しいが、成り行きなのだ。
だが、まぁせめて、見に行く事だけはしようか。
見るだけなら未来が変わることは無いだろう。
もう少しでカルロスト連邦国に到着だったが、急用だ。
今直ぐオームル王国へと帰り、彼女の最期を見届ける。
そして新たな王についても見ておかねばならぬな。
果たして彼奴はどんな人物であるのか。
だがまぁ、彼女に濡れ衣を着させ、冤罪で地下牢に幽閉し、剰え殺すのだから。
普通の人間とは思えない。
だが彼が王にならねば、いけない。
この魔法は、辛い。
人の生死を選ぶ事ができるのだ。
決して気持ちの良い代物では無い。
ある時は見殺しにしなければいけない。
それが、子供であっても、誰であっても。
辛い。
辛い。
辛い、が、本当に今回ばかりは仕方が無い。
ならばせめて、その最期位は見守ろう。
殺してしまって、ごめんなさい、と。
儂はカルロスト連邦国へ向いていた足を反対側に動かし、オームル王国への帰郷をした




