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【完結】王子で平民な浮遊魔法師の世界放浪記  作者: terurun
第一章:エルレリア開村編
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13:避難民




 数分後。

 やっと涙が出てきた。

 実感が湧いてきたのか、自分自身が落ち着いてきたのか。

 はたまた、オーザックの死を自分の中で認められたのか。

 どちらにしろ、悲しい事には変わりは無い。

 自分がもっと周りを見ていれば。

 自分があの時、村から去らなければ。

 自分が村へ戻ろうとしなければ。

 そんな事ばかり考えてしまう。

 自分を責め続けてしまう。

 これが自分の性根だったのか、オーザックが殺されたからなのかは分からない。

 つくづく、自分が嫌になる。

 エルダは、怒り、憂い、卑下する。

 様々な感情が、エルダを硬直させた。



 暫く経ち、エルダはジッと座るのに嫌気が差し、一度オーザックを置いたまま、立ち上がり、辺りをふらふらと歩いてみた。

 炎は落ち着いてきたが、消える気配は無い。

 森に燃え移る心配は、今のところ無さそうで、村だけがずっと燃えている。

 「はぁ……………………」

 深い溜め息が出た。

 疲れた。

 肉体的にも。精神的にも。

 叫んだから、声も枯れかけていて、抑も、声を発そうという気にすらなれない。

 心に穴がぽっかりと空いたように。

 エルダも、ずっと開いている自分の口を閉じる余裕が無かった。



 その時。

 ガサッ。

 村から少し離れた場所から、音が聞こえた。

 敵の残党か。

 はたまた、ただの動物か。

 気になったエルダは、魔法の発動準備を済ませたまま、その場所に向かった。


 その場所に着いた。

 が、何も無い。

 辺りを散策するか。

 そう思い、目の前にあった木の裏を除いた時。

 「…………なんだ……………………?」

 二本の石製ナイフが、エルダの首元狙って飛んできたのだ。

 当然エルダは魔法で浮かせ、無力化した。

 ナイフの出所を探ると、そこには、エルダが前、村で会ったあの若者が居た。

 よく見るとその周りには、五十人程の緑色人が、身を潜めていた。

 そしてエルダは、その皆の様子を見て察した。

 此処にいるのは、あの村の放火から逃げてきた者達。

 此処にいない村民はもう……………………

 そう考えていると。

 「出ていけよ!! 黄色人! お前らはやっぱりこうだ! 人の大事な村を潰して平気でいるんだ! そして逃げ惑う俺達を笑い物にするんだ! そんな黄色人(おまえら)が憎いんだよ、皆んな! さっさとどっか行けよ!!!」

 その若者が、エルダに対してそう叫んだ。

 エルダは、どうしようか戸惑った。

 此処で帰っても詳しい話を聞くことが出来ないし、残って反感を買ってしまったら、それこそ面倒な事になるだろう。

 どうすればいいか考えていたその時。

 「すまんな、ちょっと待ってくれ。」

 一人の老人が、エルダの元に歩み寄ってきた。

 その顔を見て、それが誰か、エルダは理解した。

 「エルダ殿ですよね? オーザックが言っていた。」

 「はい、クレリア村長。」

 「おぉ、やっぱりそうですか。」

 クレリアは、少し安堵の表情を浮かべた。

 「…………それで、オーザックは………………」

 クレリアが、少し暗い顔でエルダに聞いた。

 エルダは、声を発さず、只々、小さく首を横に振った。

 「…………そうですか……………………」

 クレリアの反応を見て、地面に座っている他の村民も、オーザックの死を悟った。

 だがそれで悲しそうな顔をしたのは、一部の十数人のみであり、その他は、特に気に留めていなかった。

 何故なのかが今のエルダには理解出来ていなかったが、クレリアはその理由を知っているようだった。

 だが、その理由(ワケ)を追求出来る雰囲気でも無かったので、深掘りせずに黙っておいた。

 「それで、今はどんな状況で………………?」

 エルダが、クレリアにしか聞こえないような小さな声でそう聞いた。

 「見ての通りです。黄色人に火をつけられ、避難できた者を此処に集めています。避難に成功し今此処にいるのは、元々の人口の三割程度でしょうな………………」

 クレリアが、落胆した。

 「昔っからこうなんです。こちらからは何も危害を加えていないのに、時々やってくる黄色人に、仲間を数人殺されるんです。ですが…………放火すらも(いと)わないだなんて。そこまで心の無い奴らだったなんて…………私がもっと厳重な警備体制を講じていれば、此処までの惨事にはならなかったであろうに…………もっと私に力があれば………………」

 クレリアが、自虐を繰り返す。

 緑色人は一切悪くない。

 彼らの内臓を商売道具にする黄色人が可笑しい。

 そしてその黄色人は恐らく、サルラス帝国の国民だろう。

 グルダス曰く、この大陸内で、「ゴブリン討伐」と言った言葉を掲げてメルデス大森林に入っていくのはサルラス帝国だけだそう。

 全く、酷い話だ。


 「…………これからの住む場所は…………?」

 エルダが問うと。

 「…………無い。」

 「食料の当ては?」

 「…………それも無い。」

 「じゃぁこれからどうする…………?」

 「……………………」

 クレリアが、すっかり黙り込んでしまった。

 「…………どうすれば……………………」

 クレリアが、頭を抱えた。


 「それならさ。」

 エルダが、少し大きな声で言った。

 「皆んなで村を再建しましょう。俺も手伝いますんで。」

 「再建……………………?」













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