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128:港町にて

明けましておめでとうございます!

今年も、宜しくお願いいたします。






 



「うおぉぉぉ…………」


 その街並みに、思わずエルダは感嘆の声を漏らした。

 その街並みに、アステラはふむふむと頷いた。

 その街並みに、リカルは興味津々だった。


 赤褐色一色に統一された屋根は、街を明るく盛り上げ、白に統一された壁は、街を綺麗に彩る。

 後ろを見れば、今から出港するであろう運搬船と、色とりどりの魚が遊泳する透き通った海。

 汽笛の音が骨の髄にまで響き渡る。

 この街の名は、ブルリダ。

 オームル王国の首都であり、ガルム諸島本島に位置している。

 家屋の作りが、アルゾナ王国の煉瓦作りと同じだが、そのクオリティがまるで違う、

 街全体が、まるで一つの芸術作品かの様に佇む。

 全てが統一された、単一色の芸術。

 正確には屋根の橙と壁の白で二色なのか。

 その二色のコントラストがまた、この国の国風を主張する。

 清廉潔白、そして活発な街なのだと、一目見ただけでそう理解してしまう。

 他国との交易を一切絶ってきたのにも関わらず、この街の出来。

 賞賛しかできない。

 流石としか言いようが無い。



 この街へは、エルダの浮遊魔法でやって来た。

 浮遊魔法でリカルとアステラを浮かせ(勿論エルダ自身も)、そのまま此処までひとっ飛びしてきたのだ。

 今いるのは、ブルリダの最東部に位置する港。

 一般に、ブルリダ港と呼ばれる港である。

 ガルム諸島は、今居る本島と、幾つかの小さな離島によって構成されている上、道具類は本島での生産が主となっていて、農産物や畜産物などは離島が生産している。

 なので、それらの全ての物流を担うのが、今居る港から出ていく運搬船という訳だ。

 なのでこの港は、ガルム諸島に住む人々のライフラインであり、大切なものなのだ。



 そして、何故此処に来たかと言うと。


「恐らく、オームル王国の現国王、ダイナス・オームルは、先の大陸部での一件を知らない。誰かが知らせないと、色々と拙い事になるのは目に見えている。それに、何も知らないオームル王国の国民達が、突然帝国に日常を奪われていく様を傍観するのも嫌だ。だから、大陸部での一件をダイナスに話し、アルゾナ王国の協力の意思を示す。そして友好的に思ってくれることが、ガルム諸島訪問の目的だ」


 アステラは、エルダとリカルにそう告げた。

 それに対し、二人は。


「了解!」

「承知いたしました」


 と言い、背後の海に目を向けた。


 波の音が聞こえる。

 それと同時に、塩の香りが鼻から沢山侵入する。

 あまり海というものに触れてこなかった一同は、海の素晴らしさに感動した。




 街の大路地を歩いた。

 出来るだけ目立たない様にと、三人ともに目立たない服装で歩いている。

 だが何故か視線が集まる。

 アステラが無駄にイケメンだからなのか、リカルが美形だからか。

 なんだかんだ二人とも美形である。

 アステラは如何にも『王子様!』っていう顔だし、リカルも、『美人秘書!』って感じだし。

 皆の目線は大方アステラかリカルに向いている。

 要するに、エルダは特にイケメンでは無い訳だ。

 妬ましい。

 こんなにも見られているのに、その理由に見当がついていない事が余計に妬ましい。

 俺もいつか、色んな人にチヤホヤされて…………

 あれっ? いつの間にか俺、ガラブの思想に蝕まれてね?

 嫌だなぁ……

 エルダは自分が怖くなった。



 そんな視線を無視しながら歩いている時だ。

 エルダの目に、不意にあるものが映った。

 書店に置いてある、ベストセラーの紹介ポスターであった。

 そしてそのポスターの下に、そこで紹介されている本が置いてあった。


「あれっ? この本…………?」


 それを見て、思わずリカルがその本を手に取った。


「その本がどうしたんだ?」


 そうエルダが訊くと。


「いや。前に二人でカルロスト地区から帰っていたときに言っていたあの本。あらすじを言ったらエルダが倒れたやつ」

「あぁ〜。この本が…………」

「面白いのは面白いんですが、これを子供が読んだらノイローゼになるでしょうね」


 そうやって取り上げたリカルの手にあるその本を見ると、ジャンルが児童書と書かれている。


「これが児童書って…………大丈夫かな……?」

「まぁ、この国の歴史を知る教本だと考えれば、そう捉えられなくも無いかも…………」

「そうか。」


 リカルはその本を元あった場所に戻し、踵を返した。


 ……………………………………

『『非道なる女王に鉄槌を!』』

 ……………………………………



「…………っ?」


 エルダも踵を返そうとしたとき突然、小さな頭痛と共に、その言葉が頭の中で響いた。

 まただ。

 時々、頭痛が起きる。

 そしてこの言葉。

 “非道なる女王に鉄槌を”

 一体何なのか。

 前にも一度だけ聞いたことがある。

 カルロストで王城が崩壊する前の頭痛と共に流れてきた言葉だ。

 この言葉。

 まるで誰かの記憶を見ている様な。

 何なのだ?

 判らない。

 だがいつか判るだろう。


 そう信じて、エルダはアステラの元へと戻った。




 ――――――――――――――




「ダイナス様。帝国から連絡がありました。そのままご報告させていただきます。

 我が帝国最高の魔法師、ザルモラ・ベルディウスが大陸部の命を全て狩り、そこを帝国の支配地域とする事とした。いずれアルゾナ王国の使節団がそちらを訪れるだろう。だが安心しろ。既に策は練ってある。ダイナスは黙って指示に従う事。誤って、アルゾナ王国と友好な関係を築こうなど思うな。私はいつも見ている。

 とのことであります」

「そうか………………」



「母さん。僕はどうすれば良いのでしょうか。皆が死ぬのを黙って見ておれば宜しいのでしょうか。国王とは、民を守ってこそ王なのでしょう? なら僕は何故、民が死ぬ事を傍観しているのでしょう。

 母さん…………母さん…………どうか…………」







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