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【完結】王子で平民な浮遊魔法師の世界放浪記  作者: terurun
第一章:エルレリア開村編
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11:再会




 クレリア宅を駆け出たオーザックは、韋駄天の如く、村の道を駆け、自宅へ向かった。

 希望が見えた。

 クレリアは、自分の意見に賛同してくれる。

 それに、クレリアは村長なので、その発言力も絶大。

 オーザックにとっては、この上ない提案であった。

 村の者は、黄色人を信頼する事は危険思想であると批難していたが、クレリアは違う。

 信頼できる。


 その僅かな希望を胸に走り出すオーザックの顔は、ずっと笑っていた。




 自宅につくと、オーザックは、メルデス大森林で長期期間エルダの捜索をする為の食料などの諸々を、物凄いスピードで鞄に詰めていった。

 適当な保存食を雑に鞄に突っ込み、保存水も投げ入れるようにして鞄に入れた。

 後、目についたので、昔作った浄水器も鞄に入れておいた。

 完全に綺麗な水となることを期待したわけではないが、雨水を飲めるくらい造作も無いだろうと思ったので、一応持っていく。まぁ、持って行った水が完全に無くなったときの最終手段だが。



 そして、地図や方位磁針など、その他諸々を鞄に詰め終わると、未だ鞄を背負えていないのにも関わらず、カバンを手で持ったまま走り出し、家を飛び出した。

 時間は未だ早朝。

 日の出の光が背中を照らした。


 走る途中で鞄を雑に背負い、特に誰にも挨拶せず、颯爽と駆け、メルデス大森林へと入っていった。

 方位磁針を出し、方角を確認しながら、樹々の間を走った。

 家にいる時点で、何処を散策するかは決めていたので、先ずはそこに向かってみて、エルダを探してみる。


 エルダは、「サルラス帝国に行きたい」と言っていた。なので、村から直線距離でサルラス帝国に行く可能性が高い。

 つまり、村から南下している事が想定される。

 そして今は、エルダと別れてから約一日。

 一日後と聞くと、離れ過ぎて追いつけないと思うかもしれないが、あの時に村で突っぱねられ、その衝撃と失意で気落ちしている中、そんなに早い速度で歩くとは考えにくく、エルダは朝起きるのが苦手なので、今全速力で追い掛ければ、追いつくのも夢ではない。

 出来るだけ長く寝坊している事を強く願って、オーザックは村から南下していった。



 その日の夕暮れ。

 オーザックの足はそろそろ限界を迎えようとしていて、疲労もピークに達していた。

 汗が滝のように流れ、息切れが激しく、目の前も碌に確認できない。

 そんな中オーザックは、樹々の間に、一つの人影を見た。

 鞄を背負い、トボトボとゆっくり歩く彼の後ろ姿は、エルダにそっくりだった。

 だがもし、緑色人(じぶんたち)を狙う黄色人であった場合、自分は殺されるかもしれない。

 だがオーザックは、そんな可能性を一切考慮せず、エルダらしき人影に向かって走り続けた。

 疲労で判断力が欠如していたオーザックは、そこまで頭が回らなかったのだ。


 「エルダ!」

 オーザックがそう叫ぶと人影の彼が、バッと勢い良く振り返った。

 その顔を見てオーザックは、その彼に抱きついた。

 人影は、エルダだった。

 汗だくで走って来たオーザックに困惑しながらもエルダは、力強く抱き着くオーザックの脇腹を指で刺し、床に這わせた。

 オーザックは、刺された脇腹を手で押さえながらふらふらと立ち上がり、激しい息切れを聞かせながら、エルダと目を合わせた。

 「久しぶり。」

 オーザックがそう言いながら右手を前に差し出すと、

 「あぁ、久しぶり。」

 と言いながらエルダは、その右手をガッチリと掴み、軽く上下に二回振った。



 オーザックはエルダに、村であった一切を語った。

 あの後、村長宅に呼ばれたこと。

 そこでエルダについて話し合ったこと。

 そして次日(今日)。

 村長が、エルダと会って話がしたいと言ったこと。


 村長はオーザックを信じてくれている事をエルダに伝えた上で、オーザックはつらつらと説明していった。


 「成程な…………村民に見つかれば反発が起きるので、村の外で話をして、それを村で協議する…………と。」

 エルダが、その案について熟考した。

 「それなら誰からの反発も受けんわな………………」

 独り言をつらつらと言う中、エルダは、その案を承諾するか否かを決めた。

 「分かった。行くよ、俺。」

 エルダがスラッとそう言って、頭を掻いた。

 オーザックは、喜びで叫びたい気持ちを全力で抑え、ただただ笑みを浮かべるだけに注力した。


 「それじゃぁ、行こうか。」

 オーザックがそう言いながら、エルダに手を差し伸べた。

 「あぁ。」

 エルダが、その手を引っ叩きながら、先を行くオーザックについていった。



 その道中も、前と同じような、他愛もない会話をしていた。

 オーザックは、楽しかった。

 ここまで誰かと笑いながら話したことなんて、エルダが数年ぶりであったので、それがとても新鮮で、とても楽しかった。





 次日、夜。

 「…………?」

 オーザックは、森の違和感に気付いた。

 夜なのに、未だ少し明るい。

 日は完全に沈んでいるのに。

 月光もそこまで強くないのに。

 しかもその光は、赤色だった。

 そして、村に近づくにつれ強くなっていく。

 それと同時に、灰の匂いが漂ってきた。

 「まさか………………?!」

 オーザックは、エルダを置いて、一人、村の方へと走っていった。

 エルダも、突然走り出すオーザックを必死に追いかけ、村の前までやってきた。

 「…………えっ…………………………?」

 眼前に広がっていたのは、炎に覆い尽くされた、嘗ての自分の村だった





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