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【完結】王子で平民な浮遊魔法師の世界放浪記  作者: terurun
第一章:エルレリア開村編
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08:大森林の村





 「まっさか、お前みたいな黄色人(にんげん)が居るなんてな。」

 オーザックが、頭の後ろに両手を組みながらエルダに言った。

 「そんなにも、その黄色人(よそもの)は酷いのか?」

 「あぁ、とっても。」

 オーザックは、両手をストンと下ろして、少し真剣な表情でそう言った。

 「………………そうか………………」

 エルダも、オーザックのその様子を見て、少し憂鬱になった。

 「黄色人(にんげん)にとって俺らって、ただの商売道具にしか違いねぇんだ。俺達の素材は高く売れる。特に内臓系は。」

 「…………何故そう言えるんだ?」

 「幼い時から、目の前で村の奴らが黄色人(にんげん)に殺されて、内臓を引っ張りだされて、もぬけの殻になった死体を投げ捨てられる様を、何度も何度も目の当たりにしてたからな。そんだけ内臓もがれれば、内臓が高く売れる事なんて、容易に想像つく。」

 エルダは、黙り込んだ。

 「まっ、エルダ(おまえ)はそんな奴じゃ無いだろうから、俺は信頼しているが。」

 そう言ってオーザックは、また再び、両手を頭の後ろで組んだ。

 「それは光栄だな。」

 エルダは、少し口角を上げながら、そう言った。

 「そういや、()()()も、エルダに似ていたっけな。」

 オーザックが、そっと呟いた。

 だが、その小さな声は、エルダの耳に届かなかった。



 「なぁ、エルダは、これから急ぎの用事でもある?」

 「いや、急ぎって訳じゃないけど。一応。」

 「じゃぁさ、一度俺の村に来てくれよ!」

 オーザックが、満面の笑みで、エルダに言った。

 「でも…………俺は黄色人だろ? その村の村民は、俺を良いように思わないと思うのだが…………」

 「そ、それは………………」

 オーザックが、笑みを消し、その事が盲点であった事に失意した。

 「お、俺が村の連中を説得するからさ。これでも俺、村では信頼されているだろうからさ。」

 オーザックが、あたふたしながら少し早口にそう言った。

 何かを隠しているだろうと予想出来る仕草であったが、エルダは特に深堀しなかった。

 隠すのであれば、それなりの理由がある訳だし、わざわざそれらを言わせるのもなんだか違うから、何も聞かないのが一番だと、エルダは考えたのだ。

 「オーザックがそう言うなら………………」

 エルダが渋々許可を出すと、

 「やったぁーー!!!!」

 と大声で叫び、再び、満面の笑みをうかべた。

 だが、その時の笑みは、何か心残りの有りそうな、完全に喜びきっていない笑みだった。



 オーザックの村は、現在地(アルゾナ王国国境南端付近)から、丁度西南西の方角に丸一日程歩いた場所にあるらしい。

 その村の面積は、まぁまぁの広さであり、その技術力は村と呼ぶに相応しいものであった。

 家屋は全て木造であり、当然、基礎がちゃんとした家ではなく、雨漏りは勿論、床の隙間から風が吹き続ける。

 当然村では、魔法は普及していない。

 そんな村である。




 次の日から二人は、オーザックの村に向かって、歩いた。

 丸々一日歩き続けるのは流石にしんどいので、ニ日間に分けて移動する。

 予定としては、二日目の朝時に到着であった。


 行きしな。エルダとオーザックは、和気藹々と喋り続けた。

 オーザックはあまり自分から話をしなかったが、エルダは、スラムでの事やアルゾナ王国での事など、過去の話題が尽きなかった。

 それらをオーザックは、終始満面の笑みで、刻々と頷きながら聞いた。

 エルダもそれが楽しく、その会話は、この森の静寂を打ち消すように陽気であった。



 次日の朝方。

 昨日と同じ様に、オーザックと話しながら進んでいると、オーザックのものではない話し声が薄っすらと聞こえた。

 「この声はなんだ?」

 その声を聞いたエルダは、話を中断し、オーザックに聞いた。

 「多分、村の奴らの声だよ。もうそろそろ到着かな?」

 オーザックは、そう言いながら少し俯いた。

 何か、村に行くのが乗り気でないような雰囲気であった。

 村に行くのが嫌なのか。

 抑オーザックは何故、村から位置に以上歩かないと行けないような場所にいたのか。

 村からお出かけに行くにも、距離が遠すぎるし。

 村に行きたくないのか。

 エルダにはわかり兼ねたが、オーザックは、そんな事を悟られているとは知らず、エルダを村に呼んだことを少し後悔しながら、村へと歩き続けた。



 樹々の隙間から、建物らしき物が見えた。

 「あれが村か?」

 エルダが、その建物を指差しながらオーザックに聞いた。

 「あぁ、そうだな。」

 オーザックが、歩く足をゆっくりと止めながら言った。

 「どうした?」

 足を止めたオーザックに困惑するエルダ。取り敢えずエルダも、オーザックの隣で足を止めた。

 「あのー…………さ…………………………」

 オーザックが、掠れた声でエルダに話しかけた。

 「ん?」

 「実はさ………………俺さ…………………………」

 オーザックが、言葉に詰まりながら、何か言おうとしている。

 エルダは困惑したが、この場の雰囲気的に何か言い出せる筈もなく。ただただ次のオーザックの一言を待った。

 「俺さ………………村の奴に、信頼されてないんだよね。だからさ、エルダが村への入村許可の交渉も、出来ないかも知れないんだ………………」

 エルダは呆れた。

 前に俺は"信頼されてる"とか大口を叩いておいて、結局は全部嘘だったのだ。

 あの時に何か隠していたのは、こういう事だったのだろう。

 でも何故隠したのか。

 エルダに村に来て欲しかった。

 恐らくその目的である可能性が非常に高い。

 だが、その為に嘘を吐くのは、幾ら怒りにくいエルダであっても、容認出来なかった。

 「そうか…………そうか……………………」

 エルダが、呆れながらも返事をする。

 「すまない…………今まで隠していて………………嘘をついて…………………………」

 オーザックは、エルダに対して必死に頭を下げる。

 エルダは、そんな物には目もくれず、さっさと村から離れようとした。

 「ちょっとまって…………………………」

 今にも消えてしまいそうな声で、離れていくエルダを、オーザックは、追いかけていた。


 とその時。

 「誰だ?!」

 村に中から突然、馬鹿デカイ声が聞こえた。

 エルダたちが見つかったのだ。

 「オーザックだ。」

 村の者に対して、少しやる気にない声で質問に答えた。


 取り敢えずエルダとオーザックは、村の入口前にて、待たされた。

 そして十分後。

 村の奥から、如何にも行政者であるような立ち振舞をする者がいた。

 その者を見て、オーザックは言った。


 「クレリア村長………………」












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