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ココロのトバリ  作者: サザンク
第4話 夢見る魔法少女

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◇11 前編

◇11


 寧音を魔法少女ネオンにした人物は斐上だった。

 名前の一部しか聞いてないとはいえ、魔術に関わる事象を起こしうる人物であれば、わたしたちが追っている件の魔術師に違いないだろう。

 ただし、どのようにして彼女にその能力を与えたのか、記憶の消去も彼の仕業なのか、そもそも目的はなんなのか……不明点はあまりにも多い。一つの疑問が解消されたことで、新たな疑問が次々と浮かび上がってしまう。

 それこそわたしが他に知っている魔法〝少女〟でいうならば――フォルテさんは自他共に認める〝魔女〟なので――空骸黑がそれに当たるが……実際どうなのだろう。もしかすると空骸もまた、魔法少女に〝させられた者〟だったりするのだろうか? それにしては空骸と寧音の〝スタイル〟は随分と異なるし(仲町→空骸は変身ではなさそう)、もしも魔術師仲間を増やすつもりなら、デザイアも知らない状態で単独行動しているのは不自然だ。でも寧音がこうなったのは斐上の仕業で間違いないだろうし……。

 ……うーむ。

「まったく厄介な事態にしましたねあなたは……」

「なんか私が悪いみたいな言い方してない!?」

 もちろん寧音は被害者だ。

 それに、勝手に依頼として引き受けたのは他ならぬわたし自身だ。ならば最後までやり遂げる責任はあるし、考えようによっては、これは奴らに近づく大きなチャンスでもある。

 想定の斜め上の事態になったことに困惑する気持ちはあるが……。

「とにかく、覚えているのはこれだけ、ウソじゃないからね!」アイスの底をひっかき続ける寧音、よほど気に入ったようだ。

「わかりました」わたしも残りを口に運び(寧音がずっとスプーンを目で追ってる……あげないぞ)、次にすべきことを考える。「とりあえずは……明日以降も色々回ってみましょう。また何か思い出せるかもしれませんし……もしかしたら、その過程で斐上の痕跡も見つかるかも」

「そうね! 私もちゃんと、ヒガミさんにお礼を言いたいし」

「…………」

「何よ、その顔、なんか文句言いたげな感じ」

「え、そんな顔してましたか」

「してた」

「……お礼を言うんですか?」

「魔法少女になりたいって言ったらその通りになったんだから……ありがとうございます、じゃないの? そりゃあ、色々忘れてるのは困るけど」

「…………」

「え!? もっと変な顔になった!?」

 失礼な。

 文句……とまではいかないにしても、複雑な気持ちにはなる。寧音が恩義を感じていたとしても、わたしは出逢ってしまったらもう、和やかにお茶するようなことにはならないだろうし。

 それとも『あ、この子がなんだかお世話になったようで……』みたいに寧音を絡めてアプローチをすれば、案外話し合いの余地が生まれる可能性も…………ないな。

 脳内でかぶりを振る。

 斐上も、空骸も、わたしの心臓を狙っていて、化心の実験と称して人の心を弄び……被害者もいる。

 それを許してはならない、という結論は、とっくに出ているのだ。

 ならばやはり、明確に奴らはわたしの……わたしたちの敵。

 織草に関わる者としての責任感だけではなく、わたし自身が、そう認識している。

 なので、その線はなし。

 寧音の記憶の痕跡を探すのが最優先。もしもその過程で魔術師に出遭ってしまったら、寧音の意思はどうあれ、その場で戦って彼らの企みを止める。

 改めて、自分の中で方針を固めた。

「ねぇ、ちょっと」ずい、と寧音が顔を近づけてきた。自分と同じ石鹸の香りがする。「急に黙んないでよ」

「ああ、すみません。ちょっと考え事をしてて」

「怒ってる?」

「え、いや、全然そんなことないですけど」

「そっか」

「どうして、そう思ったんですか」

「別に、なんとなく。……たぶん私、静かなの、あんまり好きじゃないのかも」

「テレビでも観ます?」

「そういうんじゃなくて……だって、ほら、せっかく……二人でいるんだから……さ、わかるでしょ」

「……えっと」

「今の内にポーズとダブル必殺技の打ち合わせをしておかないと……」

「その件まだ諦めてなかったんですか!?」

「そうだけど!? 悪い!?」

 即座にスケッチブックを取り出す寧音。先ほどとは違い、自宅という場では突発的なトラブルは見込めない。

 そして現在時刻は21時、わたしの年代で就寝するには若干早い。

 ……なるほど、これは覚悟がいりそうだ。

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