6話 状況把握
ずいぶんと間が空いてしまいました。これからもゆっくり投稿を続けていくつもりです。お付き合いいただけると嬉しいです。
「それで、アリサ嬢はいったいどこから来たんだ?」
「私のことはアリサとお呼びください。目が覚めた時には森にいたので、私もまだ現状を理解できてないんです。あの、いったいここはどこですか?皆さんの服装的に、ヨーロッパのどこかですか?」
いったん、冷静に今の状況を整理してみよう。
推論その1.私はヨーロッパのいつかの時代にタイムスリップした。
その2. 私は今流行りの異世界転移とやらをした。
その3. 私はまだ夢を見ている。
一番現実的なのは3だ。でも、頭の隅でこれは夢ではないと理解している。なら1?タイムスリップじゃなくても、ここが地球ならパラレルワールドに来てしまった可能性もある。その2は現実的にあり得るのだろうか。そもそも異世界って何?地球じゃないならどこかの惑星だろうか?でも、太陽が地球と同じように見えているし、暑すぎることも、寒すぎることもない。なら、地球と同じような太陽系であることは間違いないはずだ。でも、そんな惑星聞いたことはない。
「ん?ヨーロッパってなんだ?ここは、エーデルシュタイン王国の西端だ。それよりも、気づいたら森にいたのか?やっぱり攫われてきたんじゃないのか?」
「そうだよ。君が言ってたジパングって国はここら辺にはないからね。犯人の目的はわからないけど、眠らされて連れてこられたんじゃない?君の身なりからして、それなりの身分だろうし。」
「えっ。いえ、私は、、、、。」
えっと、何か盛大な勘違いをされているようだ。そもそも私はただ普通の一般市民だ。それなりの身分も何もない。でも今のセリフから考えて、この世界は元の世界とは違うということだろう。もしパラレルワールドだったとしても、どこかの国がエーデルシュタインという国になっているということ。すなわち全く違う歴史を歩んでいる世界ということだ。それと、私のパジャマはこの世界ではそれなりの身分がある人が着るぐらい良いものという認識らしい。ということは、元の世界と同等の生活水準は期待できそうにない。
「まあ、人にはいろいろ事情ってもんがあるしな!無理に話す必要はない。」
私が長く沈黙したせいで何か勘違いをされたようだ。
「相変わらずジョゼフさんはお優しいですね。こんな素性のわからないひと怪しいですよ。」
するとクマさん(ジャックさん))が割り込むようにして会話に入ってきた。
「おいおい、いたいけなお嬢ちゃんにそんなこと言うなよ!な!」
「あなたは何も考えてないくせにそんなこと言わないでください。」
おお、けんかが始まってしまった。
「えっと、、、。」
私がなんて答えればいいのか迷っておろおろしいるとデュークさんが声を掛けてくれた。
「アリサ、あれはいつものことだから気にしなくていいよ。ただじゃれあっているだけだから。」
「デュークさん。皆さん仲がよろしんですね。」
「まあ、長い付き合いだしね。それと、僕はデュークでいいよ、見た感じ同じぐらいの年でしょ。アッでも、アリサはどこかのお嬢様だもんね、呼び捨てはダメか。アリサ嬢どうか私のことはデュークと気軽にお呼びください。」
デュークはからかうようにそう言った。
「いえ、お嬢様なんかじゃ......。」
お嬢様ではない。が、この世界でのことは何もわからないし、きっとこの世界の平民ができることは私にはできないだろう。だからといって、お嬢様といわれるほどマナーや知識があるわけでもない。何と言おうか迷っていると、
「そういうことにしておいてあげるよ。」
とデュークにまたからかうように言われた。
肯定も否定もできない私は、日本人お得意の曖昧な微笑を浮かべた。
必殺どっちともとれるスマイル!私は何も言ってないわ、相手が勝手に勘違いしただけよ術!
ってふざけてる場合じゃな~い!ほんとにこれからどうしよう!
前途多難な状況に頭を抱えるしかないのであった。