3話 合流
パカラッパカラッ
聞こえてきた蹄の音に、みんなが目を向ける。
「あいつ、やっと帰ってきたぜ。」
「本当なら、昨夜か今日の朝には帰ってくる予定だったんですがね。」
「まあま、そういうな。一人で行かせたのは俺らだろ?無事に帰ってきて何よりじゃないか。」
小さかった影が、だんだんと大きくなり近づいてくる。
ん?
「なあ、あいつ何かもってねぇか?」
「本当ですね。道中で余計なものでも買ってきたのでしょうか?」
「それで遅くなったってんなら、げんこつだな!」
ガタイのいい大男がニカッと笑う。
「ん~?あれ人じゃないか?」
「な!あいつ人攫って来やがったのか!げんこつどころじゃねぇな!」
人らしきものを抱えた青年が、皆のところに合流する。
「デューク、あなた一体何をもって帰ってきたのですか?余計なことはせず、まっすぐ帰ってくるよう言ったはずですが。」
「おいデューク、人攫いとは見損なったぞ!」
「ひとまず無事で何よりだ。」
青年を迎えた三人がいっぺんに喋る。
「いっぺんに喋るな!!それに人攫いじゃない!」
そう言って、デュークと呼ばれた青年が、マントに包んで抱えていた女の子を渡す。
「ちょっと抱えてて。僕が下りれないから。」
いきなり人を渡された男は戸惑いながらもその腕に抱きかかえる。そこに、他二人が男の腕の中を覗き込む。
「おい、おまえ女の子じゃねえか。」
「あなた、女の子を攫ってきたのですか?余計にやばいじゃないですか。」
「だ・か・ら~!攫ってきたんじゃないってば!人助け、その子が小柄だとはいえ、抱えながら帰ってくるの大変だったんだからね!」
人攫いだと騒いでいる二人を置いて、女の子を抱きかかえている男と一緒にテントの中へ入る。男は寝ているその子を起こさないようにそっと簡易ベッドの上に寝かせた。
「それで、この子は何だ?」
デュークはことの顛末を話した。
「帰りの途中、休憩で寄った森で拾った。森の奥で女の子が一人で寝てたんだ。どうしてあんなところにいたのか聞いたけど、会話にならないし、見たところこの国の人間じゃないし、連れも見当たらないしで、置き去りにするわけにもいかないから連れてきた。」
「言葉が通じなかったのか?」
「いや、言葉は通じるよ。発音も特に訛ってなかっし、でも、会話が成立しなかったの!帰った方がいいって言うと、うなずいたから、連れがいるのかと思ったけど、いきなり寝だすし‥‥。あのまま放っておいたら、獣たちの餌食になる可能性があったから連れてきた。」
「あの子、攫われてきたとかじゃないのか?裸足なのに、傷ひとつなかった。誰かに運ばれてきたと考えるのが自然じゃないか?」
「それも考えたたけど、僕が起こしたとき特におびえてもいなかったし、縛られた痕とかもないし…。あっ!ジョゼフさんは黄金の国ジパングって聞いたことある?その子その国から来たって言ってたんだけど‥‥。」
「ジパング?聞いたことないな。ほかに何か言ってなかったか?」
「う~ん。ほかにも何か言ってた気がするけど、覚えてない。どれも聞いたことがないものだったし。それよりも、この子どうする?勝手に連れて帰ってきたけど、僕たちも、明日にはここを発たないといけないよね?」
「そうだな。まあ、俺たちの役目は終わったんだ。明日にはここを発たなきゃならないが、ゆっくり帰っても問題ない。この子を連れて行っても問題ないだろう。あとのことは、この子が起きてから考えよう。」
そう言って、二人は気持ちよさそうに眠る女の子を眺めた。