二重人格とか頻繁に独り言いってる人の方が厨二病よりよっぽどSAN値がピンチな気がする。
門左衛門が俺たちに尋ねる。
「ええと、これは一体どうゆうことじゃ・・・?」
俺たちは苦笑いする
「気にしないでください、いつものことなので」
「時間が解決する病なので、暖かく見守ってあげるでござるよ」
サグメとハカセが遠い目でフォローする。
やめてあげてよぉ、
なんだか、すごく可哀想な子になっているし。
「馬鹿なこんなはずでは・・・!」
ジャキガンは頭を抱えている。
「動き出すには何か条件が必要だったんじゃないかな?
例えば、満月の夜とか、眼帯と包帯外さなきゃいけなかったとか、
あの部屋じゃなきゃ駄目だったとか」
「そう願いたい・・・
だが、僕は以前、自宅のあらゆる所ですでに検証してきたのだ。
それでも今までこんなことが起きなかったから呪いを解く方法を探すために旅にでたんだが・・・」
宮代邸のあらゆる場所で厨二病ポーズを決めてるジャキガンを想像して
ここまでくるとなんというか気の毒になってきた。
「こんなとき、フラウがいればな・・・」
俺はボソリとつぶやく、
人形や呪いに関してエキスパートな存在であるフラウがいれば解決の糸口が見つかったかも知れない。
俺はもう一つ気がかりだったことを門左衛門に尋ねる。
「門松家の方が見つけた時、人形の暴走が止まったんですよね?
どなたが見つけたんですか?」
「儂と息子の辰己夫妻、後は孫の創一郎じゃ、奏の従兄弟にあたるな。
昨日はちょうど法事の帰りだったのでな。
辰己がこの町の警備隊も仕切っておってな、その関係で我が家で引き取ることにしたんじゃ」
そこへちょんまげ袴姿の男が現れる。THE・武士といったような出で立ちだ。
「む、なんか呼ばれたような気がした。」
「辰己叔父さん、お邪魔しております。」
「奏か、帰国してたのか、
一報くらい・・・って鎖国してたから無理か、
あれ?そうするとお前たちどうやってジパヌグに入ってきたんだ?」
鋭い所を付かれ、俺たちは困惑する。
「紹介状があるでござるよ」
ハカセは懐から書面を取り出し、辰己に渡す。
俺はハカセに耳打ちする。
(お、おい、あったのなら港で使えばよかったんじゃないのか?)
(急ごしらえの偽物でござるがね・・・
いずれどこかで必要になりそうだったから用意しておいたでござるよ)
「ふむ、大御所殿への文書のようだな。
ポルトスからの親善大使とな、サキナガを代表して歓迎しよう」
辰己は文書を返し、俺たちに握手を求める。
なんとか信じてくれたようで助かったぁ・・・
「それで、なんでここに来たと言いたいところが、どうせその人形の話だろ?」
「はい、昨日の深夜、宮代邸でその人形達が突然暴れだしたのですが、
俺の妹のサグメがぶっ飛ばしたせいで町中に・・・」
俺はジャキガンの厨二病が引き金になった話は端折る。
「その後、たまたま通りがかった私達が回収したということか・・・
その人形達は元々私が宮代家への新築祝として贈ったものだ」
「ジャ・・・奏から聞いてます、キリッ!」
「私も呪いの類があるとはにわかに信じがたいが、
実際にこの目で町民が襲われているのを見てしまっては信じるしかあるまい。
今は原因を調べるためにまじない師、我が国で俗に言う陰陽師を呼んでいる。」
「儂達の姿をみるなり、人形共はピタリと町民を襲うのをやめたのじゃ、
それこそ誰かに操られているのかを疑うほどにな」
俺たちは顔を見合わせる。
門松家に見られると何か不都合なことがあるのだろうか?
「あらあら皆様お集まりでどうしたどすえ?
あら、ごめんあそばし、ご客人さまがいらしたのですね。
おや、奏様ご帰国なされていたのですね」
芸者がする独特な髪型と白粉をした着物の女性が現れる。
「蘭、ご客人の茶を用意してくれ」
「はいはい、わかっておりますよ」
蘭は居間を去っていく。
「家内がすまない」
「いえ、奥さん、蘭さんは芸者さんなんですか?
本物を見るのは初めてです。」
「うむ・・・その、海外の方には珍しいかな」
辰己が頬を指で掻く
「創一郎は自室ですか?寄ったついでなので、会っていきたいです。」
「あいつなら書斎のほうだろ、ここのところ籠もってることが多いな」
***
宮代家の書斎にて青年が何やら苦悶しながら独り言を言っていた。
「ちっ・・・予想通り来やがったか、まもなくやつらがここに来る。
ボロ出すんじゃねぇぞ、さもないとわかってるな?」
青年の顔が狂気に変わる
「やめろ、僕はこんなことをしたくないんだ!」
と思いきや悲壮な顔へと変わる
「今更何良い子ぶってるんだ?お前の両親と大好きな姉さんがどうなってもいいのか?
そのために殺るんだよ、宮代家の連中をな、そうしたらお前を解放してやる。」
青年の顔が再び狂気へとコロコロへと変わる
「うう、僕はどうしたら・・・」
邪悪な気配がどこかへと消え去ると
書斎に崩れ落ちる青年の姿があった。