勇者の入国なんて許可されてねぇから!って言われました。なんでや!
俺たちはなんだかんだでポルトスにつくと、
メイガスに国際勇者連盟の会議室に来るように招集を掛けられる。
「んー、久しぶりの潮風が気持ちよかったな、
この会議室の机も久しぶりだぜ」
「で、帰ってきて早々呼び出されるとは何事でござるか?」
「早速なのじゃが、
ワカ、ジャキガン、ハカセ、サグメの4名は東方の島国、ジパヌグにいくのじゃ」
「ふぁ?」
こちらからあべこべの呪いに関して東方に行くことを切り出そうとしていたのだが、
メイガスの方からご指名が来た。
「何かあったのですか?」
「慢の魔王と痴の魔王が東方の方で確認されたという連絡が来てな、
お主達4人は討伐に向かって欲しい」
小人サイズのマックスは、
ハカセの二足歩行手乗りロボであるPOC3と相撲をしていた。
マックスはPOC3の胴を持ち上げると放り投げて転がす。
お、寄り切り押し出し。
「ところで、見の魔王とは仲良くなれたかね?」
メイガスはミザリーの方を見る。
「!?」
「あはは、まさかぁ、魔王っすよ」
まさか、知ってて俺たちを総出でサンドバーグに向かわせたのか?
このじいさんどこまで知ってやがる。
「・・・私達はどうするの?」
フラウはミザリーとマックスの方を見る
「ふむ、フラウとミザリーにはちょっと魔王連合の他の魔王の調査をお願いしたいのじゃ。
ちょっと気がかりな噂を聞いての、
マックスはお留守番かの」
「俺はまだ戦える!」
いや、そのサイズだといろいろ無理だろ。
俺たちは、フラウとミザリーに別れを告げて
ポルトスの船に乗り込む。
しばらくは船旅のようだ。
ジパヌグに向かう商船には国際勇者連盟の方から依頼して乗せてもらうことになった。
商船は巨大な帆を張り、風を受けて出港する。
俺は船外デッキで潮風を受けながら今後のことに思いを巡らせていた。
「うへえ、船酔いした、うっぷ・・・」
と呟くとサグメは海に向かって何か吐いていた。
お前、意外に弱点多いよな、怖いもの苦手だったり。
「た、大変でござる、ジャキガンどのが倒れたでござる」
「う、う〜ん、お船怖いよぉ、船だけは、船だけは無理なんだ・・・」
気絶している(?)ジャキガンはうわ言のように呟く、
駄目だ、こっちのがもっと重症だ。
というか、こんな体たらくでよくポルトス来れたな、お前。
俺は、他の勇者達の様子を見て先行き不安さを隠せながった。
船といえば昔クラーケンに襲われたときとかもあったっけ?
海の魔物に対する防衛とかはこの船は大丈夫なのだろうか?
一応心配になって、近くにいたガタイのよい船長に尋ねてみる。
マックスとまでもいかなくとも、海軍のようなセーラ服と帽子を着て
ヒゲを蓄え、まくった腕はムキムキだった。
いかつくパイプタバコが似合いそうなその顔には代わりに草のようなものを口の端に咥えている。
あ、よく見るとほうれん草だ。
「あの〜、この船って海の魔物に襲われたりしないですかね?」
「ハッハッハ、大丈夫大丈夫、
この船には砲台がたくさん積んであってな、大体の海の魔物はこれでイチコロよ。
あ、俺はゴンス。兄ちゃんたち勇者なんだろ?」
「あ、すいません。ワカって言います。
ジパヌグに行く船に乗せてもらってありがとうございます。
この船しかなかったみたいで・・・」
「まぁ、ジパヌグの船ってだけで最近は世知辛いからなぁ」
「何かあったんですか?」
「兄ちゃん、随分世間に疎いんだな?」
うっせぇよ、俺は田舎育ち田舎暮らしが長くて知らねぇんだよ。
「ジパヌグが他の国に対してほぼ鎖国状態に入ってしまってな、
この船がジパヌグへの戻りの便としては実質今の所、最後なんだ。
次の出港の予定は未定だ。」
「ん???最後?」
「ああ、ジパヌグから他の国への渡航は制限されている」
「ちょ、ちょっと待て、俺たちポルトスに帰れなくなるってことか!?」
「そうなるな、出国はジパヌグの大名の許可が必要になる。」
おいいいい、あのジジイなんて事しやがる。
俺たちに帰ってくるなってことか!?
俺は悪態をつくも時既に遅し、
ここには存在しない老魔法使いが、
ホッホッホと俺たちを嘲笑う姿が海の向こうに見えた気がした。
商船は何事もなく、数日でジパヌグに到着する。
対岸には松の木が生える砂浜とその近くに木の桟橋がかけられた港が見える。
「ああ、生きてこの地を帰れるとは思わなんだ・・・」
「ええ、本当、もう船なんて乗りたくないわ・・・」
ゲッソリと憔悴仕切った顔のジャキガンとサグメが呟く。
帰りもあるんだぞ、お二人さん・・・
などと残酷なことを俺は言えるはずもなく、
俺は人選を間違ったメイガスを呪うことにした。
「じゃあ、勇者の皆さん、一人づつそこの樽に入ってくれねぇか?」
ゴンスが俺たちに指示する。
「ん???パードゥン?」
「いや、そこの樽に入ってくれと言ったんだが」
どうやら聞き間違いではなかったようだ
「それって、密入国・・・」
「いや、鎖国中だし勇者の入国なんて許可されてねぇから!積荷に紛れる形でしか入れんぞ」
「まじかああああ、もっと早く言えよ!」
「なぜ我が自分の国に帰るのに・・・ブツブツ」
ジャキガンは呪詛を唱えながら、樽の中に入っていく、
あ、うん、もっと可哀想な人がいた。
俺たちは積荷に紛れ、樽の中に潜んでいるとどこかに運ばれていくのを樽の中で感じた。
樽の中でしばらく揺れるのを感じていたが、どこかに降ろされたようだ。
俺は、樽の中から外から気づかれない程度の隙間をナイフで空け、視界を確保する。
それは、どこかの倉庫のようだった。
積荷を運び終わったのか、周囲には人の姿は見えなかった。
「みんな、いるのか?」
俺は少し大きめに声を出すと
続々と、樽の下から足が生える。
うおっ、びっくりさせんなよ。
「どうやら、倉庫の外の風景を見るにここはサキナガのようだな、
とりあえず我の生家の方へ向かうとしよう、ここから近いからな。
我について来い」
そういうと樽に足が生えたままジャキガンが走り出す。
俺たちも樽に足が生えた状態でぞろぞろとジャキガンを追いかけるという奇妙な光景になった。