オナベのフタ強い、超強い
次の日、俺は村娘とともに毒キノコ狩りに森に入っていく
俺が伝説の鎧、兜、剣、盾といったフル装備
対して村娘は頭に鍋を被り、
左手には鉈、右手にはオナベのフタ
という対照ぶりだった
「ふ、普段はこんな装備していかないんですけどね。ほら、昨日のこともありますし」
村娘の声がどことなく震えている。
「大丈夫です、俺が守ります」
とはいったものの最弱のスライム一体にも苦戦するからあまり威勢よく言えないか
まぁ、いざ不測の事態となれば、移動魔法で村に逃げればいいか
「やっぱり、他にも村の誰かについてくるよう頼んだ方が良かったのでは・・・」
「それが何人かに頼んだのですが、断られてしまいました。
スライムの大群が来たのが昨日の今日ですし、いざとなれば僕の移動魔法で村に逃げましょう」
「それなら安心ですね」
村娘はどことなくほっとした様子だった。
俺に戦闘は期待してないんだろうけど、そんなに頼りないかな・・・?
ワカと村娘は森の中を進んでいくと
落ち葉が一杯落ちている。
「あ、あの辺です、私が転んだのは」
あからさまに派手に転んだ跡があり、
その近くに群衆している大量の斑点がある赤い毒キノコがある。
一部が抜けており、おそらくその時に昨日の毒キノコが混じったのだろう
「結構ありますね」
「全部踏み潰しちゃいます?」
「いや、それは逆効果でしょう、この生育に適した環境がある限り、逆に増殖しちゃいますよ。
ちょっと見ててください」
風の魔法唱えると落ち葉が舞、カッターのように毒キノコを刈り取っていく
刈り取られた毒キノコはそのまま風に乗って用意した袋に吸い込まれていく
「おー・・・なんか綺麗ですね」
村娘は思わず拍手した
「村に帰ったら後で袋ごと燃やしておきます」
もちろん燃やさないけどな
それに根っこの菌が残っている限り再増殖する可能性もある。
つまり俺は狩場を一つ手に入れたわけだ。
「あれ、環境変えた方がいい云々はどうしますか?」
(うぐっ・・・忘れてなかったか)
「変えてもいいのですが、迂闊に変えて山の生態系とか壊したら他の食用キノコとかも取れなくなる可能性ありますよ」
「はぁ、まぁそういうもんなんですね、確かにいつも取ってるキノコまで取れなくなったら嫌ですもんね」
納得してくれたらしい。
案外ちょろいな
「そういえば、ついでに今日の分の野草と食用キノコも取りに行きませんか、この先にいつも取っているお気に入りの場所があるんです」
村娘は草木が生茂る場所を掻き分け入っていく。
「いつも、こんなところ一人で入ってるですか?危なくないですか?」
「昔はお父さんが山の山菜の探し方や魔物の避け方を教えてくれたのだけど・・・」
村娘の顔が少し陰る
聞いちゃいけない話題だったかな
「でも、私が取ってくる山菜美味しいって言ってくれる人多くて
それが嬉しくって
今でもちょくちょくこうやって探しに入るんです」
とびっきりの笑顔を見せる
ええ子や・・・
「あ、でも気をつけてください、この時期は熊・・・ワイルドベアが出るらしいので」
「Oh・・・」
鬱蒼とした草木を抜けた先には渓流に出ると
そこには一頭の大きな黒い動物が川の中に居た
「あれ、もしかして・・・ワイルド・・・」
「しっ・・・目も合わさず、声も出しちゃダメですよ」
ワイルドベアはこちらの方を見ると迷わず一直線に突進してくる
「ぎゃーこっち来る!」
「逃げましょう!」
ワイルドベアの脚力は思ったよりも速く、
こちらが草木の中という足場の悪さも相まって
あっという間に距離を詰められる
「追いつかれる!僕が囮になるので逃げてください」
「そんな、私も戦います」
ワイルドベアは強力な爪がある右手でなぎ払おうとする。
ワカはそれを伝説の盾で受け止めるも盾が鈍い音を立てて弾き飛ばされる。
「げふっ」
その衝撃を吸収しきれず俺自身も大きくダメージを受ける。
弾かれて落ちた盾はカランカランという乾いた音を立てて転がった。
「しまった・・・」
「これを使ってください」
村娘が俺にオナベのフタを投げ渡す。
受け取ったフタで続く第二撃、第三撃を防ぐ
しばらくフタで防御を繰り返していると
やがてワイルドベアは疲れたのか興味を失ったのか
踵を返すと川の方へ帰って行った。
オナベのフタを見ると剛腕に何度も晒されたにもかかわらず
傷一つついていなかった。
「オナベのフタ強い、超強い」
俺はうわ言のように呟いた。