俺がお前でお前は俺?
俺たちが入った大部屋は周囲が大理石で覆われ、
砂にまみれていなかった
ここだけ明らかに別の空間だ
「ほえ〜、でっかいオーブっすねぇ」
俺たちはオーブを調べていた。
もへじワカが俺をひっぱる。
「え?何?」
もへじワカはオーブの手前にある、隠しスイッチを押すと
突如オーブが光りだし、眩い光に俺たちは包まれていく
気づいたらそこは実家だった。
幼き日の俺とサグメが両親と何か話しをしている。
「ワカは大人になったら何になりたいの?」
「俺、勇者になりたい!」
「サグメは?」
「私はお嫁さんがいいなぁ、冒険なんて私には無理だよ」
そうなのだ、サグメは昔から引っ込み思案で人見知りで消極的だった。
対して俺は怖いもの知らずで自分が世界を変えられると思い上がっていた。
いつからだろう?サグメが勇者を目指し、逆に俺が村に引きこもることを考えるようになったのは
「じゃあ、ワカにはーーーーーをあげよう」
「サグメにはーーーーーがお似合いね」
なんだ・・・記憶にノイズが走りハッキリしない・・・
あのとき、両親は何を言っていたんだ?
いつの間にかオーブの間に俺たちは戻っていた。
俺はオーブに映る自分の体を動かすと
意図した体の動きをもへじワカが体現していた。
ん?あれ?いつの間にか俺の体、もへじワカになってねぇか・・・?
しかも、口がないため喋れないことに気づく
「くくく、ハッハッハ、遂に手に入れたぞ人間の体を!
俺はこの体を使って自由に生きるんだ!」
その横で俺の体でほくそ笑む人物がいた。
まさか、オーブの力でもへじワカと俺の精神は入れ替わってしまったのか?
(な、なんだと!俺の体だぞ、返せ!)
俺は元の体をもへじワカの体でポカポカ殴るが軽く手であしらわれる
「ひゃぁはぁ、久方ぶりの人間を見つけて付いて行って正解だったぜ。
变化の杖で姿形を真似て上手く取り入った後、
まんまとオーブの間に来てくれたおかげで俺は入れ替わり出来たわけだ。
これで女の子達にもナンパとかセクハラし放題だ、前から一度してみたかったんだよね」
な、コイツ、最初のクリーンな印象や行動と裏腹にこんなド汚いこと考えてやがったのか。
それよりも俺の印象に関わるから止めてくれ!
もへじワカは背後からサグメとミザリーのお尻を触ろうとする。
(させるかー!)
俺はニセ俺の行動を阻止すべく、女子二人とニセ俺の間に割り込むがサグメに気づかれる。
「なにやってんの?」
「こいつ、お前らのお尻を触ろうとしてたぜ」
「ほんとっすか?やっぱここで始末したほうが・・・」
俺は必死に手を振り否定のジェスチャーをし、土下座までする。
なんていうか必死だな。
あれ?俺、もへじワカと同じことしてないか・・・?
ちくしょー、こいつの野望はなんとしても阻止せねばならん。
喋れないのがこんなに不利だとは思わなかった。
とりあえず、早く戻られなければ・・・
俺は再度オーブの前の隠しスイッチを押すも何も反応しなかった。
おいおい、マジかよ俺一生このままかよ
「んー、特にめぼしいものはないっすね」
「そうね、この部屋オーブ以外なにもないし」
フラウならあるいは俺に気づいてくれるとかないかな・・・
魂が入れ替わっているのであるならばあいつなら気づいてくれるかもしれない
そうなると早く合流しなければ
「先を急ぎましょう」
「えー、もうちょっとゆっくり行こうぜ、
この機会にもっと話しあって親睦を深めるのってどう?」
(うっさい、黙れ、俺はさっさと元に戻りたいんだ・・・)
俺はしゃべれないので代わりにオーブの間の出口の方を指差して皆を催促する。
「ほら、もへじ君も先急ごうっていってるっすよ、
用がなければ、長居は禁物っす、先がどれだけあるか把握できてないんっすから」
俺たちはオーブの間を後にすると、しばらく迷宮を壁伝いに散策する。
十数分ほど歩いた頃だった。ミザリーが声を上げる。
「おや、近くに誰かいるみたいっすよ、探知魔法に誰か引っかかったっす」
俺たちはミザリーが進むがままに十字路を直進すると、フラウ達と合流する。
だが、そこにはマックスの姿がなかった。
フラウ達はどことなく暗い雰囲気だった。
「あれ?あの筋肉馬鹿はどうしたの?」
「・・・マックスは私達を庇って大穴に落ちたの、底が見えないほど深かったから、きっともう・・・」
「名誉の死だった、我らは奴の死を無駄にはしない・・・」
「僕たちは惜しい人物を亡くしたでござるよ・・・」
口々にマックスの死を悼む発言をする。
「そう、あんな筋肉馬鹿でも私達の仲間だったものね・・・」
サグメが声を落とす。
その直後、近くの壁が粉砕され、筋肉ダルマが登場する。
「勝手に殺すなああああああああああ」
「ええええええ!?」
「いぇ〜い、ドッキリ!大成功!」
「いやぁ、彼は彼なりに反省していたんでござるよ」
「縁起でもないからマジやめるっす」
ミザリーは半ギレになって主張する。
他のみんなが騒いでいる後ろで
フラウがもへじワカになってしまった俺に気づく。
「・・・お兄ちゃんどうしたの」
俺はそのときフラウが救世主、いや天使に見えた。
俺は手を合わせ、フラウに跪く。
「・・・なるほど、お兄ちゃんの体はもへじワカに乗っ取られてしまったの」
フラウはニセ俺の方を見る、俺は必死に頷く
「・・・でも私が欲しいのはお兄ちゃんの魂の方だから、
むしろ今のほうが独占できそうだし、抵抗できなそうだから好都合なの」
フラウは俺を支配できると確信して恍惚の表情で舌なめずりする。
前言撤回、やっぱ悪魔だわこいつ