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あべこべ勇者  作者: τελαδοηβυλι
蘇生魔法で生き返れると思った?残念、邪法じゃなければ無理でした。
22/65

刑が先、判決が後?それって刑を受けること確定なんじゃないですかね?

俺はフラウから過去の話を聞いていた。

うっすら(もや)がかかっていたような記憶が思い出されてきた。


「まさか、ルーファなのか?」


「・・・そうなの、やっと思い出してくれたの。

ネクロビアの魔法のせいと今と昔で私の姿が違うから仕方ないのだけども、

そんなに強い暗示じゃないから、きっかけがあれば思い出せるの」


「ネクロマンサーは村を出る時、記憶を消されないのか?」


「ネクロマンサーは当然あのゲートの記憶消去の対象外なの、

だから、こうしてまた会えたの」


「ごめん、約束遅くなってしまって、俺が弱いばっかりに」


「ううん、またあえて嬉しいの、お兄ちゃん」


「そういえば、()の体と違うのは何故なんだ?」


「私がこのポルトスに初めてきた時に命を狙われて、元の体を破壊されたの」


「なっ!?」


「巨大な斧か大剣のようなもので真っ二つにされたの、

完全に闇討ちだったから犯人の顔は見てないの。

でも、詰めが甘いの、ネクロマンサーは単に器を破壊されただけでは死なないの」


「犯人に心当たりはあるのか?」


「私の元の体は特徴的なギザギザな傷痕で割かれていたの普通に斬られていたらああはならないの、

でもネクロマンサーって分かっただけで意地悪されたりするのは日常茶飯事だから、もう慣れたの」


フラウは少し悲しそうな笑顔を浮かべる。


「っ・・・」


俺はネクロマンサーというだけで一括に迫害されるこの世の中は間違っていると思った。

今の話だけでもフラウが勇者になろうとして外の世界でどれだけの苦労をしてきたのか想像に固くなかった。

そんな彼女に俺は何をしてあげられるのだろうか、俺は無力だ。


「俺に出来ることがあれば、何でも言えよな。協力するから」


「ん?今何でも、と言いましたの?

じゃあ、お兄ちゃんの魂をもう一度私の予備(スペア)の肉体に・・・ぐへへ」


「いや、それはもう勘弁・・・」


いつものフラウの調子に戻ってきて俺は少し安心した。

フラウと一緒に歩いていて、気づいたことがある。

それは町の人たちが、行く先々でフラウに挨拶してくることだ。


「フラウちゃん、お出かけかい?果物でもどうだい」


八百屋の親父が蜜柑のような果物をフラウに手渡す。


「果物屋のおじちゃん、ありがとうなの」


「随分町の人達には慕われてるじゃないか?」


「お兄ちゃんが来る前、ポルトスの町の沖に現れた海竜神を討伐したの、

津波を引き起こす危険なドラゴンだったの、

勇者連盟とギルドを筆頭に町のみんなで協力して倒したの。」


「海竜神が起こそうとしていた津波をフラウちゃんが初撃で狙撃したおかげで、

この町は津波に襲われずに済んだんだ。

町が今の状態にあるのはフラウちゃんのおかげだよ、

この町の住人ならみんな知ってることだよ」


なんだ、俺なんかよりずっと勇者してるじゃないか



俺たちは堤防に着くと、そこにはフェミニがいた。

こちらに気づくと向こうから声をかけてくる。


「昨日ギルドにいた坊やじゃない、私に何か用?」


「このハンカチはフェミニさんのものですか?

道具屋の近くに落ちていたのですが・・・」


俺はフェミニに薔薇の香水の臭いがするハンカチを手渡すと同時に懐から何かが落ちた。


「あらん、私としたことがありがと、このハンカチお気にだったのよね」


フェミニは俺からハンカチを受け取る。


「フェミニさんは昨日輸入された大量の黒玉をギルドの馬車で風車小屋に運びましたか?」


「・・・そこにたどり着いたというわけね。

でも残念ね、それで私をどうするつもりかしら?

関税官でもあり保安官でもある私を逮捕するつもり?

そもそも事件は何も起こっていないのよ?」


「なっ・・・」


そうなのだ鏡面世界(ミラーワールド)の一件は勇者連盟の勇者が拉致されたこと以外、

町としては何も事件が起きていないのだ。

しかも勇者たちは全員帰還している。


「坊や達の執念に敬意を評して、一つ良いことを教えてあげるわ。

私は()()()()()()()()()()()

彼女に協力したのは私の意思よ。」


「どうゆうことだ?」


「私はこの事件の原因を作った人物を確保するために動いている。

その人物を誘導するためにあえて彼女の策略に乗ったのよ、話は以上よ、帰りなさい」


どうやらこれまでのようだ。

俺たちは堤防を後にしようとする。


「あら、待ちなさい、何か落としてるわよ」


フェミニは俺が落とした薬包に気づき、拾い上げる。


「おや、これはマンドラゴラの粉末じゃないの!

ネクロマンサーの村で製造され、

栽培過程において、人死が出るくらい危険な代物なので輸入は禁止されているわ。

違法なものだという認識はあるのかしら?」


くそっ、嵌められた!

所持しているだけで罪に問われるものがあるというハカセの言葉を思い出す。


「おかしいの!先月まではこの町でも普通に取引されていたの!」


フラウは抗議する。


「法律が変わったのよ、ギルドの方針でね。

お金をくれれば、見逃してあげないこともないわよ」


俺は、財布を裏返すが小銭一つ落ちてこなかった。

ミラーシールドの購入などで全額使い果たしていたのである。


「・・・ない」


「だから言ったじゃないの、金は命より重いって」


「私が代わりに払うの!」


「駄目よ罰金は当人が払うことしか認められていないわ、連れていきなさい!」


俺はフェミニの取り巻きの屈強な男たちに取り押さえられどこかへ連れて行かれる。



俺が連れて行かれた先は裁判所だった。

ひまわりの記章をつけた変な髪型の弁護士、

霧と日差しの記章をつけた気障そうな検事、

八咫の鏡の記章をつけた老人の裁判長、

がそれぞれ待ち構えていた。


俺は法廷の証言台に立たされる。


「それでは冒頭陳述を読み上げます。

被告は堤防にてマンドラゴラの粉末が入った薬包を持っていた

このことからも被告の有罪は確定ではないでしょうか」


「待った!」


弁護士が遮る。


「そもそも、その薬包は彼のものだったのでしょうか?」


「被告人、答えてください」


裁判長が俺に答弁を促す。


「俺はギルド長から無理やり渡されたんだ、俺のじゃない!

持ってるだけで捕まるなんて知らなかったんだ!」


「異議あり!!」


検察側席の検事が机を叩き指摘する。


「この件に関しては持っているだけで罪に問われる、誰から渡されたかはまた別の問題だ。

そもそも、被告人は適当に人物をでっち上げて罪をなすりつけようとしているだけではないか?」


検事はフッと嘲笑う。


「なっ・・・!?」


くそっ、この検事、サグメ並に性格悪いぞ。


「そもそもマンドラゴラはネクロマンサーの村ネクロビアの特産品で

粉末状にされて輸入されている代物です。

飲むと気分が爽快になり、バリバリと仕事ができるようになるらしいですぞ。

・・・ワシも飲んでみたい」


裁判長最後の一言は余計です。


「俺は違法なものとは知らなかったんだ。」


「このままだと、拉致があきませんな、次の証人を呼びましょう。」


次に召喚されたのはフラウだった。


「証人、名前と職業と出身を」


「・・・フラウと申しますの、職業は勇者やっていますの、出身は・・・言わなくては駄目なの?」


「はい、黙秘権は認められません。また虚偽の証言は偽証罪に問われます。」


「・・・出身はネクロマンサーの村、ネクロビアですの」


にわかに傍聴席が騒がしくなる。

「どうゆうことだ?」「まさかネクロマンサーなの?」「俺のフラウちゃんがガッテム」


「静粛に、被告人との関係は?」


「しょ、将来を誓いあった仲ですの」


誓ってねぇええええええ、いや、両親の話もしたしフラウ的にはプロポーズなのか?んなアホな。


「被告に関してここ最近変わったことはありませんでしたかな?」


「お兄ちゃんが私との思い出をやっと思い出してくれたの、

お前がネクロマンサーなんて関係ない、俺が一生守ってやんよって

でね、一緒に勇者に成れたら勇者夫婦として結婚しようねって」


傍聴席がまた騒がしくなる

「ぐはあああ、かわいいは正義」「何アレ尊い・・・」「俺のフラウちゃんがああああああああ、くそっくそっ、壁殴りたい」


あれぇ?俺そんなこと言ったか?


「証言人は私事の発言は控えるように、事件に関する証言をお願いします」


「えーと、えーと・・・」


フラウは必死に考えている


「特にないの」


ないんかい・・・いや、フラウの立場にしてみれば俺が渡された現場見てないし、仕方ないのか


「この証人に関してはこれくらいですかね、では次の証人を呼びましょう」


え、はや、これだけかよ。

法廷に召喚されたのはギルド長だった。


「証人、名前と職業と出身を」


「何で俺が呼びだされなきゃなんねぇんだ。

みんなも知っての通り、俺はこのポルトスの町のギルド長をやっている。

この裁判所の運営費も俺が出している。後は分かってんだろうな?」


ギルド長が圧を聞かせる。


「証人、被告人にマンドラゴラの薬包を渡しましたか?」


「知らねぇよ、そいつが勝手に持ってただけだろ?」


「わ、私見ました。ギルド長がその人に何か渡しているのを」


指摘したのは傍聴席にいたギルドの受付嬢だった。


「あぁん?」


ギルド長は受付嬢を睨めつける。


「ひっ」


受付嬢は目線を落とし、思わず席に座り込む


「今のは証言としては認められませんが、重要な内容です。

証人いかがですかな?」


「知らねぇといったら知らねぇ、

そこまで言うなら俺がやつにブツを渡した証拠見せてみろや」


「くらえっ!」


弁護士が何か紙のような薄い何かを提示する。


「なんですかなこれは・・・」


「これは勇者連盟のある勇者がギルドに設置していた機器から出力されたものです。

その機器はビデオカメラといい、その一コマを切り取った写真というものです。」


そこにはしっかりと俺にマンドラゴラの薬包を押し付けるギルド長が映し出されていた。

いや、ハカセお前なにやってんの!?


「なん・・・だと!?」


ギルド長の顔色が悪くなる。


「わ、渡したものがマンドラゴラとは限らないじゃねぇか」


「往生際が悪いですね」


弁護士はそういうとビデオカメラを取り出しリピート再生させる。


>「じゃあ、お近づきの印にこれをやるよ。

マンドラゴラを潰した粉末でな、

疲れてるときに飲み物に混ぜて飲むと気分がハイになるぞ」


「これはビデオカメラのもう一つの機能、録音と呼ばれるものです。

これでもまだ言い逃れ出来るつもりでしょうか?」


「うぐぐ・・・」


「そもそもマンドラゴラの取引は先月まで合法でした。

それをどういった理由で違法としたのでしょうか?」


「ギルドの連中と協議の上、国際的に決めたんだ。

マンドラゴラには中毒性のある成分があり、健康被害があるとな

そこで今後各国でマンドラゴラの輸出入をしないという決定になった」


「異議あり!」


弁護士は机を叩く。


「そもそもマンドラゴラの粉には麻薬的な成分は含んでいません。

マンドラゴラはネクロマンサー達にとっては主要な収入源のはずです。

これを理由もなく、輸出入禁止にするのは、

ギルドの職権乱用なのではないでしょうか?

また、ネクロマンサーの術の媒介となる黒玉の関税も大幅に引き上げられる予定だったそうですね」


「てめぇ・・・」


傍聴席がざわつく

「どうゆうことだ・・・?

ギルド長がマンドラゴラの取引を禁止したのは、

ネクロマンサーを排除するためか?」


「静粛に、静粛に!

ええい、なんだかわからんからとりあえず有罪じゃ有罪!判決は刑の後に考える!」


裁判長はそういって木槌(ガベル)を叩きつける


「ちょ・・・」


何だがわからないからって有罪にされちゃたまらない。

今の流れ、明らか無罪だろ。

そもそも判決を決めるのがあんたの仕事だろがい、頼むから思考放棄しないでくれ。


「彼奴を引っ立てい!」


「ええっ!?」


俺は抵抗もできず、憲兵に掴まれ法廷から牢へと連れて行かれる。

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