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あべこべ勇者  作者: τελαδοηβυλι
蘇生魔法で生き返れると思った?残念、邪法じゃなければ無理でした。
21/65

回想は大抵良い話なんかじゃなくて黒歴史か死亡フラグって相場が決まっている。

幼き日のワカとサグメは両親に連れられ、

ネクロマンサー達が住む、死者の村ネクロビアに来ていた。


村の後ろには巨大な世界樹が生えており、

月明かりに照らされた村の家々からは幻想的な光を放っていた。


「やれやれ、やっと着いた。メイガスの頼みとはいえ、

こんな秘境までマンドラゴラを取りに来ないといけないとは」


「しっ、あんまり滅多なこというんじゃないわよアポロ、

この村の人たちはそのマンドラゴラによる交易で生活しているのだから」


「おっと、すまないアウラ、それより子ども達をどうしようか?」


村に到着するなりワカとサグメが暴れだす。


「わーい、村だ、父さん探検してきていい?」


「お母さん、私も私も、村のお友達作りたい」


「はいはい、元気が有り余ってるわね。その間に宿を手配するから、ちょっとだけよ。」


ワカはサグメとともに村を探検する。

村には水車小屋があったり、牛や豚の飼育小屋があったり、周囲には畑があったりと

これといって一見普通の村のようだった。

村の中央の広場にいくとエプロンをしたおばちゃんが

顔のある人型の植物を乾燥させていた。


「おや、見慣れない子達だね、どこから来たの?」


「お父さんとお母さんに連れられてきたんだ。

ポルトスっていう港町からずっと船で、

この村ってなんて名前の村なんですか?」


「そうかい、この村はネクロビアといってね。

今、私が乾燥させているものが特産品だよ。

外からここに来る人は大方これがお目当てだろう」


「それなんですか?」


「マンドラゴラといってね、特殊な薬の材料に使われるんだよ。

ただし、栽培というか収穫がとある理由でとても困難でね、

この村でしか、育てていないのだよ。

さてと、私はこれで失礼するよ。

あ、村の外の畑には命が惜しければ近づいちゃ駄目だよ。」


そういうとおばちゃんは乾燥させたマンドラゴラを藁に包むと帰っていった。


「へへへ、なんか、面白そうなこと聞いちゃった」


「え、駄目だよ、お兄ちゃん、村の外の畑に行くつもりでしょ。

お父さんとお母さんにちょっとしたら戻ってきなさいって言われたじゃない。」


「勇者足るもの未知には果敢に挑戦すべし、それともサグメは怖いのか?」


「こ、怖くないもん、でもさっきのおばちゃんに行くなって言われたじゃない」


「ちょっと行ってみてくるだけだよ」


サグメの回答を待たずにワカは村の外へと走り出す。


「あ、もう〜〜〜」



ワカが来たのは村の外の畑と世界樹が一望できる小高い丘だった。

そこには生えている一本の木の下に麦わら帽子をかぶり、白いワンピースを着た一人の少女が座っていた。

幻想的な月明かりに横顔が照らされ、ぼんやりと畑を見つめる姿にワカは思わず見惚れてしまった。

少女はワカに気づくと話かけてくる。


「・・・あなたは誰?」


「お兄ちゃん、待ってってば〜〜〜」


サグメは息を切らしながら走ってくる


「俺はワカ、こいつは妹のサグメ、村の外から来たんだ」


「ふぇ?この子誰?」


「・・・私はルーファ、今は畑の番をしているの」


そういうと何事もなかったかのように視線を畑に戻す。


「あ、君じゃなくて、ルーファはマンドラゴラの番をしているんだよね、

収穫してるところ見にいってもいいかな?」


「・・・駄目、他所の人が畑に近づくのは危ない、

マンドラゴラは収穫時に引き抜いた際の叫び声で周囲の生き物を絶命させるの」


「だって、収穫してる人いるじゃないか・・・?」


畑の方に目をやると何人もの人が農作業をしている。

当然収穫の作業をしている人もいる。


()ではないわ・・・よく見て」


よく見ると体の一部の骨がむき出しになっていたり、

頭部の一部が欠けて腐敗していたりしていた。


「ひっ・・・ゾンビ!?」


「私達はネクロマンサーの一族、そしてネクロビアはネクロマンサー達の村なの。

そして、マンドラゴラの収穫は私達がゾンビを操って行っているの、

マンドラゴラがこの村でしか栽培されていないのはそれが理由なの」


「へぇぇ、じゃあ、あのゾンビ達はルーファが操っているの?

すごいんだね!」


ワカは目をキラキラ輝かせながら尋ねると

ルーファはこくりと頷く


「・・・私は別にすごくなんか無いの」


「お兄ちゃん、私ゾンビ怖い・・・帰ろうよ?」


サグメは俺の後ろで俺の服を掴み震えている。


「大丈夫だよ、ルーファがちゃんと制御してるから僕たちに襲ってこないって」


「お兄ちゃんの馬鹿!私、先戻るね」


そういうとサグメは猛スピードで村の方に駆けていった。


「・・・あなたは帰らないの?」


「俺はルーファともっとお喋りしたくってさ」


「・・・そうなの?」


「おう、俺の将来の夢は父さんと母さんを超える勇者になることなんだ」


「勇者?」


「えーと、悪い魔王をやっつける人のことだよ」


それからワカは故郷の村からこのネクロビアまで冒険してきたこと

ポルトスから船旅で巨大なイカに遭遇したこと、そしてそのイカを両親があっという間に倒したこと

その他様々な旅の中で見た珍しいものや変な魔物、美味しい料理まで、

ルーファは聞き入って話の節々でうなずいていた。


「・・・私も勇者になれるかしら?」


「ああ、慣れるさ、あれだけのゾンビを操れるんだ俺が保証する。」


「・・・でも私魔法の詠唱苦手なの」


「ルーファは口下手だからお喋りの練習をするといいよ」


「私友達いないの・・・」


「俺が話相手になってやるよ」


「でも、ワカはずっとこの村にいるわけじゃないの」


「俺がいなくなったときは、そうだなぁ、

良いおまじない教えてあげるよ」


「おまじない?」


「そう早口言葉っていうんだ。発声や詠唱の練習にもなるんだ。

いいかい、しっかり聞いていて

生麦生米生卵、赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ、隣の客はよく柿食う客だ、かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこあわせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ。

さあ、繰り返してみて」


「生麦なごみゃなみゃたまご、赤パジャマ黄パジェマ茶パジェマ、隣の客はよく客食う柿だ、かえるぴょこぴょこ三ぴゃこぴゃこあわせてぴゃこぴゃこ六ぴょこぴょこ、

ふええ、難しいの」


「明日もまた会いに来るから、練習しておいて」


「・・・ワカのこと、お兄ちゃんって呼んでいい?

ううん、あなたに妹がいるのは知っているけど、

この村にいる間だけでも勇者の先輩として私のお兄ちゃんになってほしいの」


それから数日間、ワカはルーファと勇者になる夢を語り明かした。


「おっと、もうこんな時間か、じゃあ、また明日な!」


「・・・うん、楽しみにしてるの」


でもその明日は来なかった。




その日の夜、ワカは村を両親から村を出立することを聞かされる。


「え、もう村を出ちゃうの?」


「ああ、この村での用事が済んだからな、他にも寄らないと行けない場所もあるし」


「今晩発つわ、ワカとサグメも荷物をまとめなさい」


ワカは荷物をまとめると思い出したように宿を飛び出す。


「ルーファにお別れ言ってくる!」


息を切らしながら例の丘に向かうものの、すでにルーファの姿はなかった。

ワカは村に戻ると両親に見つかってしまう。


「何をしているの、もう出るわよ」


「あ・・・」


両親達と共に荷物を背負って村の出口に向かう。

村の出口では門番が待ち構えていた。


「秘密保持のために、村の出来事を忘れてもらうのがルールとなっております。

特にマンドラゴラの栽培方法などは知ること自体危険となるのでみなさんを守るためでもあります。

よろしいですね?」


「はい」


「では、魔法が掛かったこのゲートをお通りください、

村の外に出れるとともに村での出来事は忘れます」


(お別れ言えなかったけど、また会えるよな?ルーファ・・・)


そこに一人の少女が息を切らしながら駆けてきた。ルーファだった。


「・・・お兄ちゃん、私も勇者になる。だから、お兄ちゃんも先に勇者になっていて」


「ああ、約束だ」


俺は手を振ると村のゲートを抜けて村を去っていく。

ちょっとした言葉遊びでアルファベットを入れ替えるとルーファ(ruufa)→フラウ(furau)となります。

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