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あべこべ勇者  作者: τελαδοηβυλι
蘇生魔法で生き返れると思った?残念、邪法じゃなければ無理でした。
19/65

友情?努力?勝利?

風車小屋の内部にてフラウは優雅に俺たちを挑発してくる。

風車小屋の内部は中空となっており、上の階にハシゴで続いていた。


「先程の狙撃で死ななかったのは褒めてあげるの」


だが、そんな言葉よりも俺はある違和感に気づいた。

勇者連盟本部の門の側で無惨にもがれていたはずの左腕が何事もなく生えているのである。


「お前、本当にフラウなのか?」


「・・・お兄ちゃん何をいっているの?フラウはフラウなの」


「お前が街をこんな風したのか?」


俺はフラウを問い詰めようとしたが、肝心なことに気づく

そう、この鏡面世界(ミラーワールド)では

生存している人間は俺たち以外に一人として見かけなかったのだ。

いや、そもそもゾンビ共は元はポルトスの街の住人ではないのか?


「・・・お兄ちゃん、お兄ちゃんは今の世界に満足しているの?

最強の勇者の長男として生まれて、どんなに努力しても周りや家族からも認められない、

一方、妹の方は最強の勇者の後継者としてみんなに愛され、期待され、どんどん離されていく、

お兄ちゃんは誰にも期待されず一人寂しく余生を村で過ごすだけ、とても惨めなの。

私も一緒、ネクロマンサーの生まれというだけで迫害され、明日生きるのすらも困窮したことがあるの、

私達は似た者同士、私たちを認めないこの世界ならいっそ作り変えちゃえばいいの、

もうすぐ、この鏡面世界(せかい)は本当の世界へと()()()()()

現世(うつしよ)と冥界が入れ替わる時、全ての現世(うつしよ)の魂は冥界の亡者どもの器へと転生するの、

そしてその世界を統べるのはお兄ちゃんと私なの、私たちを虐げるものはここにはいないし、全ての亡者共は私の下僕。

さぁ、一緒に始めるの現世の終焉と冥界の復活を!

そして私と一緒に悠久の時をこの世界で幸せに生きていきましょう?」


フラウは陶酔した顔で俺を誘う。


「ちがう!!確かに俺は自分がどんなに努力しても強くなれなかった、

サグメにもコンプレックスを覚えたことだって何度だってある。

でも結果的に努力した日々は無駄になっていない!

何より、こんな弱い俺にも仲間が出来た、

それは癪なことだが、きっとサグメが引きこもっていた俺を村から引っ張り出してくれたおかげだ。」


「・・・フフフ、いいわお兄ちゃんのその幻想を粉々に打ち砕いてあげるの」


フラウは裏側のカーテンを開けると

そこにはボロボロになり、鎖に繋がれた意識がないサグメの姿があった。


「・・・こうゆうことになると思ったからわざわざ生かしておいたの、

お兄ちゃんにはそこの邪魔な3人を殺して欲しいの、そしたらこの女の命だけは助けてあげるの」


「なっ・・・」


フラウの右手が人間ではありえない方向に曲がり、腕から仕込みナイフが人形の皮膚を突き破り飛び出す。

その切っ先をサグメの喉元に突きつける。


「・・・早くしてなの、この女の命がどうなってもいいの?」


「くそっ!」


図らずも俺はハカセ、マックス、ジャキガンと対峙する。

俺は背後のサグメの方ちらりと見てハカセ達とアイコンタクトする。


(わかるな、隙をついてサグメを救出しろ)


(わかっているでござるよ、サグメどのを救出するんでござるよね)


「いくぞぉ、オラァ!」「我の刀の錆にしてくれるわ」


「へっ?」


マックスとジャキガンが俺に襲いかかってくる


「ちょ、おまえら、待てって」


「俺たちはお前をぶっ倒してサグメを救う」「尊い犠牲だが仕方ない、わかってくれ友よ」


「くそっ」


俺は破れかぶれで振ったボロボロの剣がマックスとジャキガンにかすると

二人共紙切れのごとくふっとばされていく

え、俺超強!いや、あいつらが超強いからなんだけど


「いやー・・・はは、敵にするとこれほど厄介な敵はいないかもしれないでござるかもね・・・」


「俺はお前らとは戦いたくない・・・ハカセ、お前ともだ」


俺は剣を構える


「・・・みんな同士討ちはやめるの!」


入り口を見ると、そこには左腕を失ったフラウがいた。


「・・・よくもさっきはやってくれたの、私のお兄ちゃんに変なこと吹き込まないでほしいの」


「え、フラウが二人!?じゃあこっちが本物?」


「バレてしまっては仕方ないわね、そうよ私が魔王よ!」


「!?」


俺は混乱している。


「・・・魔王はお兄ちゃんが持っていた黒玉を媒介にして、私の予備(スペア)の体を乗っ取ったの、

そして私の魔導書を盗み見て、この鏡面世界(ミラーワールド)を構築したの」


あのときか・・・!俺はフラウの体から元の体に戻ったときに黒玉をなくしていたのを思い出す。

あれ、それってもろ俺のせいじゃん。

ごめんなさい、生きててごめんなさい。


「・・・そろそろ頃合いね、よいしょ」


サグメは魔力を帯びた黄金色の金属製の鎖を引きちぎる。

サグメは引きちぎられた鎖の残骸を掴むと握力だけで粉々に粉砕する。


「捕まったフリも疲れるわぁ。」


「な、なんでなの、最強の金属(オリハルコン)製の鎖のはずなのに!?」


偽フラウは激しく動揺し、

サグメは手や肩をボキボキと鳴らす。


「で、何か言い残すことはある?」


サグメが偽フラウの前に立ちはだかり、

魔法力で虚空から光り輝く剣を錬成する。


「イマジナリィソード!」


錬成が終わると同時に


「ファイナルアルティメットブレイククラッシュ!」


サグメは縦横無尽に飛び回りきらびやかな流星のような無数の剣劇を放つ。


「あ・・・」


偽フラウが何かを発する暇もなく、木っ端微塵に刻まれ息絶える。


「とどめよ!フレアバーストストリーム」


周囲の大気が圧縮し、全てを焼き尽くす烈火のビームが射出される、

放射線上のものは全て一片の塵も残さない業火によって偽フラウは消し炭となり、

ビームは風車小屋の壁を突き破り、空の彼方へと消えていった。


サグメがめちゃくちゃ強いっていうのもあるのだけど、

やけにあっさり死んだな・・・?


偽フラウが完全に消滅したのを確認した後、フラウの剣も消失する。


「お前、何で捕まったフリしてたんだ?」


「こいつの目的が知りたかったのと、

こいつを倒しても鏡面世界(ミラーワールド)から出れる保証がなかったから、

まさかいくら根暗マンサーとは言え、本物のあの子は流石にこんなことしないでしょ、

だったら、本物なら脱出方法知ってるんじゃないかって待ってたらみんな来てくれたってわけ」


「いや、起きてたんならもっと前に止めろよ!」


「単純にお兄ちゃんがみんなにボコボコにされるの見てみたかったから、でも見られなくて残念」


やっぱ性格悪いわ、こいつ。


「それよりも、風車小屋から出てる霧を止めるわよ」


ちょっと腹が立ったのでフラウが俺に背を向けた隙に

回収していたフラウの左腕を後ろから肩に乗せてやる。


「ひぃーーーーーーー、お化け怖いぃぃぃいいいいい!!」


ただ単に怖くて気を失ってただけじゃないのか?こいつ


「ちょっと何すんのよ!」


「ああ、悪い悪い、やっぱ幽霊とかお化け苦手なんだなって再確認しただけ」


「お二人ともお取り込み中のところ悪いのでござるが・・・

やはりというか、あの黒い霧は黒玉の粉末のようでござる。

それが広域の雨によって運ばれこの街全体に降り注ぎ、

黒玉の粉を触媒にゾンビ共を生み出していたでござるよ」


ハカセは粉々になった黒玉の粉末を見せる。


「・・・お兄ちゃん私の腕返して」


「ああ、ごめん」


俺はフラウに左腕を返すとちぎれた腕と左肩を魔法で縫合しだす。

次の瞬間には継ぎ目もなく何事もなかったように元に戻っていた。


「・・・みんな元の世界に帰るの、

今ならここにある黒玉の力を使ってこの鏡面世界(ミラーワールド)を消し去って

元の世界に帰ることが出来るの」


俺たちはハシゴを登り、風車の臼を見つける。

臼の中には風車の力で大量にすり潰されている黒玉の粉末があり、

臼にも巨大なストローのようなものが備え付けられており、

すり潰された粉末が風車の力で吸い出され、風車の外に飛散して黒い霧を発生させていた。


「みんなしっかり何かに掴まるの」


フラウはそういうと何やら呪文を唱えだし、黒玉の粉末が光り輝きはじめる。

その輝きは俺たちを含め、風車小屋の建物全体、さらにはやがて鏡面世界(ミラーワールド)全体を覆っていく


「生麦生米生卵、赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ、隣の客はよく柿食う客だ、かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこあわせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


フラウの詠唱の声は小さかったが光りに包まれる前に俺の耳にはやっぱりそう聞こえた。


気づくと風車小屋の風景は左右逆になっており、空は晴れていた。

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