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あべこべ勇者  作者: τελαδοηβυλι
蘇生魔法で生き返れると思った?残念、邪法じゃなければ無理でした。
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飴と鞭!じゃなくて無知と雨!いや、これはムチムチなのでは・・・?

俺たちは見失ったサグメを追って堤防に来ていた。

だが、そこにはサグメの姿はなかった。

そりゃそうか、そもそも情報が少なさすぎる、

黒いローブの老婆ということだけしかわかっていない。

俺たちも固まって行動するよりも別れて情報を集めることに専念すべきか?

気づいたら一緒に出たはずのジャキガンの姿がすでに消えていた。


近くには船着き場があり、丁度どうやら商船が何隻か到着したようだ。

港町ポルトスは各国から珍しい品々が主に交易船から市場に出回る。


ハイヒールを履いてボディラインがわかる服装のナイスバディなお姉さんが鞭を持って

船から積荷を卸している商人を取り締まっていた。


「この黒い石ってなーに?知らないわよ」


「関税官様、この黒い石は黒玉といいまして、宝石の一種でして交易品としては高値で取引できる品物でして」


「私が知らないといってるから知らないのよ!」


「そんなこと言われましても・・・宝石関連は特段規制が掛かっていなかったと思うのですが・・・」


「あんまり変なもの持ち込むとあなたの船に大雨降らして沈めちゃうわよ!」


「ひぃ、それだけはご勘弁を!船が出港できなくなってしまいます!」


商人が土下座する。


「これよ」


関税官は手でお金の形を作る。


「へ?」


「物分りが悪いわねぇ、私に追加の特別料金を渡せば見逃してあげるっていっているのよ?

それとも、鞭のほうがいいかしら?」


関税官は鞭を地面に打ち付けると

土下座した商人の頭をハイヒールでグリグリ踏みつける。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「どちらがいいか選びなさい」


俺たちは一体何を見せられているんだ?


「・・・黒玉はこの国ではあまり流通していないものなの、

私の国・・・ネクロマンサーの間では術の触媒としてよく使うので特段珍しくもないのだけど」


「へぇ・・・じゃあ、あの関税官が知らないのもあながち不思議じゃないってわけか?」


「それはどうか怪しいでござるなぁ・・・

何せこの港町ポルトスは世界中のありとあらゆる物資が運び込まれてくる街、

過去に一度も運び込まれたことがなかったことは考えにくいでござる。

少なくとも関税官は過去の記録に目を通しているはずなのでござる。」


商人の男は袋から金貨を関税官に賄賂として渡す。

関税官は上機嫌で積荷を卸すことを許可する。


「そういえば、関税官がいるってことはこの街を統治しているお偉いさんがいるわけだよな、税金だし」


「このポルトスは商工組合、ギルドが統治しているのでござる、

収められた税金はギルドに参加しているこの街の道具屋、武器屋などへの支援金や街の整備などに使われるのでござるよ」


「王様とか貴族とかがいるわけじゃないんだな、裁判所なんてものもあるのか・・・」


次の商人がどうやら積荷のチェックをされているようだ。


「む、これは・・・、直ちにこの商人を引っ立てなさい!」


「ええ!?なんでぇ・・・」


商人の積荷から大きな動物の牙が関税官に見つかり、

関税官の取り巻きの屈強そうな男どもに取り押さえられ、どこかへと連れて行かれる。


「あの商人は一体どこに連れて行かれているんだ?」


「どうやら密猟品なのでござるかねぇ?

拘束されて、おそらく裁判所にかけられるでござるよ。

国際的に狩猟が禁じられている生物はその体の一部の取引自体も禁じられているでござるよ。

下手したら持ってるだけで最悪死刑になるものもありえるのでござるよ。」


「厳しい・・・」


「なあ、いつまで俺たちはこんなところで油売ってるんだ?

早くこの街に潜伏している魔王を探さなくていいのか?」


マックスが至極真っ当な意見をいう。


「ああ、悪い悪い、

魔王を探そうにも情報が服装と老婆ということしかわからないので情報が少なさすぎる、

ここはみんなで手分けして街中の目撃情報を集めないか?」


「・・・賛成なの」


「後ほど本部で情報共有ということでいいでござるな?」


「この街は知り尽くしているからな、大船に乗った気でこのマックス様に任せておけ」


マックスがドヤ顔をする。

だったら、何故お前は地図を手に持っている、しかも逆さまに・・・


皆が解散した後、俺は老婆に遭遇した周辺で聞き込みをしていた。

しかし、黒いローブの老婆の目撃情報はなかった。


「手がかりなしか・・・」


途方に暮れていると、俺の服の端を引っ張る小さな手があった。


「・・・お兄ちゃん、大事な話があるの」


「なんだフラウか、どうした?他の場所に聞き込みに行ったんじゃなかったのか?」


「・・・お兄ちゃんにはすでに私の体が本物じゃなくて仮の器であるって気づいていると思うの、

今回探している魔王はネクロマンサーだって聞いたの、

ネクロマンサーは魂と肉体を分離できるから老婆だというのも魂を載せ替えてしまえばいくらでも容姿のごまかしが効くの、

だからネクロマンサーの見分けかたを教えてあげるの」


フラウはプリズムミラーを詠唱し光を全反射する壁をつくる。

続けざまに背後にもプリズムミラーを展開し、合わせ鏡の状態を作る。

その間にフラウは自ら入り込む。


「この状態の鏡の私を見てほしいの」


俺はフラウの言葉通り、鏡に無数に映るフラウの姿を見る。

一つだけ、明らかに異なり、心臓から淡い琥珀色の光を放っている鏡像があった。


「心臓が輝いている鏡像が一つあるように見える」


「・・・どうやら見えたようなの、

そう、合わせ鏡の中に映るネクロマンサーには一つだけ真実の姿が混じっているの、

すなわちネクロマンサーの魂が見える姿があるの、

この魂はネクロマンサーによって違うの、

ネクロマンサー以外がネクロマンサーかどうか見分けるにはこの方法しかないの」


「なるほど、この方法を使えばネクロマンサーかどうかわかるわけか・・・

ただ、気軽に使える方法でもないか・・・」


「もう一つ大事なことを伝えておくの、

鏡の中に映っている鏡像の魂を破壊することは

ネクロマンサーの魂を破壊することと等しいの、

それはすなわち、本当の意味でのネクロマンサーの死を意味するの」


「いいのか?俺にそんな大事なことを教えて」


「・・・いいの、お兄ちゃんは特別なの、

私とお兄ちゃんは過去に会っているの、

魂の匂いを嗅いだから間違いないの」


「???どうゆうことだ?」


俺は初対面のときにフラウに匂いを嗅がれたことを思い出す。


「ネクロマンサーは生物の魂の匂いを嗅ぐことで魂を識別することができるの、

お兄ちゃんはきっと覚えてないかもしれないの、その時はこの容姿じゃなかったから

・・・私もう行くの」


フラウはそう言い残すとどこかに走り去ってしまった。

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