ニート確保
仕事を探す。なかなかに難しい事である。履歴書を丁寧に書いたり、面接を受けたりとなりたい職業には、そう簡単にはなれないものである。
だが、この国民強制労働法は、誰でも希望する職に就くことができる。そのため企業が背負う負担も高まってしまうのが、問題視されている。
僕は、早速職業を紹介してくれる人のもとへ行った。こんな世の中だ職業紹介も一つの仕事として事務所を構える人が多い。僕は自分の仕事を見つけるため事務所を訪れた。事務所には、受付の女性と男性が2人いた。どうやら、2人だけで運営しているらしい。そして僕は、受付の女性に声をかけた。
「あ、 あのっ!」
「こんにちは!」
「仕事を探しに来ました。」
「それでは、前職を聞いてもよろしいでしょうか?」
前職?ここ、職業案内じゃないのか?転職だと思われてるのか。
でも、「無職です」なんて言えないよなー。
とりあえずは、警察官でした。でいいかな。
無職になる前の職業だ嘘つき呼ばわりはされないだろう。
「警察官を2年ほどやっていました。」
「警察官ですか。素晴らしいですね!」
「いえいえ、そんな誰もが思ってるようなカッコいい警察官じゃないですよ。」
「そんなに謙遜しないで下さい。市民のために戦う警察官は、ヒーローみたいなもんですから。警察官ならみんなヒーローですよ!!」
そう言って受付の女性は子供みたいな無邪気な笑顔を浮かべる。釣られて僕もぎこちない笑みを浮かべる。そして受付の女性は、続けて言った。
「それでは、お客様にあう職業をいくつか紹介させて頂きますので、奥へお入り下さい。」
「は、はい」
そして、奥へ通され、男性の前に座らされた。
テーブルを隔てて向かい合うと、男性は、顔を近づけて、目を合わせる。僕は、少し怖かったがここで引くのは行けないと思い、目を合わせたまま瞬きせずに見つめ返した。すると男は、
「警察官ってのは、間違いないな。
だけど、一つ いつ警察やめたぁ?」
「さっ、 3年前です。。」
僕がこういうと男は、考え込み頭をかく。
そして、数分経った後男は口を開いた。
「すまねぇな あんたスーツの着こなしやネクタイやら色々、ぎこちなかったもんでな、これで少し前まで元警官でした〜はねぇだろうと思ったんや。」
「はい。 実は3年ほど家に引きこもりで、いわゆるニートでした。」
「そうかぁ、俺たちは少し席を外す5分くらいで戻るから、そこで待っててくれ。」
「わかりました。」
そう言うと男は、受付の女性と外へ出ていった。
こちらから外の様子が伺える。どうやら電話をしているらしい。何か問題があったのかと思ったが、あまり気にせず配布された資料を読んでいた。数分が経ち、警察官が入ってきて、僕に手錠をかけた。
「無職歴 3年 足立 晴翔 確保」
「おいおい! 離せ!! 俺はなんも悪いことしてないじゃんかよ!」
「署へ行って話そうか。」
僕は、必死に抵抗したが、全く話を聞く様子がない
僕の抵抗虚しくパトカーに乗せられてしまった。
僕が何したってんだよ