待ち合わせと勘違い
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なるべくデートは細かくに書きたいので、分けて投稿する事になります。
ピピピ_____
アラームが鳴った瞬間に手を伸ばして止めた僕は、自らに喝を入れた。
「……よし。」
今日は雪菜とのお出掛けの日だ。
合格者説明会の時に、雪菜の事を某超巨大生物の通称で呼んでしまったので、雪菜はそれに対する罰として、一緒にお出かけする事を、それはそれは可愛らしく僕に命令したのだ。
約束した後、メッセージのやり取りで日にちと時間を決めて、(それにも一悶着あったが)待ち合わせは今日の午前十時に高校の元寄り駅に集合となっている。
「持ち物は………財布、スマホ、鍵………」
僕は前日に用意しておいた持ち物を再確認する。財布を忘れたりしたら大惨事だ。
お金はお年玉に卒業祝い、合格祝いと、中学生が持つには多すぎる金額が財布に詰まっている。
因みに卒業式は3月の終わりの方にあるので、まだ卒業祝いは貰っていない。
僕は確認を終えると、次に朝ご飯の支度に取り掛かった。
僕の家は父さんが仕事で忙しいので、家事などは僕が担当している。今日は父さんは仕事が休みの日なので、ベッドで今頃ぐっすり寝ているはずだ。
家事は僕の昔からの家での役割であり、将来役に立つとも知っているので今更面倒くさがったりはしない。
それに、家でやる事が無いとなると、話し相手などは勿論いないので少し寂しくなるのだ。
「卵は……まだあるな。」
僕は冷蔵庫から卵を取り出し、熱したフライパンに少し油を敷いて片手で卵を割って落とす。
ジュウジュウという眠気を飛ばすような音がキッチンに響いていく。
卵が固まる僅かな時間の中で、僕はトースターにパンを入れて焼き、電気ケトルに水を入れて電源を入れる。
振り返って、卵が固まっているのを確認すると、フライパンに少量の水を入れて蓋をし、蒸し焼きにした。
その後、野菜室からレタスとミニトマトを取り出し、レタスはちぎって、トマトはそのままで皿盛り付けた。
それから数分後、食卓には鮮やかな色合いをした朝食が並んでいた。
皿に乗せられたトーストはこんがりとキツネ色に焼けていて、その上につるんとした目玉焼きが載せられている。
トーストの横には先程作ったレタスとトマトのサラダが寄せられており、緑と赤のコントラストが美しい。
更にマグカップから香るダージリンが、あたかも何処かのホテルの朝食の様な雰囲気を醸し出していた。
「いただきます」
僕は堪らず朝食にかぶりついた。昨日は今日の準備で忙しかったので、かなりお腹が空いていたのだ。
「おっと………」
トーストに挟んだ目玉焼きから、黄身が垂れ落ちている。
僕は慌ててトーストを持つ向きを変えると、反対側にかぶりついて一気に平らげる。
その後はシャキシャキのサラダを堪能し、紅茶で締めた。
既に眠気は無い。紅茶に含まれるカフェインのお陰で、完全に眼が覚めたようだ。
僕は朝食の皿を下げて洗うと、洗面所に行って歯磨きを済ませて自室に着替えに戻った。
自室のクローゼットには、この前服屋で買ったブラウンのパンツとシャツ、お気に入りのパーカーが掛かっている。昨日のうちに準備した服だ。
準備した、といっても、そこまで服を持っていない僕は選ぶのにあまり迷わないのだけれど。
着衣を済ませた後は、お出掛けのプランをもう一度見る。
今回は別に一緒に遊びに行くだけなので、そこまで凝った計画は立ててない。
というか、女性経験が全く無い僕に、凝ったプランが練れる訳が無い。
一通り準備を済ませた後、僕は時計を見る。時刻は八時半。
九時の電車に乗れば三十分前には着くので、今から出れば普通に間に合うだろう。
そう思った僕は、家を出て鍵を掛け、家の元寄り駅に自転車を走らせた。
駅に着くと、案の定電車が来る時刻の十五分前だった。
以前買った苺オレを飲みながら電車を待つ。
……ふと、周りを見渡すと、通勤ラッシュに近い時間帯なので、目が死んだり腐ったりしているサラリーマンが多い。
その屍のような様子を見て、僕もいつかこうなるのか、と少し憂鬱な気分になった。
電車に揺られる事三十分。
僕は高校の元寄り駅に到着した。
定期券であるICカードを改札に通し、駅の階段を下りる。
時刻は九時半。待ち合わせまで後三十分ある。初めて女性と出掛けるので、相手よりは早く来ておきたかった。
そう思っていたのだが………
「…………居るし……」
雪菜は既に来ていた。
見間違え、という事は絶対にない。遠くからでも、溢れ出す美少女オーラが彼女は雪菜であると主張している。
周りの人達も、雪菜を見てボーッとしていたり、ヒソヒソと話したりしていた。
(……行きづらい……)
僕は少し改札口で固まっていたが、流石に見つけたのに声を掛けずに待つ、という選択肢は無いので、いつも通りに行くことにした。
近くまで行くと、雪菜は僕とは反対方向を向いてスマホを見ている事に気付いた。指が画面の上でプルプル震えている。
取り敢えず声を掛けてみる事にした。
「おはよう、雪菜」
「ひゃうっ!?」
可愛らしい声を上げて雪菜は飛び上がり、あたふたとしながらこちらを振り向いた。
「あ……お、おはよう。拓海」
「おう………」
雪菜がこちらを向いて挨拶した時点で、僕はその立ち姿に惚けてしまった。
雪菜はロングスカートに薄水色シャツのシンプルな格好をしていて、その上に羽織った、下のシャツが透けるくらいに薄いカーディガンを羽織っている。
首筋に光る白銀のネックレスが、清楚ながらも若干の色気を滲み出していた。
……それは、清楚な雰囲気を持つ雪菜には、あまりにも、恐ろしいくらいに似合う格好だった。
その場に硬直している僕を見て、雪菜が不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?」
「あ……いや、服、似合ってるなって………」
口が上手く回らず、そんな陳腐な事しか言えなかった。だが、雪菜はそんな僕の言葉に少し顔を赤らめると、
「そ、そうかな?気合い入れ過ぎたかなって少し不安だったんだけど……」
と言った。どうやら顔を赤くしたのは、僕の態度が少し引き気味だと思ったかららしい。それは違うと伝える為に、僕は雪菜の格好を事細かに褒めた。
「そんな事ない。羽織ったカーディガンが涼しげで凄く良いし、ネックレスもよく似合ってる。正直言って、僕なんかがこんな人と歩いて良いのかと思うよ。」
すると、雪菜は赤かった顔を更に赤くしてしまった。
……まだ勘違いをしているのかと、僕が今度は素直な気持ちを伝えようとすると、雪菜が口を開いた。
「後……」
「拓海、もう大丈夫。言わなくて良い。これ以上は持たないから………」
雪菜の顔を見ると、真っ赤な顔に喜びと羞恥が入り混じった表情をしている。どうやら、最初から勘違いなどしていなかったようだ…
…逆に、勘違いしていたのは僕で……
(……あ、危ない……面と向かって”可愛すぎる”とか言ったら、確実に引かれていた……)
しかし、先程までの言動も、友達としては褒めすぎの範疇に入ると思う。そういうのは恋仲になったもの同士でやる事だろう……
(……黒歴史、プラス一だな……今度からは気をつけないと……)
僕は自分の言動を戒めた。
それから、この居た堪れない空気をどうにかしようと雪菜に声をかける。
「あー……その……電車に乗ろうか。」
「う、うん。」
雪菜はまだ顔を赤くしたまま、斜め下に目線を逸らして頷いた。
いつも読んでくださってありがとうございます!
次回は天神でデートです!
…福岡在住の人、天神はデートに向いてないんじゃ?とか思ってはいけませんよ。これは想像上の物語ですので。
福岡在住では無い人は、天神とはどのような所なのだろう?と、想像しながらデートをお楽しみ下さい!
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