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学校3

次に目を開けて起き上がると、隣にはもう雪菜は居なかった。


代わりに、恐らくこの席の主であろう、茶髪のポニーテールの女の子が座っていた。


寝起きの僕がぼーっとその子を眺めていると、前を向いていたその子もこちらを向いた。


「どうも……」


と、その子は会釈をしながら言った。


「あ、よろしく……」


僕もつられて会釈する。


どうやら、この子は僕と同じで、あまり積極的ではないようだ。


…となると、お互いに関わらない方が良いかもな……



そう思った時、教室のドアが開いた。

入ってきたのは、丁度三十代くらいの男の先生だ。


その先生は教壇に上がり、一度ぐるっと教室を見回してみんなの注意を引くと、話し出した。


「はい、おはようございます。皆さん。」


何人かの生徒が挨拶を返した。


「えー……今から入学式になります。これから皆さんは、席順のままで会場に入場してもらいますが……まぁ、取り敢えず静かにしてれば良いです。」


教師らしからぬ発言をした先生は、再度教室を見回し、今度は雪菜の席で目を止めた。


「月城さんは、この後僕の方まで来てくださいね。」


「分かりました。」


先生は頷いて、僕たちに向かって言った。


「それでは解散!」


一部の生徒は先生の発言に固まっていたが、対応力のある者は既に動き出していた。


僕もさっさと会場の体育館に移動しようとしたのだが……


「拓海、話が終わるまでちょっと待ってて?」


「…はいはい。」


雪菜の話が終わるまで待つことになった。


その間、他の男子達とも交流を深めたいなぁ、とか思ったりもしたが……まぁそんな事が出来るはずもなく、僕は一人で寂しく廊下に立っていた。


そんな僕に、大輝が声を掛けてきた。


「拓海、先言ってるぞ」


「…分かったよ」


…待っててくれないのかよ…畜生…


そう呪いながら、天沢さんと連れ立って会場に行く大輝の背中を僕は見送った。



大輝が行って3分ほど経ったところで、教室のドアが開いた。


どうやら話が終わったみたいだ。



僕は教室から出てきた雪菜に声を掛けたのだが…


「拓海……」


出てきた雪菜はとても不安そうな表情をしていた。


僕は何があったのかと聞く。すると……


「新入生代表挨拶………私がするの……」


「え…そうなのか?」


僕は驚いて聞き返した。


「うん…それで、みんなの前で話すのが怖くなっちゃって……」


「そうか……」


新入生代表挨拶とは、全校生徒の前で高校生活への意気込みを語るスピーチのようなものだ。


挨拶は、入試で一番成績が良かった生徒が強制でさせられるので、今回の入試でトップだった雪菜が今回の挨拶を担当しなければならない。


…そして、その挨拶をするにあたって、雪菜がこうして不安そうにしているのも当然だ。

何しろ、全校生徒の前で一人でスピーチしなければならないのだ。

もし僕がその挨拶をしなければならなくなったら、緊張でまともに喋ることさえできないだろう。


僕は応援の意味を込めて言った。


「大丈夫。ステージから見える顔は、全部ジャガイモだと思えば良いんだ。そうすれば緊張しなくなる。」


雪菜は一瞬、ポカンとした表情を浮かべた後、プフッと吹き出した。


「クククッ……ジャガイモって……何それっ!」


セミロングの髪がサラッと流れる。


瞬きした後、甘い雪菜の香りがしたかと思ったら、僕の目の前に雪菜の顔があった。


雪菜は黒い瞳でじっとこちらを見つめてニコッと笑い、


「ありがとう、拓海」


と言った。


あまりにも二人の距離が近いのと、照れ臭いので僕は顔を背けたのだが…


「こら、こっち見なさい。」


雪菜に頬を両手で挟まれて阻止されてしまった。


結果、見つめ合う事になる僕達。


「…………」


「…………」


だが、その状態は長くは続かない。


雪菜が顔を真っ赤にして、ふいっと右に顔を背けたからだ。


僕は苦笑して言う。


「自分で目、逸らすなって言っておいて逸らすのかよ……」


「仕方ないじゃん……恥ずかしいんだから………」


「恥ずかしいんならやるなよ……」


「……拓海も顔赤いくせに……」


「………」


そうやってお互い顔を赤くして黙り込んでいる時、ガラガラッと、大きな音を立てて扉が開いた。


僕達はびっくりしてそちらを見たのだが……


「あー……その……もう行かないと不味いよって言おうとしたんだけど……お邪魔だった?」


教室から出てきたのは、クラスメイトの女子の一人だった。

とても気まずそうにチラチラとこちらを伺っている。


…というか、全部見られてしまったみたいだ。


僕が固まっていると、雪菜がその子に慌てた口調でお礼を言ってくれた。


「あ、ありがとね?」


「う、うん……それにしても、月城さんと、えっと……結城くん?って仲良かったんだ」


名前……


「え?…あ、うん。最近知り合ってね?それですぐに仲良くなって……」


「ふーん。…………良いなぁ。」


「…え?何が?」


「ううん、気にしないで。……それより、早く行かないとヤバイよ?」


僕達はハッとして、廊下にかけられている時計を見た。


「ほ、ほんとだ!」


「走らないと間に合わないぞ!」


僕と雪菜はダッシュで会場に向かう。


「え?ちょ、置いてかないでよ!」


後ろから声が聞こえて来たが、僕達は追いかけてくる声から逃げるようにして走り去った。


作者、ポニテ結構好みです。

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