お泊り4
短いです。
リビングに戻ると、月城さんがコーヒーを飲みながらソファに座っていた。
「……………」
何も言わずにウンウンと頷いている。
ずっとニヤついている月城さんを尻目に、僕は雪菜に言った。
「雪菜もお風呂入ってきたら?」
「うん……」
まだあの表情が抜けていない雪菜は、ぼんやりと返事をして脱衣所に戻っていった。
廊下に繋がるドアが閉まり、僕は月城さんに向き直る。
「月城さん………」
「何かな?」
月城さんはコテンと小首を傾げている。
雪菜の母親だけあってとても美人なので、そんな仕草はとても様になっていた。
……だが、僕は騙されない。
「とぼけないで下さいよ……雪菜をこっちに来させたのは貴方でしょう………」
「……な、何のことかな?」
少し焦ったような表情をする月城さん。
僕は1つのスマホをテーブルの上に置く。
これは、先程雪菜と脱衣所を出る時に偶然発見したもので、化粧品が並んだ棚に平然と置かれていたのだ。
「そ、それは……」
スマホを見て本格的に焦り出す月城さん。
冷や汗がダラダラと出ている。
「もう一度聞きます……本当に、貴方は雪菜をこちらに来させていないんですね?」
僕がそう最終確認を取ると、月城さんはガクッと首を下げて白状した。
「……私がやりました……」
僕はそれを聞くと、溜息をついて聞いた。
「……で、どうしてこんなことしたんですか?」
すると月城さんは少し考えた後、
「………面白そうだったから?」
とんでもない事を言っている。
「面白そうだからするような事じゃないでしょう………」
「いやぁ……2人ともどんな反応するのかなって思って……」
「はぁ………」
僕は呆れて溜息をついた。
いくら何でもこれはやりすぎだと思う。
僕は少し責めるような口調で言った。
「もうこんなことはやめて下さいよ………雪菜も結構ダメージ受けてたみたいですし……」
「はぁい………」
月城さんはシュンとした表情で返事をする。
まぁ、反省してるし、か………
僕はそう思い、机に置いておいたスマホを月城さんに返した。
**
雪菜がお風呂から上がってきたが、僕は眠かったので寝させてもらう事にした。
(因みに、雪菜の様子は元に戻っていた。)
「雪菜……もうそろそろ寝たいんだけど………あ、布団ってどこ?」
「あ、こっち。ついて来て。」
雪菜に案内されて、僕は二階に行く。
かなり眠いので、頭がぼんやりとしている。
「拓海の布団はここね。」
布団の敷かれた部屋に案内された時には、僕の眠気は限界に達していた。
ドアに何か文字が書かれていたような気もするが……
「うん……ありがとう……」
「眠いの?」
「うん……」
「じゃあ電気は消しておくね。」
「ありがとう……」
僕は速攻、布団に潜り込んだ。
布団からは、甘い雪菜の香りがした。
「おやすみ、拓海。」
「おやすみ…」
その言葉を最後に、僕の意識はプッツリと途絶えた。
ここが雪菜の部屋だとは気が付かずに。
次の日起きた時、僕が叫び声をあげたのは言うまでもない………