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お家デート(1)

更新遅れて申し訳ありません。



色々あったんです……色々……

ナンパが去ったあと、僕たちは予約していた映画を見た。

勿論、雪菜と手を握ったまま。


何やら雪菜が作画に感動していたりしたが、僕はそんな事は分からない。何故ならば……


「わぁっ、あの子可愛いね!」


ニギニギ……


「……そうだな」


(いや確実に貴方の方が可愛いですよ?もっと自分の魅力を自覚してくださいね?あと手をニギニギしないで!?)


…こんな風に、雪菜が僕の手をずっとニギニギしてくるせいで映画に集中できないのだ。

何やら前の二次元スクリーンで凄い事が起こっているらしいが、僕にとっては美少女に手を握られる事の方が凄いです。はい。


ドン!


……ん?後ろの人、椅子蹴ってきてないか?


……あ。…眼鏡かけて髪が長くて肌が汚い太った男の人だった。メチャクチャこっち睨んでくる……


取り敢えず会釈しておいた。すみません、という意味を込めて。


キモオタさんは、チッと舌打ちし、顔を背けた。


その後も映画を見続けたのだが、横からの攻撃と後ろからの攻撃が激しすぎて、内容はほとんど入ってこなかった。


* * *


映画を見終わった後、時計を見るともう十七時だった。

そろそろ電車に乗らないと、日が暮れる前に向こうの駅につけない。


「雪菜。そろそろ帰ろうか。」


「え?……もうこんな時間……うん。分かった。」


雪菜は少し残念そうにそう言うと、僕に付いて歩き出した。


「…今日は楽しかったよ。」


「うん。私も楽しかった。……少し嫌な事もあったけど……」


確かに、ちょっと歩いただけで二回もナンパを受けるなんてな。しかも連れが居るのに。

今度何処かに行く時は、もっと人の少ない所にしよう…

僕はそんな考えも兼ねて、雪菜に言った。


「今度は、雪菜の家の近くの何処かに行ってみたいな。」


「うぇ?」


「…うぇ?」


「あ、いや、違うの!ちょっと意外だったから……」


「……意外?」


「なんでもない!……うん。わかった!次は私の家の近くに行こう!」


「お、おう。」


なんだかよく分からないが、次の予定は決まったみたいだ。


それから十分ほど歩き、駅に辿り着いた。


「…電車は……あった。」


五分後に急行/快速列車が発車するようだ。


「雪菜、あの電車に乗るぞ。」


「どれ?……分かった。」


雪菜は僕が指差した電光掲示板を見て頷いた。

ホームを見ると、既に車両は駅に着いている。僕たちは乗り遅れないように、先に乗ってしまうことにした。


二人席に並んで座り、電車が発車するのを待つ。


「……疲れたねー」


雪菜が欠伸をしながら言うので、僕も返す。


「…ああ。疲れたなぁ。」


(大半の原因は雪菜のスキンシップによるものだけどな……)


その後は、今日見た映画の話をして盛り上がった。一応、事前にあらすじ等は調べておいたので、あとは記憶にある映像に当てはめていけば話には着いていける。

映画に集中できなくても、大丈夫なのだ。


それからしばらく話をしていると、ちょうど五分経った頃に駅のアナウンスが流れ、ドアが閉まって電車が動き出した。





* * *





…ゴトンゴトン……ゴトンゴトン……


電車の音、振動。

それは人間の眠気を極限まで引き出すものであり、一度電車の中で眠れば大抵は降りる駅を逃してしまう。

僕も何度か苦い経験が………


ゴトンゴトン……ゴトンゴトン……


あぁ…眠い……だが、眠れない。

雪菜が寝てないのに、僕が寝るわけには……

そう思った時だった。


…ポスッ


(!?)


何やら右肩が少し重いぞ?とんでも無くいい匂いもするし……


恐る恐る横を見ると……僕の肩に頭を乗せて眠る雪菜が居た。僕は雪菜の顔が予想以上に近いことに固まってしまった。


(……………)


「……スゥ……」


(……………)


「……クゥ……」


(……………)


(……………)


ツンツン


「んぅ……」ニヘラッ


(可愛いな!おい!)


いや、本当に可愛い。例えるなら、甘えん坊の子猫の百倍は可愛い。


(もうちょっとだけやってもいいよな……)


ナデナデ……


(…………)


「…………」


(…………)


ナデナデ……


(……………)


「………んっ………」フニャァ


(……あ、鼻血出そうだわ。)


うん。可愛い。


* * *


「んー……っ!よく寝たぁ……」


「……………」


「あれ?起きてたんだ?」


「……………」


「た、拓海?大丈夫?」


「…………うん。」


「本当に……って!鼻血!鼻血出てるよ!」


雪菜はティッシュを出して僕の顔を拭いてくれた。

そういえば鼻血を出してから、ずっと賢者のような思考になっていた気がする。


「ありがとう。雪菜。」


「うん……?」


雪菜が疑問の眼差しを僕に浴びせていた時、車内のアナウンスがなった。駅に着いたみたいだ。

幸い雪菜の意識はそちらに行ってしまった。流石に雪菜の寝顔で鼻血を出したとは言えない。

ただのへんた……いや、ただの急性血圧上昇だ。


「ほら、降りよう。」


「うん。」


僕と雪菜は駅に降り立った。

朝、ここで待ち合わせしてからまだ七時間程しか経っていないのに、久しぶりに感じるのは、一日の内容がいつもより濃いからだろう。


「じゃあ、行こうか。」


「うん……でも、本当にいいの?」


「大丈夫。流石に夜道で女子が一人なのは危ないからな」


実は、電車内で僕は雪菜を家まで送っていくと言っていたのだ。雪菜は遠慮したが、僕の家に門限など無い。

補導される時間帯前までに帰ればいいので、家まで送るくらいはできる。


雪菜は僕の言葉を聞くと、ちょっと嬉しそうな顔をして、


「ありがとう」


と言った。ぼくは頷いて、歩き出した。




「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


かれこれ十分ほど沈黙が続いている。

話題を振ろうにも、今日の話題はもう話尽くしたし、なんとなくお互いに黙る雰囲気になっている。


と、そこで雪菜の家が見えてきた。

雪菜の家は病院の方ではなく、ちゃんとした一戸建てが別の場所に立っている。

初めて見るその家は、全体は白を基調とした明るい感じで、玄関のドアの色は黒だ。二階建てであり、屋根には見えるところでは天窓もある。


僕は雪菜を玄関まで送って、帰ろうとした。


「じゃあね。今日は楽しかったよ。」


「……………」


雪菜は何故か俯いている。

どうしたのだろうか?


「雪菜?」


僕が彼女の名前を呼ぶと、雪菜はパッと顔を上げた。

今日一日で何回も見たように、真っ赤になっている。


「た、拓海!」


「はいっ!」


いきなり名前を呼ばれたので、驚いて言ってしまった。

恥ずかしい。


「わ、私の家、見たい?」


「見たいです!」


非常に光栄である。あまりにも嬉しすぎて天に召させるまである。


「じゃあ………どうぞ……」


「はい。お邪魔します………って、待て待て!」


「?」


「入っていいの?」


「え?うん。」


「僕、男だよ?」


「男がどうかしたの?」


「いや、入れるの嫌じゃ無いのかなって……」


「拓海なら良いの。ほかの人は嫌だけど……」


「え……それって………」


「あ、あはは……えっと--------」


「男として見られてないのか………」


「……はぁ………またそうやって……」


雪菜は僕を男として見ていないようだが、僕はれっきとした男だ。ちゃんとユムシついてるし。


あ、ユムシというのは海に生息している気色悪い生き物の事だ。

見た目は悪いけど味の方はいいらしい。


……話を戻そう。



……この状況。女子。それもこんな超絶美少女の家に上がれるなんて、一生に一度かもしれないよ?


だから……


「雪菜が良いんなら、お邪魔しようかな……」


「ほんとっ!」


雪菜はパァァァッ、と効果音が付きそうなほど眩しい笑顔を浮かべた。浄化されちゃう。


「…じゃあ、改めてお邪魔します。」


「はい。どうぞ。」




玄関に入ると、芳香剤の爽やかな香りが鼻腔を刺激した。

僕が靴を脱いで揃えて置こうとすると、バタバタとドアの向こうから足音が聞こえてきた。


「お帰り〜!そしていらっしゃい!」


「ただいま。」


「どうも。お邪魔してます。」


恐らくリビングに続いているであろうドアから現れたのは、雪菜の母親だ。

医者をしていて、この近くに雪菜の父が院長の病院を経営している。いつもサッパリとした服装をしているので、”デキる女”という印象を受けるが、実際はかなり騒がし………いや、賑やかな人だ。


雪菜の母親は、僕にニッコリと微笑んでいる。雪菜の母親だけあってとんでもない美人なのだが、今見ている笑顔は少々おかしなものを感じさせた。


なんというか………腹黒い?


「ほら、拓海くん上がって上がって!」


「へ?…あ、はい。」


雪菜の母親は、僕の背中をぐいぐい押してリビングに連れ込んだ。

リビングに入ってまず目に入るのは、綺麗なキッチンだ。

入り口のすぐ横に備えられたそれは、一目見ただけで日頃の手入れを怠っていない事がわかった。


それと………ガスコンロではなく、IHだった。羨ましい。


「雪菜、二人で部屋で待ってて。もうすぐ夕ご飯できるから。」


「え……でも、拓海はすぐに帰らなきゃ------」


「拓海くんのお父さんに、今日はこっちで夕ご飯をご馳走するって言ってあるから大丈夫。向こうも了承してるし。」


「え、いつのまに……」


僕の知らないところで父さんが色々やっていたらしい。

と、いうことは恐らく、これだけでは終わらないだろう。

僕がこの後何が起こるかと予想していると、雪菜が肩を叩いてきた。


「私の部屋に行こ?」


聞き方がアレですが、はい。

そのままの意味ですね。はい。


「うん。」



雪菜の部屋は、階段を上がった二階にあった。

ドアには、”ユキナのへや”と書かれている。


……ん?”ユキナ”?


その名前を見た瞬間、ピリッと僕の頭の奥で何かが鳴る音が聞こえた。


「なあ、雪菜。この”ユキナ”って……」


「へ?そ、それは…………そう!私のお姉ちゃんの名前よ!お姉ちゃんが、”ユキナ”だったの!」


「ふーん……」


……まあ、別にいいか。


「とりあえず入って、適当なところに座って待ってて!私は何か飲み物を持ってくるから!」


「分かった。ありがとう。」


雪菜の気遣いに感謝しながら、僕は部屋に入った。


部屋に入ると、フワッとした甘い匂いに僕は包まれた。

男子が特に強く感じる、女の子特有の甘いミルクのような匂いと、柔軟剤の花のような匂いが混ざり合って、なんとも言えない甘い匂いを作り出していた。


雪菜の部屋はかなり広めにとられていて、ベッドと机が二つ。等身大の鏡。クローゼット。そして本棚が三つと、かなり家具が間隔を空けて配置されていた。

雪菜は本が好きなようで、本棚には左側からライトノベル、純文学、さらに純文学が集まった本棚だった。


……というか、ラノベのチョイスが中々いいな……


異世界ものは面白いものだけを出版社に関係なく集めて、他は学園ものが置かれている。ひと昔前の”シャナ”シリーズや、”SAO”シリーズ。……おっ、”俺ガイル”もあるな。

…最近のだと、”孤独者”とかがある。


純文学には、太宰治や宮沢賢治、芥川龍之介に夏目漱石などの文豪から、僕が知らない作家の作品まであった。全体的に、ミステリーや推理小説にジャンルが偏っている。

…見たところ、雪菜は作者によって買う本を決めるのではなく、地道に面白いものを探していく派らしい。


「うーむ……」


唸ってしまうほど、魅力的な本棚だった。


本棚に近づき、一冊手に取る。


僕はどちらかというとラノベの方が好きなので、そっち方で気になる本を取って眺めていた。


三冊ほど冒頭を読み終わったところで、背後のドアが開いた。


「おまたせー。………あれ?拓海、本好きなの?」


「うん。好きだよ。」


「っ!……そ、そう。……お茶、持ってきたけど、飲む?」


「飲む。ありがとう。」


「ん。そこに座ってて。」


雪菜はそういうと、カップに入った紅茶を僕の前に置いた。

そして自分の分も取ると、カップを持ったまま話し出した。


「ごめんね?無理やり夕ご飯を一緒に食べる事になっちゃって。」


「雪菜が謝る事ない。家に帰っても一人で食べるだけだし、むしろこっちが食べさせて貰うんだから。」


一人だけの食事だと、寂しさを感じる事が度々あるのだ。誰かと一緒に食べた方が食事は美味しく感じる。


「それならいいけど……」


「うん。」


僕はそこで、雪菜に先程の本棚の話を出した。


「そういえば、雪菜はラノベとか読むの?」


雪菜は少し、うーん、と可愛らしく唸った後、頷いた。


「好きと言えば好き。でも、ちょっと物足りない…」


「ああ、それはわかるな。一冊読むのに全然時間がかからないし、結構王道展開とか多いし。」


あと下ネタも多い。一部のものは淫語を出すためのデバイスでしかなくなってる。


「純文学とかだったら、ゆっくりゆっくり飲めるんだけどなぁ。」


「……まあ、そんな所もラノベの魅力なんだろ。僕だって、落ち込んだ時に明るい学園ラブコメとか読んだら元気が出るからな。」


「とら○ら!とか?」


名作を知っているではないか!


「あれは面白かったよなー。」


「そうそう。そもそもあの設定がねぇ。」


「まあ、僕の中での最高はエ○ァンゲリオンだけどな!」


「それアニメじゃん……」


「名作という事には変わりない!」


ヒトのクズさとかエゴとか、ヒロインの精神崩壊とか、鬱展開ばっかりだけどな!そこがいいんだよ!


「名作……といえば------」


雪菜の声は、扉を控えめにノックする音で止まった。扉の向こうから雪菜の母親の声が聞こえてくる。


「雪菜と拓海くん!ご飯できたから下に降りてきてね!」


……どうやら、ここまでのようだ。

同じ趣味を持つ人と語り合うのはこんなにも楽しいものなのだと、僕は初めて知った。


大輝とはあまり趣味が合わないしな。


「拓海、降りよう。」


「分かった。」


僕と雪菜は階段を降り、一階のリビングへと向かった。







読んでくださってありがとうございます!



お家デート編はまだ続きます!




追記:この作品に登場するアニメやライトノベルのチョイスは作者の独断と偏見によるものです。ご了承下さい。

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