日々の色々 8 姫望と、『元カノ(たぶん)』
「ひな、ごめんっ・・あの後、ジムに戻ってたんだ・・!」
「んっ・・♪」
身ぶり手振りで慌てて説明するユウトくん可愛い・・♪
「ユウトくん頑張り屋さんだもん、知ってる・・♪」
ユウトくんがホントにジムに行ってたのは知ってる。
まだ立てなかった ゆいさんを おんぶして、ジムの前を通った時に気付いた。
ユウトくんの匂いが、ジムの前とジムの中から消えてないことに。
ゆいさんも不思議に思ったみたいで、ゆいさんを おんぶして匂いを辿ってみた。
『障害物』と書かれた部屋の前までで匂いは途切れていたから、中に居るのは分かった。
2人で耳に集中すると、2人共、中の声が聞き取れた。
混ざった匂いで分かってたけど、ユウトくん以外にも何人も居るのが分かった。
ハッキリと聞き取れる声は2人。
聞き覚えのある声だった。
お姉さまの家族になった雪緒さん、雪緒さんの娘のフェリスさんの友達のミイシャちゃん。
この2人が居るって事はフェリスちゃんも居るんだと思った。
室内の様子が分からないけど、音で、走り回ってるのは分かった。
ユウトくんが「隠せ」とか「パンツ」とか言ってて、すぐにでも中に入って行きたかったけど・・入口が開かなかったから行けなかった。
少ししたら皆で出て来たから ゆいさんと2人で隠れた。でも、フェリスちゃんにはバレた。
目が合ったから間違いないと思う。
フェリスちゃんは身体が弱いみたいだけど、良くなれば すごい人になれると思う。
アレッサさんが一目置いてるのも納得だ。
ユウトくん達が行った後、『障害物』の部屋を見てみた。
すっごく色んなモノがあって、何の為の部屋なのか分からなかったけど・・ゆいさんは分かったみたいだった。
「次からは、私とするより こっちの方が良い」って勧めてくれた。
ただ、何をする部屋なのか分からなかったんだけど。
■
部屋で夕御飯を食べながら、ユウトくんが色々話してくれた。
『鬼ごっこ』とか、雪緒さんと戦ってみた事とか、色々。
雪緒さんと戦ったと聞いて驚いた。
ゆいさんと戦って、あれだけ一方的にやられてしまったのに・・。
でも、あの『障害物』の部屋の謎は解けた。
想像してみたら、確かに あの部屋で鬼ごっこしたら凄そうだと思えた。
ゆいさんが勧めてくれた理由も何となく分かった。
・・・鬼ごっこ・・見た事はあるけど、した事はないなぁ・・。
訓練するなら ゆいさんとが良い。
だって、お姉さまが勧めてくれたんだもん。
・・・勧めてくれたのはユウトくんにだけど、私も一緒に訓練したい。
でも、ゆいさんと1回相手しただけで分かってしまった。
ゆいさんと、ユウトくんと私とじゃ、全然相手にもしてもらえないくらい違うって。
ゆいさんに相手してもらう以前の問題だと思う。
何て言うか、何だろう・・・そう、基本?基礎かな・・?
うん、そういうのが足りて無いんだと思う、きっと。
ゆいさんは もう、そういう基礎とか基本が出来てる。
ユウトくんも私も、ホントに基礎が足りてないと思う。
うん、今日、思い知った。
ゆいさんが勧めてくれるのなら、ゆいさんの為にも、ゆいさんの勧めてくれる方が良いかなとは思うけど・・頼んだばかりで「はい、さようなら」は やっちゃいけない事だと思う、うん。
・・・。
■
■
ここに来るのは昨日ぶりだ。
「なぁ、ひな・・ここって・・?」
「ぅん、お友達の家・・♪」
ユウトくんと2人の部屋から歩いて10分くらいかな・・?
ウチよりも お姉さまの お家の近くだ。少し羨ましい。
でも、少し周りが寂しい感じで・・少し、怖いかな・・。
ピンポーン・・♪
呼び出し音はキチンと鳴ってくれた。
何となく、押しても鳴らない気がしたの。
ゆいさんゴメンなさい・・。
・・・耳に集中してみると、室内に誰か居るのは確かだ。
もっとも、この部屋に居るのは彼女だけだと思うけど。
『・・・』
反応が無い。
インターホン壊れてるのかな・・?
キチンと鳴ったのに・・。
も1回。
ピンポーン・・♪
インターホンのカメラの前で手を振ってみた。気付いてくれるかな・・。
『・・・なに』
「ぁ、おはよう・・♪ごめんなさい、起こしちゃったかな・・?」
『・・・横には なってたけど・・』
「今、大丈夫・・?」
『・・・』プツッ
ぁ、切れちゃった。
ガチャ
出て来てくれた。
「おはよう♪」
「・・・何なの」
出て来てくれた彼女の顔は気だるげで、キツそうだった。
「ゆい!?ぇ、じゃココって・・!」
「ぅん、ゆいさんの家・・♪」
「ぇ゛・・いつの間に友達に・・?」
「は・・?」
ユウトくんの問い掛けに、ゆいさんが顔を しかめる。
「誰と誰が友達ですって・・?」
「ぃや・・ひなと・・ゆいが・・」
「は?」
有り得ない事を聞いた、みたいな反応で少しションボリする。
でも仕方ない。私が勝手に言い出しただけだし、まだ。
「ゆいさん」
「・・」
「昨日言ってくれた事、考えてみたの・・!」
「で・・?」
「やっぱり、ゆいさんにお願いしたいの」
「私にメリットが無いわ」
「でも、お姉さまに『得られるモノがある』って言われたんだよね・・?」
「・・」
こういう言い方は卑怯かもしれない。だって、ゆいさんが お姉さまの言った事を聞かないハズ無いんだから。
「あと・・」
「あと?」
「昨日教えてくれた『ふれあパンティ』って言うの、買えるお店の場所教えて貰いたくって・・♪」
「・・・・」
ゆいさんの目がユウトくんを見た。
ユウトくんから私に向いた目が怒っている様に見えた。
でも。
ニッコリ笑って頷いた。
「貴女ね・・・」
ゆいさんの顔が引きつってるけど、冷たい目じゃないから大丈夫だと思う、きっと。
「ユウトくんにも選んで欲しくって♪」
「・・っ」
横でユウトくんが すっごく首をブルブル振ってるけど、そんな姿も好き・・♪
・・・。
確かに、ユウトくんと ゆいさんの関係は気になる。
でも。少なくとも。『今は、何でも無い』のは間違い無いと思う。
なら、ゆいさんはユウトくんの『元カノ』と思えば良い・・!
『恋敵』だと思っていた華夜さんは お姉さまになってくれた。
『元カノ』相手だって、きっと何とかなる・・と思う。
うん、きっと・・!
姫望は前向きな子です・・!
恋敵を味方に、元カノを友達にする気です・・!
ユウトくん的には たまったものじゃ無いんですけど、
(ユウトくんに)恋する乙女は全力疾走です。