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The End of The World 〜休日〜  作者: コロタン
5/15

第5話 営み 〜瀧本 渚〜

ちょっと下ネタ有りなので、苦手な方は飛ばしていただいても構いません。

 「はぁ、どうすれば良いんだ・・・」


 私は今、自宅の庭で洗濯物を干しながら悩んでいた。

 私には幾つかの悩があるが、先日その内大きな悩みの一つは解決した。

 残っている殆どの悩みは私の努力次第でなんとでもなるものばかりだが、今悩んでいるのはもう一つの大きな悩みだ・・・それは、私1人の問題ではないため、なかなか答えが出せないでいる。


 「うーん、どうしたもんか・・・私もあっちの知識は疎いからなぁ。

 誰かに相談しようにもこんな悩みは恥ずかしいしなぁ・・・」


 「渚さん、洗濯物の前で唸ってどうかしたんですか?

 シミがのこりました?」


 私が腕を組んで唸っていると、聞き慣れた声が聞こえた。

 振り返ると、そこには由紀子が立っていた。

 彼女は、背中に隆二との息子である慶太をおんぶしている。


 「あぁ、由紀子か・・・別に大した事ではないよ。

 見ろ、洗濯物にはシミひとつ無い!最近の私は出来る女に進化しつつあるからな!!

 それよりどうした、何か用か?」


 私が問いかけると、由紀子は苦笑した。


 「今日は美希ちゃんと一緒にお菓子を作る約束だったじゃないですか・・・。

 約束を忘れるなんて、出来る女を名乗るには程遠いです!」


 由紀子は腕を組んで勝ち誇る。

 正直少しだけイラッと来る・・・まぁ、彼女は大抵こんな態度だから、気にしても仕方がない。


 「そうだな、私もまだまだだ・・・。

 出来る女と言うのは、美希ちゃんみたいな女性の事だな!

 あの子は、家事や子育て、畑の手伝い、夫のフォローを卒なくこなしているからな!

 私達も精進しなければいけないな・・・」


 「えっ、私達って・・・まさか私もですか!?

 私はいつだって出来る女ですよ!

 昔から、両親にやれば出来る子って言われてましたからね!!」


 由紀子は心外そうに鼻息を荒くしている。


 「いや、お前が出来る女なら、美希ちゃんは神の領域だろう。

 寝言は起きてから言え!寝癖がついたままでは説得力のかけらもないぞ!!」


 「えっ!?あっ・・・本当だ。

 それより、早く準備して行きましょうよ!

 今日は千歳さんも手伝いに来てくれるらしいですから、失敗は万が一にもありませんよ!!」


 拳を握って意気込む由紀子を見て、私も少し安心した。

 私は、あまり料理が得意ではない・・・九州に来るまでは、家事が殆ど出来ない女だった。

 だが、美希とその夫である誠治さんや、由紀子達に教えてもらいながら、少しずつだが出来るようになって来た。

 それもこれも、私の小さな夢を実現するためだ。

 好きな男性に嫁ぎ、愛する夫と産まれてきた子供に手料理を食べさせたい・・・そんなどこにでも有るような小さな夢。

 最初その事を彼等に話した時は、笑われるかと思った。

 だが、彼等は良い夢だと言い、私の夢が叶うように手伝ってくれた。

 私が諦めかけた時には、励まし、勇気付けてくれた・・・。

 そして九州に来て半年後、私の夢は叶った。

 私の結婚相手は瀧本 元気、私が誠治さん達と出会う前、誠治さんが偶然出会い、お世話になったと言う男性だ。

 元気と誠治さんは関東脱出後に四国で再会し、互いの無事を喜び、元気は私達に対して何かと目を掛けてくれた。

 四国に到着した時、私達は、美希の兄である悠介の死に落ち込んでいたが、元気とその仲間達に快く迎えられ、立ち直る事が出来た。

 九州に来てすぐ彼に告白された時は、意味が解らなかった・・・何故私なんだと思ったのだ。

 私は決して女らしい性格では無い・・・それは重々承知している。

 家事も碌に出来ない私みたいな女に惚れる物好きなど、隆二の亡くなった兄、慶次くらいのものだと思っていた。

 慶次は私の幼馴染で、高校時代に付き合った事があるが、私が他県の警察学校に進学してからは連絡もあまりしなくなり、自然消滅してしまった・・・。

 その後私は警察官になり、上司からのセクハラに業を煮やし、殴り倒して警察を辞めた後、地元に戻ってからも、慶次とは寄りを戻さずに飲み友達としての付き合いになっていた。

 そのままの関係がずっと続くのだろうと思っていた矢先、ありふれた日常が地獄に変わった。

 私は、生き残っていた慶次と隆二、当時は隆二の彼女だった由紀子と合流し、後日知り合った誠治さんがと共に関東を離れるべく旅に出た。

 そして、その道中で慶次は死んだ・・・私に別れを告げる事なく、弟を守り、私達の事を誠治さんに託して死んでしまった。

 私は誠治さんを責めた・・・何故慶次を死なせたのだと責めてしまった。

 慶次が死んだのは、誠治さんの所為では無かった・・・だが、その時の私は責めてしまった。

 だが、私に責められた誠治さんは私達に謝り、私達が落ち着くまで待っていてくれた。

 誠治さん達が待ってくれている間、私は慶次との事を思い返していた。

 そして、私はまだ彼の事が好きだったのだと気付いた・・・今更悔やんでも、彼はもう戻ってこない。

 だからこそ、私は立ち直る覚悟を決めた。

 彼が好きだと言ってくれた長かった黒髪を切り、彼に見苦しい姿を見せないようにと誓った。

 髪を切った私を見た誠治さん達は驚いていたが、似合っていると褒めてくれた。

 その後私達は、隆二が立ち直るのを待ち、さらに旅を続けた。

 その間、私は誠治さんに淡い恋心を抱いていたようだが、それに気付いた時には誠治さんは美希と恋仲になっていた。

 不思議と美希に対して、羨ましいとか妬ましいとは思わなかった・・・それよりも、自分が彼女のような可愛い女性と同じ感性を持っていた事が嬉しかった。

 今思えば、私は頼りになる男性に弱いらしい・・・慶次は多くは語らない落ち着いた性格で、皆を一歩下がった位置から見守っていたし、誠治さんは持ち前の強さと冷静な判断力で私達を導いてくれた。

 慶次と誠治さんはお互い気が合ったのか、よく2人で会話をしていた。

 あまり笑う事の無かった慶次が、誠治さんとの会話ではよく笑っていたのを覚えている。

 あの2人は互いの事を認め、親友のような間柄だったようだ。

 2人共タイプは違うが、似た者同士だった・・・だからこそ、私は誠治さんに惹かれたのだろう。

 そして私は元気と出会い、彼に告白され、彼の事を知るたびに好きになっていった・・・。

 元気は身長こそ私より少し高いが、筋肉質で体格が良い。

 竹を割ったような性格で、言葉遣いはやや乱暴だが、優しく義理堅い性格だ。

 何より元気は、慶次と誠治さんを足して割った様な人物なのだ・・・慶次の様に皆から少し距離を置いて全体を見渡し、誠治さんの様に仲間を守り、勇気付けてくれる。

 良い所も悪い所も、2人に似ているのだ・・・そんな人物を私が好きになるまでさほど時間は掛からなかった。

 彼と結婚し、今私のお腹には彼との子供がいる。

 そして、先日誠治さんが救出した貴宏を引き取り、今では3人家族だ。

 あと数ヶ月で4人家族になる・・・今の私は、あの地獄の日々からは考えられ無い程に幸せだ。

 今日は2月13日、明日はバレンタインデーだ。

 私は元気や誠治さん達に渡すお菓子を作ろうと美希達と約束していたのだ。

 元気に渡すのは今回が初めてだ・・・喜んでくれるだろうか?


 「すまない、準備も出来たし行こうか?」


 私は素早く準備を済ませて家を出る。

 美希や由紀子に相談してみようか?

 妻としての経験の長い彼女達なら、私の悩みを解決してくれるかもしれない。

 彼女達なら、私は悩みを笑わずに聞いてくれるかもしれない・・・そう思いながら美希のもとに向かった。








 私て由紀子が美希の家に着くと、すでに千歳も来ていた。

 美希と千歳は、すでに材料や道具の準備を済ませており、あとは作るだけの状態だった。


 「遅れてしまって申し訳ない・・・失念していたよ」


 「いえいえ、今日は心強い先輩も来てくれましたし、頑張りましょう!」


 美希は私達を笑顔で迎えてくれた。

 優しく、家族想いで見た目も可愛い・・・ガサツな私とはえらい違いだ。


 「今日はよろしくね渚ちゃん、由紀子ちゃん!いやぁ、正直どうしようか悩んでたんだよね・・・旦那と子供達の分となると結構大変でさ・・・。

 声を掛けて貰って助かったよ!皆んなで作れば楽だしね!!」


 美希の隣で、千歳が笑顔で手を振っている。

 千歳は、誠治さんの歳上の幼馴染で、ご近所さんだ。

 3人の男の子の母親で、家事と育児をしっかりとこなしている出来る女性だ。

 彼女が手伝ってくれるならありがたい。


 「さてと、今日は何を作ろうか?」


 「あまり手の込んだ物は厳しいですね・・・材料は結構ありますけど、種類は限られてますし、カップケーキを作ろうかと思ってます」


 「まぁ、あまり手の込んだの作って失敗したら困るしね・・・何より、1番の問題は誠治さんだからねぇ・・・」


 千歳の言葉に美希が答え、由紀子がウンザリした表情でうな垂れた。

 由紀子の気持ちは痛い程解る・・・誠治さんは料理が得意だ。

 しかも美希や由紀子、私が束になっても敵わないであろう程にレパートリーが多く、味も抜群だ・・・片手と言うハンデがあるにも関わらずだ。

 以前、彼の作ったプリンを食べさせて貰ったが、お菓子作りも得意なようだ。


 「あぁ、誠治君は凝り性だからね・・・美希ちゃんは苦労するねぇ」


 「はい・・・」


 千歳は美希の頭を撫でている。

 美希は泣きそうだ・・・。


 「まぁ、誠治君は君達が作った物なら何でも喜んでくれると思うし、大丈夫だよ!

 じゃあ、時間も押してるしさっさと作っちゃおう!何しろ大量だからね!!」


 千歳は袖をまくって意気込む。


 「味は4種類にしましょう!プレーン、ココア、マーマレード、抹茶なんてどうです?」


 「えっと・・・確か、今から作るのって義理だよね?その後本命も作るんだよね?」


 「大丈夫なのか・・・?本命を作るまえに途中で力尽きそうだが・・・」


 美希の提案に、由紀子と私は不安になった。

 人数が多いため、義理の方が本命よりも疲れそうだ。


 「小さいのを大量に作れば良いのよ、それなら材料も足りるからね!

 皆んなは本命は何を作るの?」


 千歳は会話を交えつつ、早速カップケーキ作りを開始する。

 千歳はココア、由紀子は抹茶、美希はマーマレード、私はプレーンだ。

 1番料理が下手な私は無難な物を作る事になった。


 「私はゼリーですね!渚さんと美希ちゃんはどうします?」


 真っ先に答えた由紀子が、私と美希を見る。


 「私はプリンを作りたいと思っている。

 貴宏も喜ぶだろうしな!」


 誠治さん製とまではいかないかもしれないが、作り方は習っているので不味くはならないだろう。

 

 「私が1番面倒ですよ・・・」


 美希は材料をこねながらうな垂れている。


 「美希ちゃんは何を作るの?

 まぁ、誠治君は洋菓子系はあまり食べないから和菓子かな?」


 千歳は苦笑しながら美希に尋ねた。


 「昨日、お義母さんに誠治さんの好きなお菓子を聞いたんですけど、おはぎだそうです」


 私はそれを聞いて首を傾げた。

 由紀子も不思議そうにしている。

 おはぎと言えば、丸めたごはんを甘い餡子で包んだ和菓子だ。

 難しい物では無いはずだが・・・。


 「あぁ・・・それは御愁傷様」

 

 千歳だけは解ったらしく、美希を慰めている。


 「なんでそんなに落ち込むんだ?」


 私が尋ねると、美希は涙目で顔を上げた。


 「それがですね、誠治さんって甘いの苦手じゃないですか・・・去年のバレンタインデーの時はケーキを作りましたけど、その時は和菓子の方が好きって知らなかったんですよ。

 なので、お義母さんに誠治さんの好きなお菓子がおはぎだって聞いて、最初は私にも出来るって喜んだんですよ!

 そしたら、思わぬ落とし穴があったんです・・・市販の甘い餡子だと、誠治さん苦手らしいんです」


 美希はその場に崩れた。


 「餡子から作れと・・・」


 「誠治さん、味に五月蝿いのにも程があるでしょ・・・」


 私と由紀子は揃って呆れてしまった。

 誠治さんは、私達が作った料理に極端なダメ出しをする事はないし、それとなくアドバイスもしてくれる。

 だが、作る方としては安心出来ない・・・やはり、作るからには美味しいと思って貰いたい。

 妥協は許されないのだ・・・それが誠治さんの妻である美希にとっては尚更だ。


 「餡子作るのは時間掛かるし、美希ちゃんは生地が出来たらそっちに専念して良いからね!

 皆んなでやれば早く終わるよ!!」


 千歳は苦笑しながら美希を励ます。

 美希は小さく頷いて立ち上がり、再度生地製作に専念した。







 「よし、後は焼くだけだね!

 混ぜた物が違うし量もあるから、4回に分けよう!

 美希ちゃんの方はどう?順調かな?」


 千歳は美希のフォローをしながらも、私や由紀子よりも早く準備を終え、今はオーブンの準備をしている。


 「はい、あとは砂糖を入れて煮るだけです!」


 美希はやり遂げた表情で明るく答える。

 あとは、水気が無くなるまで煮込むだけのようだ。


 「じゃあ、ちょっと休憩しませんか?」


 「あぁ、私もそうしたい・・・」


 由紀子と私はすでに疲労困憊だった。

 このあとにまだ本命が控えているのだ・・・少しだけでも休みたい。


 「じゃあお茶にしましょうか?」


 美希はテキパキとお茶の用意をする。

 誠治さんには来客が多いため、いつもお茶の用意をしている美希は手慣れた手付きで準備していく。


 「そう言えば渚さん、さっきなんか唸ってましたけど何か悩みがあるんですか?」


 由紀子は、美希の用意してくれたお茶を飲みながら私を見た。

 彼女達に相談しようとは思っていたが、まさかいきなり話を振られるとは思っていなかった・・・どうしよう。


 「おっ、悩みがあるならお姉さんに言ってみなさい!」


 「そうですよ・・・私も渚さんにはお世話になってますし、出来る事なら協力しますよ?」


 千歳と美希も私を見る・・・これは話さない訳にはいかない空気だ。


 「その・・・何と言ったら良いのか」


 「珍しく歯切れが悪いですね・・・」


 私が口籠っていると、由紀子が訝しげに見てくる。

 訝しむのは良いが、茶菓子を頬張るのはやめていただきたい。


 「えっと・・・この際だから聞くが、皆は妊娠中、夜の方はどうしてた?主に夫の方は・・・」


 『えっ・・・』


 皆の声が重なった。

 微妙な空気が流れている・・・。

 笑われてはいないが、余計に恥ずかしい。


 「えっと、それはどう言った意味で?」


 千歳が焦ったように私に尋ねる。


 「どうも何も、言葉の通りです・・・。

 妊娠中、安定期までそう言った行為は控えた方が良いのは知っているんだ。

 だがな、その間皆の夫達はどうしていたのか気になるんだ・・・。

 元気は私が2人目の妻だし、すでに経験したことだ・・・だが、私は結婚も妊娠も初めてで、妊娠中彼にどうしてやったら良いのか解らないんだ・・・」


 私は正直に尋ねた。

 恥ずかしがっていては悩みは解決しない。

 この際、しっかりと皆の意見を聞いておきたい。


 「うーん、それは人それぞれだからね・・・私のところは、どうしても我慢出来なければプロにお願いしなさいって言ってたけど」


 最初に答えてくれたのは千歳だった。

 

 「えっと・・・プロとは?」


 私は恐る恐る聞き返した。

 予想は大体ついているが、確認したかった。


 「まぁ、ぶっちゃけ風俗だね・・・」


 「それは浮気ではないのですか?」


 「うーん・・・まぁ、一般人相手ならそうかもしれないけど、プロはそれを仕事にしてお金を稼いでるからねぇ。

 私は旦那に我慢させて浮気や不倫をされるより、風俗でガス抜きして貰った方がありがたいかな?

 やっぱり、私も旦那の事は愛してるし、旦那にばっかり我慢はさせたくないしね・・・」


 千歳は苦笑しながら答えてくれた。

 確かに彼女のような考え方もあるのだろうが、私としては複雑だ・・・。


 「えっと、誠治さんはずっと我慢してくれてましたよ?

 まぁ、こっちに来てからも新しい仕事とかで忙しくしてましたから、私が出産するまでそう言った事は無かったです」


 次に答えてくれたのは美希だった。

 確かに、彼女の妊娠中も誠治さんは仕事や任務で留守にしている事が多く、休む暇も無い程だった。

 ガス抜きの暇も無かったのではないだろうか?

 それが良いとは言わないが、妊娠中の妻を置いて仕事優先にするのは頂けない・・・今度また美希が妊娠した場合は、縛ってでも引き止めよう。


 「隆二はあれですね、自家発電してました!」


 いきなり何を言いだすんだ由紀子は・・・発電でガス抜きが出来るハズが無いだろう?


 「由紀子、もっと解りやすく言って貰えると助かるんだが・・・」


 「あぁ、すみません・・・要するに自分で慰めてたって事ですよ!

 あの力で電気を出せれば、電気代の節約が出来るのに!!」


 由紀子はあっけらかんとしている。

 2人との空気の差が凄いな・・・こう言った所は素直に尊敬する。


 「でも、なんだかそれも申し訳なくてな・・・。

 せっかく私を好きになってくれたのだし、何かしてあげられないだろうか?

 別に元気が浮気とか不倫をすると疑っている訳ではないが、不安になってしまうんだ・・・」


 元気は私を愛してくれている・・・だからこそ、我慢させてしまうのが申し訳無いし、何かしてあげたいのだ。


 「じゃあ、渚さんが手伝ってあげたらどうですか?

 例えば、渚さんが手でしてあげるとか、もしくは口でとか」


 「は・・・?口で!?」


 私は由紀子の発現に耳を疑った。

 手はまだ理解出来る・・・だが、口とは何だ口とは!?


 「結構喜びますよ?隆二なんかたまに・・・」


 「待て待て待て!お前達がどんな風にやってるかなんて聞きたく無い!!

 それを聞いて、これからどうやって隆二の顔を見れば良いんだ!?」


 私は慌てて由紀子の口を塞いだ。

 危ないところだった・・・。


 「喜ぶと思うんだけどなぁ・・・」


 由紀子は残念そうだ・・・。


 「そんなはしたない真似が出来るか!!」


 「そんなぁ・・・じゃあ美希ちゃんと千歳さんはどう?やり方なら、隆二の隠し持ってる本に書いてるよ!!」


 千歳と美希は、いきなり話を振られて焦っている。


 「私も遠慮するよ・・・ごめんね由紀子ちゃん」


 「えっと・・・誠治さんが喜んでくれるならやぶさかでも無いと言うか何と言うか・・・でも、無理ですね」


 「えーっ、何でさー?誠治さんなら泣いて喜んでくれると思うよ!?」


 由紀子は美希に食い下がる。

 美希は俯いてもじもじとしている。


 「その、何と言うか・・・物理的に無理と言ったら良いのかな?」


 私は美希の言葉に理解が追いつかなかった。


 「あぁそう言えば、隆二が誠治さんは巨◯ン兵だって言ってたわ・・・。

 あれを見たら自信を無くすとかなんとか」


 おい由紀子、名作を汚すな!!

 流石の私にも今ので理解出来た・・・。


 「で、誠治さんってどの位のもんなの?言わないから教えてよ!」


 くっ・・・それは私も興味があるから止められない!

 美希は困った様に俯き、やがてジェスチャーで大きさを表した。

 太さは190mlのコーヒー缶、長さは500mlのペットボトル程はありそうだ。

 千歳と私は絶句した・・・美希はそんなものを!?


 「えっと、それって恵方巻きの話じゃないよね?」


 動揺した由紀子の発言に、私を含めた3人は吹き出した。


 「ばっ!由紀子・・・!恵方巻きって!?あはははは!!」


 「由紀子ちゃん、ナイスな例え!!」


 私と千歳は爆笑してしまったが、美希は俯いて顔を赤らめている。


 「ここで笑うのは良いですけど、誠治さんの前では言わないで下さいね・・・!

 もしそれで誠治さんが傷付いたら、私絶対に許しませんから!!」


 美希は涙を浮かべながら怒っていた。

 彼女は誠治さんを愛している・・・常に彼を支え、彼が無事に帰るのをいつも待っている。

 それなのに、私達は彼女の愛する人を笑ってしまったのだ・・・怒るのも無理はない。


 「ごめんね美希ちゃん・・・そんなつもりじゃ無かったんだ」


 「私もすまなかった・・・もし元気が馬鹿にされたら、私だって怒るだろうに。

 考え無しな行為だったよ・・・」


 「ごめんね・・・誠治君とは幼馴染だったせいで無遠慮すぎたよ・・・」


 私達は美希に頭を下げた。

 美希はしばらく鼻をすすっていたが、落ち着きを取り戻して顔を上げる。


 「私の方こそすみませんでした・・・急に怒鳴ってしまってごめんなさい」

 

 そう言った美希は恥ずかしそうに笑っている。

 普段声を荒げて怒鳴ることの無い美希を怒らせてしまい、私達は反省した。

 やはり、愛する人を笑われては誰だって許せない・・・今後は気を付けなければいけない。

 自分がされたくない事は、人にもしてはいけないのだ。


 「さて、そろそろ良いんじゃないでしょうか?」


 美希は時計を見て立ち上がる。


 「おお!良い感じに焼けているな!!」


 「これなら皆んな喜んでくれますよね!」


 オーブンを開けると、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。


 「じゃあ、他のもどんどん焼いちゃおう!」


 私達は、その後も順番にカップケーキを焼き、その間に本命のお菓子を作った。

 それぞれ味見をしてみたが、どれも美味しく出来ていた。

 美希が一生懸命作ったおはぎは、甘さが控えめでしつこくなく、彼女は大変喜んでいた。

 先程とは違い、眩しい笑顔だ。

 誠治さんが惚れ込むのも当然だろう。

 私が作ったプリンを、元気と貴宏は喜んでくれるだろうか?

 いや、優しい彼等ならきっと喜んでくれるはずだ。

 結局悩みは解決しなかったが、やはり彼に直接相談してみよう。

 彼ならきっと真面目に聞いてくれる・・・そして、私と一緒に悩んでくれると信じられる。

 だって、私達は互いに愛を誓い合った夫婦なのだから。

 

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