表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

序曲(プレリュード)

連載もやってみることにしました。

最初から史実とちょっとズレますが、あしからず。



 駄目だ。


 俺には、もう何も残っていない。


 ここにいて、なんの意味がある。



 その30過ぎの男は、窓の外に見える教会の塔をじっと睨み付け、心の中でそう呟いた。

 今日も聞くことができなかった、あの鐘の音。きっと今後もその音色を楽しむ事は許されないのであろう……


 …いっそ、この世から姿を消してしまおう。この苦しみから逃れるためにも。


 男は、思い立って仕事机の中の便箋を引っ掴んだ。


「我が弟、カールとヨハンのために。」





「…くそ……ッ!!」


 ちっとも話がまとまらず、ただの丸まった紙屑と化した遺書を前にして、男は頭を掻きむしった。無力な自分に腹が立ち、涙がとめどもなく溢れ出た。


 もういい。要は、俺が現世に残すものなど何もないという事なのだから。


 無意識のうちに左手に握られたピストルをそっとこめかみに当ててみる。冷えた鉄の塊が男の全神経を痺れさせるかのようだ。

 あとは、勇気。全てを断ち切る勇気さえあれば…




 ……Auf Wiedersehen(さよなら)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ