75 長老への説得
明けましておめでとうございます!
タッタッタッタッ…
「あっ…ネアだ…。今度は何を…」
「一緒にいるやつは誰だ?」
「見たことないな…」
「でも…なんか不思議な感じがする…」
エルフの集落へと入り…早速周りの者から奇異の目で見られることに…。
まぁ…原因の大半は俺だよね…。
黄金の髪の毛…紅い目…それでもって神様…。気にしない方が無理な話だ…。
ネアは堂々と歩いている…。周囲のエルフ達の言葉も耳に入っていないみたい…。
ネアからしたらいつものことなのか…。前の時もこんな感じだったのかな…。
「グリン!気にしなくていいよ。今はそれより…」
「あっ…うん…そうだね…」
そうして…俺の様子が気になったんだろう…。ネアは俺の意識を自分に向け、長老さん…の元へと急ぐように言葉をかける…。
エルフの集落…その長老…。
偉い人なんだろうけど…ネアの頼みを一度断ったんだよね…。実は頭の固そうなおじいさんだったりして…。
…聞いてみる…か…
「ネア…その…長老さんって…どんな人?」
「…ちょっと…めんどくさい…かも…。話はちゃんと聞いてくれるけど…難しい話で煙に巻いてる感じ…」
「煙に巻くって…」
「やんわり話をそらして…断る…みたいな…」
うわぁ…それは…嫌だなぁ…。できれば会いたくないんだけど…。
でも…エルフの皆の助けがないと…リア達を救出することもできない…。
とりあえずは…なんとか説得するしかない…か…。
そうやって歩くいていくと…
ザッザッザッザッ…
「お待たせしました…。こちらです。長老はこの中で待っておられます」
辿り着いたのは…やや緑の映える草木で造り上げられた家屋…。
見た感じ…そこまで機能性に優れたような感じではない…。台風でもやってこようものなら一瞬で吹き飛びそうな…。
他のエルフの家はそれなりに頑丈っぽく造られていたんだけど…なにかこだわりでもあるのかな…。
「…長老…ネアです。失礼します…」
ドアもなかったからノックをすることなくそのまま入室するネア…。俺も…とりあえずあとに続いてみることに…。
タッタッ…
そうして…中に入った俺たちを待っていたのは…
「…ほほ…。そろそろ来る頃だと思ったワイ…。まぁ…座りなさい」
だいぶ年を重ねたような老人エルフ…。髭を極端に生やし…ビックリするほどのシワを顔に浮かべている…。
目を閉じ…それでいて佇まいは穏やか…。衣服は相当着古していたのかボロボロ…。
それでも…圧倒されそうな雰囲気を醸し出している…。油断ならない…。
早速…ネアは床へと正座して座ると、事の要件を端的に伝える。
「…長老…集落の者達の助けをお借りいただきたいのですが…」
「…ほほ…その様子は…例の女王様が関係しておるようじゃの?」
「…はい…。悪漢達に拐われ…今も危険な状態であると思われます。ですから…」
「…今日は…森がざわついておるのぉ…」
「…長老…あの…」
「ふぅーむ…今日の朝は…どうだったか…覚えておるかの?」
うわぁ…そういうことか…。確かに…これは難敵だ…。
よくいるよな…こういう人…。話を上手い具合に逸らして…結局は断ったり…聞かなかったことにしたり…。
こんなことしてるだけでも時間がかかってしまう…。最悪…こっちのしびれを切らしてしまいそうだ…。
すっかり向こうのペース…。簡単には話がまとまりそうにない…。
「長老!どうか…」
「…ふぅむ…すぅ…」
「長老!」
あっ…これ…完全にダメなパターンだ…。どうしようもない…。
…無理かもしれないけど…俺も説得しないと!
「長老さん!お願いします!ネアも…俺も…リア達を…女王様達を助けたいんです!なんとか…話だけでも聞いてください!」
「…君が…件の男か…」
「…!?」
「知っておる…。お主の体から溢れる力は…この森に愛されておる…。ただ者ではないであろうことも…」
俺の言葉に反応する長老さん…。どうやら…こっちの正体についてもある程度理解はしていそうだ…。
…そうだとしたら…
「あの…俺のこと…どこまで?」
「ふむ…どうやら…まだ未熟じゃのぅ…。お主が選ばれたとはいえ…さすがに…ワシ自ら認めるわけにも…」
「…!」
…この人…俺が『神様』だってことまでわかってるんだ…。
俺の質問に答えずとも…この反応…さすがにエルフの皆を束ねるだけはある…。
しかも…どうやら俺を認める様子じゃない…。このままだと…エルフの力を借りるのは…難しいかもしれない…。
「そのっ…!力不足は自覚してます…。でも…」
「ワシはのぅ…そんな安っぽい言葉で動く者ではないぞぃ…。説得するなら…もう少し力をつけてほしいのぅ…」
ダメだ…これ以上は…。諦めたくないけど…この長老さんは絶対に引かない…。それほど…この森やエルフの一族を巻き込みたくないんだろうけど…。
横にいるネアも歯をくいしばって
悔しそうにしてる…。
俺は…ネアのために…頑張ってるのに…くそっ!
『まったく…助けるつもりはないってのにねぇ…。アタシも…まるくなったもんだよ…』
「「「…!!?」」」
突然…部屋に響く声…。俺を含めた三人は一瞬驚くことに…。
いや…この声…聞いたことがある…!この声は…間違いない!
俺がそう確信したそのとき…
フッ…ポフッ…
『久しぶりだねぇ…あんた…元気してたかい?』
俺とネア…そして長老さんの間に…にゃんこさんが現れた…。
今年もよろしくお願いいたします!




