72 作戦の内容は…
最近はお仕事で大変です…。
執筆頑張ります…。
トタトタトタトタ…
「グリン…お待たせ!ちょっぴり遅れちゃった…って…リア様!?」
「…ふむ…帰ってくる前に立ち去るつもりが…時期を逃してしまったのぅ…」
俺たちが話に夢中になっていた頃…両手で上木鉢を抱えながらネアが…。ちょっぴり頬が赤く染まっている所を見ると…少し恥ずかしかったのだろうか…。
「さて…妾はここを出るかのぅ…。どうも大事なものを抱えておるようじゃし…」
「えっ…そのっ…リア様…」
「よい…。あまり他の者には見られたくないもの…大切な花なのじゃろう?」
ネアはあたふたしながら反応するものの、リアはそんな様子を気にすることなく語りかける…。その表情は不機嫌でもなく…ほんの少しの微笑みが浮かんでいた…。
タッタッタッタッ…
「…あっ…その…」
場の雰囲気を察して…部屋を出ていくリア…。その後ろからネアは呼び掛けるものの、何を言えばいいのかわからず言い淀む…。
気がついたときには…俺とネアだけの空間がそこにはあった…。
「…なんというか…その…リア様がいるなんて気がつかなくて…」
「うん…俺に大切な話があるからとか…」
「そっ…そうだったんだ…。なにも部屋を出なくても良かったのに…」
ほんの少し申し訳なさそうな表情を浮かべるネア…。俺も複雑な気持ちになったけど、リアなりの配慮があってのことなんだろうな…なんて思っていた…。
そんなことを考えていると…
キィィィィ…ン…
「…あっ…。ネアの持ってるそのお花…もしかして…」
「うん…お母さんからもらった大切な花…。光ってて綺麗でしょ?」
俺はすぐにネアの両手…植木鉢の中で輝く、一輪の花に目を向けた…。見た感じは白く…ユリの花のようにも見える…。それに白く光っているのはどこか神秘性を持っていそうで…。
「スゴいね…何て言う名前の花なの?」
「うーん…私も実は知らないの…。お母さんからも聞いたことないし…」
「そうなんだ…でも輝いてるのって珍しいよね…」
「うん…もしかしたら貴重なお花かもね…」
そんなことを話しながら…俺達は不思議な…そして可憐な花を眺めていた…。ほんのり薄暗い部屋の中で星のように光る姿は、息を呑むほど美しかった…。
「グリン…頑張ろうね!」
「うん…リアのためにも…この国のためにも…」
「あっ…でも、無理しちゃダメだから…」
「ネアもね…」
「ふふっ…」
なんだか…こうして二人っきりで話し込むのも楽しくなってくるな…。この時間がいつまでも続けばいいのに…。
そう思いながらこの日は過ぎていき…そして…
『英雄大作戦』の日がやって来た…。
―
…
「…それにしても…本当にここまで変装する必要があるんですか?」
「…念には念を…じゃ…。これくらい変装しなくては他のモノにバレる恐れがある」
「…だからって髭まで…」
「…そううじうじするな。とにかく待てばよかろう…」
…あれから…俺たち四人はへんてこりんな格好でとある場所へと向かっていた…。…へんてこりん…というのは少し言い足りないかも…。
みんな奇抜な眼鏡をかけて、どうも見映えのよくない…薄汚れた服を身に付けている…。俺なんか顔の下半分をモジャモジャなつけ髭をつけてるし…。
「はぁ…なんか…変な感じだなぁ…」
「…そっ…そんなことないよ!グリンもけっこう…似合ってるような…」
「…ネア…無理して褒めなくても…」
「そうですよ…ネア様。こんな男のために気を使う必要はありません」
「…マリーさんは容赦ないですね…」
そんなネアとマリーさんも見た目は怪しそうな風貌…。せっかくの綺麗な容姿が大変なことになってる…。なんかもったいない…。
さて…そんな俺たちが一体どこにいるかと言うと…
「…本当にここに来るのかな…。スゴい人でいっぱいなんだけど…」
「妾の『千里眼』の力の疑う…ということかのう?」
「いや…そういうわけじゃ…」
「確かにこんな露店の集まるところにやつらが来るかは疑問ではあるがの…」
そう…俺達は今、多くの人で賑わっている城下町にいるところだ。
周りを見渡す限りお店がたくさん…。ここはちょっとした商店が密集している地域みたい…。
俺とネアが以前行ったレストランもけっこう楽しかったけど、ここもなかなか…。
「グリン…そんなにボーッとするでない。いつやつらが来るかわからんぞ…」
「はっ…はい…」
リアからの叱責を受けた俺は、すぐに姿勢を正して周りを見てみる…。そうだ…これから大変なことになるんだから…気を引き締めないと…。
―
さて…肝心の『英雄大作戦』についてだけど…こういうことらしい…。
これから数分後…ここに大勢の盗賊たちが襲いかかり、人々に被害を与えるとのこと…。そこを俺達が制圧し、人々を助ける…。
助けたあとにリアを含め俺達の正体を明かす…。暴君と報道されているリアはそこで事の経緯を説明し、民衆の信頼を回復していく…というわけだ…。
盗賊たちの情報はリアの『千里眼』の力で事前に把握…。これからどうなるのかを知っているのは俺たちだけ…。
この作戦は要するに、人々を助ける…という行動により信用を得て、リアの無実を広める…という目的があるわけだ。なんだか遠回りなやり方だけど、悪くはない気がする…。
ヴォルトに殴り込みに行く…なんてより無茶でもないし、地道な点では確実とも言える。リアにしてはまともなやり方だなぁ…。
さて…。今は昼頃だけどいつになったら盗賊たちがやって来るのか…。
「…グリン…」
「…!どうしたの…?ネア…」
「その…すごーく顔が怖くて…どうしたのかなって…」
…!そっ…そんな顔してたんだ…。ネアに指摘されるまで気がつかなかった…。ちょっと緊張してたのかな…。
「だっ…大丈夫だよ!ちょっと…落ち着かなくって…」
「そう…なんだ…。とりあえず無理はしないようにね?」
「うん…」
…とはいえ…うまくいくといいんだけどなぁ…。




