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63 リアの意外な側面

 「そっ…それでは儂はこれにて…!失礼いたしました!」


 「わっ…私も…失礼いたします!」


  トコトコ…


 二人はそう言うと、すぐにその場を退散してしまった…。よっぽどリアのことが怖いんだろうか…。


  「ふむ…どうやら妾のことを恐れているようじゃのぅ…。無理もないことじゃが…。まぁ、今はこれでよしとするか…」


 「…いったい何を…。俺をこんなとこに連れて『会食』まで…。目的が見えないですよ…」


  「そうじゃな…まぁ目的に関してはこれから説明するじゃろう…。今は楽しんでおけ」


  リアはそう言うと、何やら企んでいるかのように微笑みその場を後にした…。本当に油断できない…。俺とネアを離れ離れにしたこともあるし…嫌なこと考えてなかったらいいんだけど…。

  それにして豪勢なパーティーだ…。見たこともない美味しそうな食べ物がたくさん…。こんなものをどこから仕入れてくるのかわかんないけど、きっとその辺にあるものじゃないはず…。食べても…いいのかな…。でも…食べるならやっぱり…


  「…そんな顔するなんて…グリン様は変態ですね」


  ヒョコ…!


 「マッ…マリーさん!」


  「こんなにも…モグモグ…美味しいと言うのに…何を躊躇っているのか…パクパク…マリーにはわかりませんね」


  びっくりした…。突然俺の目の前に現れるんだから…。心臓に悪い…。マリーさんはお肉だの野菜だのをたくさん皿に取り寄せて、もくもくと食べている…。女の子なのによく食べるなぁ…。意外な姿を見た気分…。


  「その…あまり食べたくないと言うか…」


  「やはりエルフの少女の手料理がいいと?」


  「!?…なんで…」


  「マリーには全てお見通しです。リア様のメイドですから」


  …すごいな…。 マリーさんはできる人だと思ってたけど…本当になんでもできそうだ…。リアの元で働いてきたんだし…当然かもね…。


 「わかってたんですか…」


  「はい。グリン様がここに来るまでの経緯も知っていましたし…。なにより…朝食をお届けした時の憤りには、エルフの少女を大切に思っている…そんな想いが伝わりました」


  「そういえば…そんなこともありましたね…」


  あの一瞬でここまでわかったなんて…。この人は口は悪いけど、意外と人の気持ちをわかってくれるのかもしれない…。せっかくだ…ここで溜まってた想いをぶちまけよう…。


  「その…女の子…ネアとは少ししか会ってないんですけど…色々お世話になったんです。食事から…寝る場所まで…。俺が露頭に迷うかもしれないから…」


  「そうですか…。それは大変でしたね…」


  「だから…俺も色々と恩返しがしたくて…。彼女の呪いを解いたりしたんです。なんでも足のところを魔獣に噛まれたとか…」


  「…魔獣に噛まれた…。珍しいですね…」


  「はい…」


  なんだろう…。マリーさんと話していると心のモヤモヤがなくなってきた…。今日はリアのことで色々疲れちゃったから、少しだけストレス抱えてたのかな…。


  「マリーもグリン様と似たような経験があるので、なんとなくわかるような気もします…」


  「えっ…マリーさんにもですか?」

 

  「…と言っても立場は逆なんですが…。私が幼い頃にリア様に助けていただいたことがありまして…」


  あの性悪のリアが…?全然想像できないな…。どんな人物だろうが傲岸不遜の態度で相対するし、必要とあれば恐ろしい事もしてしまうイメージなんだけど…。そんな俺の疑問を補足するかのように、マリーさんは微笑みながら言葉を紡いでいく。


  「…グリン様も誤解しているようですが、リア様は世間一般に知られているような冷血女ではありませんよ?」


  「えっ…?それってどういう…」


  「おそらく…表向きは多くの人々を処刑した…と言う風になっていますが…。実際は処刑などされておりません。あえて嘘の情報を広めているのです」


  …?処刑されていない?でも…ネアはめちゃくちゃ怖がっていたような…。そもそもそんな嘘の情報を流して、何かメリットでもあるんだろうか…?


  「その…なんでそんなことを…」


  「人々に認めてもらうには相応の経験が必要です。しかし今のリア様にはそれがありません。そこで表向きには独裁的政治を執り行うことで、無理矢理人々に恐怖を植え付けているのです。恐怖による圧政はリスクがありますが、王としての器を手っ取り早く伝えるには効果的ですから…」


  「そ…そうなんですね…。それじゃあ…処刑したって言うのは…」


  「リア様に対して反抗的な…もしくは反社会的な活動をする者を国外退去…と言う形で処分し、民衆には処刑したと伝えているだけです。今までに命そのものを奪い取るようなことはしておりません」


  …リアも意外と冷静な判断をしているというか…思い切ったことをしているというか…。でも、人の上に立つために四苦八苦していることを思うと、なんだか複雑な気分になってきたなぁ…。これはただ単に傍若無人なお姫様…というわけでもないみたいだ…。

  だからと言って、俺とネアを引き離したことについては許せないけど…。


  「そうなんですか…。リアの性格からして信じられないんですが…」


  「まぁ、その時の気分によって周囲に当たり散らしてしまうところもありますが、根っこは優しいですよ」


  うーん…。マリーさんの微笑みを見る感じ嘘は言ってないようだ…。なんだか変な気分…。






  「あぁ、そうでした。せっかくなのでもっと面白いリア様の情報をお教えしましょうか?」


  「…?面白いって…なんのことを…」


  な…なんかとんでもない話なんじゃ…。


  「実は…リア様はですね…」










  「グリン様に対して恋心を抱いているようなのです」


  えっ…ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

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