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62 取引の結末

 「…というわけじゃ。この男は妾を出し抜こうとしていたのよ…。まったく…バカなやつじゃ…」


 「きっ…貴様ぁ!熱光石の秘密を知っていれば…こんなこと…!」


 「それがお主の甘いところじゃな…。初めから慎重にしておれば良かったのにのぅ…」


 そう言うと、リアはまるで小馬鹿にしたようにクスクスと笑い始めた…。正直…仕掛けたのはリヴォルさんだけど、リアが悪者に見える…。なんか…変な心境だ…。

 それよりも、このまま取引は…いや…リヴォルさんはどうなるんだろう…。リアを殺そうとしたんだから、相当な罰を受けることになったら…。


 「さて…こうして真実も明かされたことだし…リヴォルには覚悟してもらうかのぅ…」


 「ぬぅぅ…!」


 「生半可な処罰を期待するなよ?妾は少し怒っておるからのぅ…」


 リアからの処罰…。なんか怖くなってきた…。ネアからはものすごく危険な人物…なんて教えてもらったから、そう思うだけなんだろうけど…。まさか…首を跳ねるなんて…


 「リヴォルよ…」


 そして…リアの口から語られた処罰の内容は…









 「これから先…お主の持っておる鉱山…及び熱光石の権利は妾との共同とする。他のものに売り渡すことも許さん。また…それによって得られた利益の八割は妾たちが貰う。…それでいいかのぅ…?」


 「…は?…それ…だけでいいのか…?」


 「なんじゃ?不服か?」


 「いや…その…ん…?」


 リヴォルさんはそう言うと、かなり複雑そうな表情を浮かべることになった…。喜んでいいのか…悲しむべきなのか…困っているようだ…。

 自己中心的な性格のリアにしては、意外と処罰は重くない…。俺もてっきり牢屋にぶちこんだりするんじゃないか…とヒヤヒヤしてたんだけど…。


 「もし…この先妾を嵌めようとするなら容赦はせんぞ?いいな?」


 「えっ…はっ…はい…」


 さっきまで怒りに身を任せて、怒鳴っていた姿から一転…すっかり落ち着いてしまったリヴォルさんがそこにいた…。これはこれで…いいのかな…?喧嘩にならずにすんだし…。


 「さて…リヴォルよ…。先程までの内容含め…取引の締めといこうかの…早く妾を案内せい…」


 「はっ…はい…」


 こうして…一触即発の展開から事件は解決し、取引も順調に進められることになった…。俺としては意外なリアの姿を見た気がするけど…。…まぁ…良かった…かな…?







 「…リア様…ところであの…」


 「なんじゃ?…グリンも食べんのか?」


 「えっと…その…」


 あの取引のあと…俺たちは次の予定でもある『会食』を行ってるわけだけど…。なんかこう…色々と予想とは違うような…。

 偉い人たちとの『会食』だから、一つのテーブルで色々と話をしながらもくもくと食べるのかと思ったら…そんな感じでもない…。

 すごい大豪邸の大広間で皆自由に席で食べている…。バイキングみたいにいろんな食べ物をとって食べていくみたいな感じだ…。リアに媚びへつらうような人もいない…。

 しかも、どうやら使用人たちも食事OKなようで…。マリーさんも、さっきからいろんな物を取りながら食べている…。


 「えっと…この『会食』の目的って…」


 「ほぅ…。気になるのか?」


 「はい…。みんな自由で…ただ食べているようにしか見えないんですけど…」


 「そうじゃな…。お主にはそう見えるじゃろう…」


 リアは納得しているような表情で頷く…。…俺にはいまいちわかんないんだけど…。何が狙いなのか…。


 …と思ったら…

 

 「おぉ…君はあのときの…!儂を覚えておるかね?」


 「あら!久しぶりねぇ…。どう?あれから王女様のところで働いてるそうだけど…」



 ゾロゾロゾロ…



 なんか…おじいさんとおばさんが俺のそばまでやって来たぞ…。俺のことを知ってるみたいだけど…って…


 「もしかして…レストランの時の…?」


 「おぉ…思い出してくれたようじゃな!良かった良かった…!」


 「私のことも覚えるみたいね!良かったわぁ!」


 そう…。俺とネアがレストランでチンピラに遭遇して…そのあと撃退した時にスカウトに来たんだっけ…。なんでも魔法使いであることに注目したとかなんとか…。

 結局あれからリアに無理矢理連れていかれたから、スカウトはなかったことになったけど…。まさか二人がこの『会食』にいたなんて…。ちょっと驚き…。


 「あっ…その…お久しぶりです…」


 「ホッホッホッ…。まぁあれから色々とあったじゃろうが…これからもこの縁を大事にしていきたいのぅ…」


 「そうねぇ…私も何か協力できることがあったらなんでもするから…たまにはこっちにも来てよ!ねっ!」


 うーん…こうズイズイと押してくるスタイル…。俺のことをまだ諦めていない感じだなぁ…。こっちとしてはあんまり関わりは持ちたくないんだけど…。


 「ふむ…なにやら騒がしいのぅ…。お前たち…」


 そんなことをしていると、側にいたリアが話に混ざってきた…。相手が王女様だと気がついたおじいさんとおばさんは…


 「…!こっ…これはご無礼を…!失礼いたしました!」

 「そっ…その…!まさかお嬢様とは気づかず…申し訳ありません!」


 二人揃って頭を下げることに…。俺のことに夢中だったみたいだ…。それにしても…リアの影響力って…スゴいものなんだな…。改めて驚いちゃう…。

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