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61 取引の裏には…

 「なっ…何を…。爆弾…などと…変なこと言わないでください!」


 リヴォルさんは何を言っているのかわからない…というような困惑と憤りの混ざった表情で反論している…。ヤバい…これ以上怒らせたら…。

 正直俺にも何が何やら…。爆弾を知らせたのは俺だけど、どうしてリアはリヴォルさんを疑うんだ…。これからの大事な取引…リアたちを殺そうなんてしないはずなんだけど…。


 「ほぅ…あくまでも無実であると?」


 「無実もなにもないでしょう!とんでもない侮辱です!遅れただけならまだしも…この私を…王女としての自覚はあるのですか!?」


 「妾に王女としての自覚などあるわけなかろう…」


 「このっ…!」


 うっ…。下手したら喧嘩沙汰になりそうだ…。なんでリアはここまでして疑うんだか…。なにか考えがあるとか言ってたけど…それと関係があるんだろうか…。

 待てよ…まさか…無理矢理、冤罪を擦り付けているなんてことは…。リヴォルさんは無実だけど、爆弾の件を利用して遅れたことを誤魔化そうとしているのかも…。あり得る…あの性悪のリアなら…もしかして…。

 そうだとしたら…止めないと!


 「リア様!それ以上はやめましょう!こちらが遅れたのは事実なんですから…謝らないと!」


 リアに対する礼儀も無視して…俺は後先考えず主に刃向かった…。もしかしたら首を跳ねられるかもしれない…。でも…そんなのは関係ない!


 「…グリン…少し黙れ…」


 「黙りません!こんな…ふざけたことしないでください!王女なら…しっかり非を認めるくらいしたらどうなんですか!」


 「…」


 「だいたい…あなたは無茶苦茶です!こんなときにバカみたいなこと…許されると思うんですか!」


 「…」


 リアは俺の話に耳を傾けながら、じっと見ている…。何を考えているのかはわかんないけど…すぐ暴力に走らないことを考えると、説得はうまく言っているのかな…。

 そんな俺の言葉を後押しするように…リヴォルさんも口を開く…。


 「まったく…その執事の言う通りです!訳のわからないことを…。誰が爆弾を大量に設置したか知りませんが…私を疑うのはやめていただきたい!そして…今すぐに謝っていただけますか!」


 屋敷内に響き渡るリヴォルさんの声…。とりあえず…ここは謝るのが一番…。リアもここまで言われたら素直になってくれるはず…。


 「ふむ…なるほどな…。お前たちの意見も面白い…。妾も調子に乗ったところはあるな…そこは詫びよう…。ところで…」













 「『大量の爆弾が設置されている』ことをなぜリヴォルは知っておるのじゃ?」


 「…は?」


 「妾は爆弾の存在を伝えてはおったが…それがどれ程あるのか…は言っておらんのだがのぅ…」


 …そう言えば…。俺も神様の力で爆弾のことは知ってたけど…どれぐらいあるかはわかんなかった…。リアにはただ、爆弾があることしか伝えていない…。リアも爆弾の数までは口では言ってなかった…。もしかして…


 「リヴォルよ…少し口が軽かったようじゃのぅ…」


 「そっ…そんなもの!!私の早とちりで…!」


 「それだけではないぞ?爆弾にも数多くの種類があるなかで…お前は『設置式の爆弾』とも言っておったな…。それは実際に爆弾を仕掛けたもの…もしくは指示した者でないとわからんこと…。これでもまだ誤魔化すか?」


 「ぐっ…ぐぅぅぅぅ!!」


 なんてこった…。まさか…リヴォルさんが俺たちを爆弾で…。リアの考えってのはこの事か…。でも…


 「えっと…でも…それだと動機がないです!リヴォルさんが俺たちを殺そうとするなんて…。今回の取引はお互いに同意のはずじゃ…」


「同意のぅ…」


 俺の疑問に対して、リアは複雑な表情を浮かべながら、リヴォルさんへと目を向ける…。まるで…すべての原因はリヴォルにある…と言いたげなようだ…。そのリヴォルさんはというと…


 「ぬぅぅ…!」


 顔を真っ赤にしながら口を閉じている…。リアにしてやられたのが相当効いたようだ…。


 「…やれやれ…それなら説明してやるかのぅ…マリー…頼むぞ」


 「はい…」



 スッ…



 そう言いながら…後ろで控えていたマリーさんが俺たちの元に来ると、すらすらと言葉を並べ立てていく…。


 「今回の取引はパルヴォルーナ家の持つ鉱山資源…熱光石(ねっこうせき)をリア様が大量に購入する…といった内容でした…」


 「熱光石…」


 「はい…。採石してから数分の間…熱を持つ鉱石です。当初は加工が難しく、市場価値もそこまで高くなかったため、無用の鉱物として有名でした…」


 無用…か…。そんなに冷遇された鉱物…なんでリアが欲しかったんだろう…。


 「じゃあ…なんでリアは…」


 「リア様は秘密裏に熱光石の加工方法や成分を調査させ、さらに研究してきました…。その結果…非常に興味深い内容がわかったのでございます…」


 「興味深い…?」


 「熱光石は太陽の光を当てることにより、持つだけで体を温める保温石としての利用ができるのです」


 「保温石…?」


 「実際にこちらを触ってみてください」


 

 スッ…



 マリーさんはポケットの中から、ちっこい石ころのようなものを渡してきた…。これが…熱光石…なのかな?とりあえず…どんなものか手に取ってみよう…。



 …スッ…ギュッ…



 「…って…えっ!?これって…!」


 「わかりますか?グリン様…」


 「はっ…はい!なんか…こう…手に取った瞬間体全体が一気に暖まったような…」


 「それこそが熱光石の持つ力なのです。どれほど寒い場所でも…これ一つで寒さをしのげるのでございます」


 なるほど…。てっきりカイロみたいなものだと思ったけど…まるで全身が日向ぼっこしてるみたいな気分だ…。魔法を使えない人からしたら嬉しいかも…。


 「一時間ほど太陽の光を当てることで、一ヶ月ほど効力を発揮します。さらに、大きな衝撃を受けても壊れない…という利点もあるのです」


 「スゴい…!そんなことが…!」


 もしそうだとしたら、その石一つで半永久的に体を温めることができる…。どれだけ外で過ごしても寒くない…。これを売ったりしたら…莫大なお金を手にできるかも…。


 「リア様はこの事実を伏せた上でリヴォル様から安価で手にしようとしていたのです。契約書にもすでにサインをし、あとは今回の話し合いで取引成立…となるところでした…」


 「だから…なんですね…。リヴォルさんが爆弾を仕掛けたのは…」


 「はい…。おそらく、リヴォル様は熱光石の秘密を知り…なんとしても独占したかったのでしょう…。私たちを罠にハメて…爆発が起きようと起きまいと、今回の取引をなかったことにしたかったのだと思われます…」


 何て卑怯な…。リアもひどいけど…リヴォルさんもひどすぎる…。今回の取引…こんな裏があったなんて…!

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