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59 初めての仕事へ

読みやすいように改行をつけました。

 そんなこんなで…無事に服の準備を済ませた俺は、ソワソワしながらリアを待っていた…。さっきまでの話が頭の中を駆け巡って全然落ち着けない…。

 このままだとネアに会うことさえできないのに…。なにか…いい考えがあれば…。


 「…グリン様…何を期待しているのですか?」


 「なっ…!期待って…そんなわけないでしょう!」


 「そうですか…。盛りっぱなしの男は夜の情事に期待するものだと思いましたが…」


 「…っ!そんなこと…考えません!」


 マリーさん…予想以上にひどい人だ…。さっきから俺のことを馬鹿にしているような…。

 こんな人と一緒に働くことを想像すると…なんか心配になってきた…。


 「リア様はこの頃お忙しい身ですので…負担をかけるようなことはしないでください…。それと…一応グリン様は大事な種馬候補…ということで敬語で話してはいますが、立場では私の方が上…ということも頭に入れてください」


 「…わかりました…」


 「あまりにも仕事が疎かであれば厳しく接しますので…覚悟してください」


 覚悟…。

 ネアのためならいくらでもできるけど…離ればなれになった今は自信がない…。こんなんじゃ…



 ガチャッ…!



 「…ふむ…一応着替えは済んでおるようじゃな…グリンとやら…」


 突然…扉が開き、入ってきたのは深紅のドレスに身を包んだリア…。その表情は気だるそうなもの…。失礼な言葉をかければすぐにへそを曲げるかも…。


 「おはようございます…リア様…。今回はわざわざお向かいいただきありがとうございます…」



 マリーさんはその場で頭を下げながら主に挨拶をする…。とりあえず…俺も頭を下げておこう…。



 ペコッ…



 「…なんじゃ…妾に反抗するかと思ったが…意外と素直じゃのう…。ここから逃げることを諦めたのか?」


 リアのやつ…俺のことをおちょくってる…。逃げられない理由を知ってるくせに…。

 …とはいえ…機嫌を損ねる訳にはいかないから何も言わないけど…。


 「リア様…それでは本日のご予定をお伝えします…。午前中はパルヴォルーナ家の面々と鉱山資源の取引が…。午後からはリルル家…メルモラーヌ家を含めた五組の公家の者たちと会食がございます…」


 「ふむ…意外と予定が詰まっておるの…。最近は特にな…」


 「お手を煩わせてしまい申し訳ありません…」


 「よい…気にするな…」


 リアとマリーさんによる今日の予定合わせ…。レストランでの黒服とのやりとりとは違い、二人の間にはそれほどギクシャクした雰囲気はない…。まるで信頼しあった友人のようで…。リアの意外な面を見たような気分だ…。


 「…さて…時間はまだあるな…。グリン…」


 「うっ…はっ…はい!」


 「これからこの部屋にある服を何着か選ぶからの…。お前はそれを鞄にでも詰めてもらおう…。変に傷つけることは許さんぞ?」


 「えっ…はっ…はぁ…」


 返事をした瞬間…


 

 ドスッ…!



 「うげっ…!?…うぐっ…」


 うっ…突然リアに腹を蹴られた…。やっぱり…容赦ない…。


 「困るのぉ…そのようなふ抜けた声を出すとは…。しっかりと返事をすることじゃな…。妾の前でそのような態度…万死に値するぞ?」


 「はっ…うぐっ…は…ぃ…」


 痛みに悶えながらも必死に応える…。そんな俺の姿にリアは侮蔑の表情を向けると、何事もなかったかのように颯爽とその場から離れ、衣服選びへと移った…。


 …くっ…こうなったら…何がなんでもしがみついてやる!ネアと再会できる日まで…しっかりと生き抜いてやる!





 「…遅いのぉ…。これから大事な取引があるというのに…。モタモタするでないぞ?」


 「…グリン様…。こんなところで足を引っ張らないでください。迷惑です」


 「くっ…!」


 あれから…支度準備を整えた俺たちは、数名の黒服達と一緒に鉱山資源の取引のため歩いて向かってたんだけど…。

 予想以上に服の量がヤバイ…。なんでこんなにたくさんの服を鞄に詰める必要があるんだか…。予定は多いとはいえ、服なんて一着あったらいいんじゃないの?


 本当にこの世界のことはよくわかんないよ…。


 リアとマリーさんはこの世界にしか存在しないとされる生き物…『リューゴル』…と呼ばれる小型ドラゴンに乗りながら向かっている…。

 見た感じ…すごく獰猛そうに見えるけど、リアに対しては反抗的な態度を見せない…。いいなぁ…俺も乗りたい…。


 「…グリン様…そのような嫌らしい目で見つめないでください。変態です」


 「そっ…そんなことしてないから!」


 「そうでしょうか…。私やリア様の裸体を想像していたのでは…」


 「だから!そんなことしないって!」


 マリーさんは俺のことを罵倒するばかり…。メイドにしては…かなりの上から目線…。この人…何者なんだろう…。


 緋髪を短く切った姿からは、どこかの漫画に出そうなキャラクターっぽいなぁ…。

 …というか赤い髪の毛なんて初めて見た気が…。顔や体型も整っているし、見た感じは美人…。年齢は…そんなに年をとっていないようにも思える…。


 うーん…ますます謎が深まるばかりだ…。まぁ…それは後回しにするか…。それよりも気になることが…


 「…それにしても…大丈夫…ですか?…こんなに…たくさんの人で集まってたら…奇襲かけられるような…」


 俺は鞄の重さに耐えながらマリーさんへと尋ねてみることに…。

 確かリアは身の危険を感じるときがあるとかなんとか言ってたよな…。こんなの…狙ってくださいと言ってるようなもんだけど…。


 「はぁ…変態ですね…」


 「なっ…!!何が!」


 「さっきから気がついてないようなので教えますが…我が一団は特別な魔法により、姿形が見えないようになっております。わざわざ狙われるようなこともないでしょう…」


 そっ…そんなものを…いつのまに…!


 「また、周りには睡眠作用の霧を撒き散らしておりますので、近づくものもいないと思います…」


 「えっ…それだとここに近づく人に迷惑かけるんじゃ…」


 「リア様の命に関わりますので…致し方ないでしょう…」


 いや…なんか…無茶苦茶なことしてるような…。…やっぱりお金持ちはやることが大胆だ…。

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