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58 王女様の企み

さて…これからどうするか…。

自分が神様だってことはわかったけど…現状はなにも変わらない…。

ネアと合流したい気持ちはあるのに…。


いや…もしかしたら!


「…試してみるか…」


『…?試すって?』


「あっ!…えっと…その…ネアとテレパシーみたいなので連絡とれるかなって…。できれば無事かどうか知りたいんです…。神様ならできますよね?」


『ふーん…やってみれば?できないことはないはずだけど…』


よし!

とりあえず…精神を集中して…目を閉じて…イメージして…。


「…んん…」


そんなことをして数分たつと…



『…っ…!!…!…』



…なんだろう…声が聞こえるような聞こえないような…。

すごく小さい声だからわかんないけど…上手くいきそうだ…。


でも…これがネアの声かどうかは…。

とりあえずもう少し力を使って…



『…そっ…!…でもっ…!』



う…ん…。

なんとか聞こえてきたぞ…。

この声は…ネア…のような気もする…。

テレパシーは成功しそう…。


あとはこっちから声をかけることができればいいんだけど…。


「…ネア!聞こえる?俺!グリンだよ!」


とは言ってみたけど…


『…まっ…待って!…そっ…!…!?…!』


ダメだ…向こうもこっちの声が聞こえていないのか反応がない…。

意志疎通は難しそうだ…。


せめて向こうの状況がわかれば…。


『…その様子…上手くいってないようね?』


「…にゃんこさん…この力を使いこなすにはどうしたら…」


『さぁね…。時間をかけるしかなんじゃないの?』


…やっぱりそうなるのかなぁ…。

いくら神様とはいえ…生まれたてみたいなものだし…。

とりあえず下手な動きをすることなく…じっとするのが一番かな…。


『さってと…アタシも忙しいからね…。とりあえず今日はこのまま退散するわね』


「えっ!…でも…」


『悪いけど…アタシもお人好しじゃないから…。あんたを助けるとかいちいち考えらんないのよ!』


「うっ…」


…薄情なにゃんこさんだ…。

こんなにも困ってるのに…。


『…それじゃまたね!まぁ…そのうち顔出すときもあるかもだけど…』


「ちょっ…ちょっと待ってくださ…」



フッ…



にゃんこさんは俺の言葉を聞くことなく…そこから姿を消してしまった…。

…まだ聞きたいことはたくさんあったのに…。


結局は自分の力で何とかしないといけないか…。


…まずは神様としての力を自由に扱えるように訓練しよう…。

そうでもしないとなにもできないし…。

でも…何をすればいいんだろ…。


…なんて思っていると



ガチャッ…



「失礼します…グリン様…。お嬢様から至急向かうようにとのことです。すぐに準備をしてください」


さっきのメイドさんが入ってきて用件を伝えてきた…。

部屋を出てからあまり時間はたってないような…。

いくらなんでも急すぎる…

けど…


「…わかりました…すぐ行きます」


とりあえず…メイドさんの指示に従うことにしよう…。

下手に心証を悪くしたら何をされるか…。


大丈夫…今すぐ殺される…なんてことはないはず…。

ここから出ることは…あとで考えよう…。





「えーと…その…これは…」


「…ただの採寸ですが…」


「いえ…そうではなく…」


「これからお嬢様の元で働くことになるので…こうしてグリン様の衣服を用意しているのですが…?」


「えと…はぁ…」


…なんか…緊急事態でも起きたのかと思ったら…なぜか体を測られることに…。

リアの元で強制労働でもされると覚悟してた身としては…ちょっと拍子抜けした…。


たくさんの衣装が並べられている…衣装部屋のような所か…。

色とりどりの衣服があるからいつもここで着替えとか行われているんだろうな…。


「えと…リアは…」


「ここではリア様とおっしゃってください…」


「あっ…えっと…リア…様は…」


「お嬢様も別室で着替えの最中でございます。いずれこちらに向かわれると思いますが…」


…リアも来るのか…。

いや…当然のことだろうけど…怖いな…。


それにしても…俺の立場が未だにはっきりしない…。

リアの元で働くことになるにしても…メイドさんからは『グリン様』なんて言われるし…。


ちょっと聞いてみよう…。


「あの…えと…」


「マリーです。」


「あっ…マリーさんは…俺…僕がどういう立場なのかは…ご存じなんですか?」


「…お嬢様の元で働くことになる新人執事…そして種馬だと聞いておりますが?」


…はい?

なんかよくわかんないこと言われた気がするんだけど…。


「すいません…もう一度言ってもらえますか?」


「新人執事兼種馬候補としてこのお屋敷で働くことになった…と聞いたのですが?」


…えっ…ちょっと待って…。

新人執事…はまぁいいとして…種馬候補?

嘘…だよね?


「えっと…種馬候補はないと思うんですが…」


「なんでも粋のいい男がいたから将来の種馬にする…とお嬢様はおっしゃってましたよ?」


「いやいやいやいや!!なんで俺みたいなやつを…!」


「知りません。お嬢様に聞いてください」


マリーは心底うんざりしたような表情で答えている…。

確かに…将来の種馬候補が仕事場に来るなんておかしな話だ…。


…って!

そんなこと言ってる場合じゃない!

まさか…あのリアが…そんなことを企んでいたなんて…。

これは早急に対処しないと!


「マッ…マリーさん!リア様は…今どこに!早く説明してもらわないと…!」


「落ち着いてください。いくらなんでも盛りすぎですよ…」


「盛りすぎって…!そんなわけ…」


「とりあえず…このあとお嬢様と今日の予定を確認するため集まることになっておりますので…とにかく冷静になってください…」


…くっ!

なんとしても…今回の件をしっかり聞いておかないと!

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