57 衝撃の事実!
ガチャッ…キィィィ…
「…失礼しますグリン様…。お食事を用意いたしました…」
「…」
夜が明けて…結局ぐっすりとは眠れなかった…。
あんなことがあったからしょうがないけど…。
朝食はパンやスープ…ちょっとしたデザートみたいなものが用意されたみたい…。
たぶん…すごく美味しいんだろうけど食べる気には…。
「どうされましたか?気分が優れないようでしたら…」
「いえ…大丈夫です…」
心配してくれるのはありがたいけど…メイドさんの事務的な言い方はやっぱり苦手…。
部屋も食べ物もスゴいけど…ネアの家の方がよっぽど居心地がいい…。
「失礼いたしました…。それでは…」
サッ…ガチャッ…バタン!
…結局…朝は一人か…。
リアのやつ…俺をこき使うとか言ってたけど何をするのか…。
丁重に扱ってるから殺されはしないだろうけど…。
「…逃げれるチャンスを待つしか…」
…そう呟いたとき…
『ふーん…逃げるねぇ…。はっきりいって…やめた方がいいと思うけどねぇ…』
…!?
なっ…なんだ!
なんで…声が…!
俺以外誰もいないはずなのに…。
一瞬驚いてしまった俺は…反射的に声の主を問い詰める…。
「…!?だっ…誰だ!姿を見せろ!」
この声…不思議な力を使ったときに聞こえるものじゃない…。
女の子の…それも少し幼いような…。
まさか…リアの部下が…。
『…最初に言っとくけど…アタシは別に王女様の部下でもなんでもないから。まぁ…あんたと近しいもの…ではあるけど…』
「…!…いったい何を言ってるんだ!?」
『はいはい…そんなに気になるなら…っと…』
瞬間…
フッ…ポサッ
「なっ…!?」
突然…ベッドの上に黒い生き物が…。
いや…こいつ…まさか…!
『…久しぶりになるね…。アタシのことは覚えてるかい?』
「あんたは…!」
そう…俺がこの世界に来る以前…。
現実世界で助けた…あのにゃんこだった…。
黄色の瞳…綺麗な毛並み…。
間違いない…。
こんなところで再会するなんて…。
「なっ…なんでこの世界に…!しかも…なんでしゃべることが…!」
『あー…これ説明するのめんどくさいんだけどね…。ざっくり説明すると…』
にゃんこは心底疲れたような仕草をしながら…とんでもないことを口にした…。
『アタシね…神様なのよ』
―
…
「神…様…」
『そっ…。とはいっても『元』神様になるけどねー…』
スゴい展開だ…。
俺が助けたにゃんこが…実は神様だとか…わけわかんない…。
「神様って…なんで神様が猫なんかに…」
『別にいいでしょ?猫の姿の方が動きやすいし…』
「…変身…できるんだ…」
『まっ…神様だったしね?』
にゃんこは別に慌てることもなく、自らの手をペロペロ舐めている…。
その飄々とした態度からは本当に神様なんじゃないか…と思ってしまうほど…。
でも…
「…それじゃあ…前の世界で車に轢かれそうになったのは?」
『む?変なこと言うのね…。あれは轢かれそうになったんじゃないの!その辺散歩してたら車がやって来たのっ!』
そう言うの…轢かれそうって言うんじゃ…。
…まぁいいや…。
「それで?散歩してた神様が…なんでここに?」
『んまぁ…ちょっとね…。アタシの指名した『今の神様』がどうしてるかなぁ…って思って…』
「へ…?『今の神様』?」
『あれ?まだわかんないの?』
『あんたもね…神様なのよ』
…え?
「ちょっ…その…えっ!?」
『いやぁ…参ってたのよ…。アタシも次期神様候補を探してたのねぇ…。そんで…あんた…アタシのために死んじゃったでしょ?』
「そっ…そうたけど…」
『これはちょうどいいから…あんたを次期神様にして…この世界に転生させたってわけ!わかった?』
はっ?えっ!?
それって…転生した全ての元凶はこのにゃんこの仕業で…。
俺は今…神様なの!?
「そんなの!いくらなんでも…」
『んでも…この神様の力で色々助かったでしょ?』
「うっ…はい…」
はぁ…そういうことか…。
確かにこの力でネアを助けることができたし…そこは良かったのかな…。
でも…神様だなんて…。
予想の斜め上を行く展開だ…。
『神様になったら変な声が聞こえるだろうけど…気にしなくていいから。別に危害を加えるようなものじゃないし…』
「…まぁ…そこはわかるんですけど…」
『あっ…それと!あんたは神様になって日が浅いから…上手くコントロールするのに時間がかかるかも…』
「えっ!そっ…そうなんですか…」
なるほど…。
だからか…。
全然力が使えないときがあったから気になってた…。
そうなると…気になることが…
「あの…神様の力って…どんなこともできるんですか?」
『まぁ…神様だからねぇ…。アタシはいつも小さいことにしか使ってこなかったからよくわかんないけど…。たぶん世界征服もできるんじゃないの?』
「!…そっ…それはちょっと…でも…スゴいな…」
世界征服…。
そこまでスケールが大きくなったら生活するのも大変そうだ…。
そんなことしないけど…。
―
…
「…ところであなたの名前って…」
『名前なんてないわよ。にゃーこでもにゃんこでもいいんじゃないの?』
…意外とこのにゃんこ…大事なことにはあっさりしてる…。
名前がないと色々不便じゃ…神様だから関係ないのかな…。
「えっと…にゃんこ…さんはどうして次期神様候補なんか探してたんですか?」
『にゃんこさんって…んまぁいいけど…。理由は…まぁ…疲れたから』
「…へ?」
『神様って意外と疲れるのよ…。なんか自由になりたいなぁ…なんて』
…ホントに元神様なんだろうか…。
ものすごく適当な感じがする…。
まぁ…あまり気にしない方がいいかな…。
…待てよ…今までの話が本当なら…
「今思ったんですけど…俺が神様になってるってことは…ここから出ることもできるんですよね?」
『…できないこともないけど…気を付けた方がよくない?』
「えっ?」
『君がここから出た瞬間…あのエルフの女の子が危険な目に合うんじゃないの?』
あっ…そっか…。
忘れてた…。
確かにあの王女様ならネアを人質にしてやりそうだ…。
なんとかして平和的な解決に期待するしかないか…。
とりあえず…今は動くべきじゃないかな…。




