琴美 〜タンスの中編〜
この話はシリーズなのでよかったら一話からどぞ。
短編なのでなにとぞなにとぞ。
「ほら、いこっ」
学校が終わってすぐ、琴美に声をかけられた。
「どこに?」 私はあかりに聞き返した。
と、同時に琴美の右に行こうとフェイントをかけ、反対の左側を通って逃げようとした。
この間4秒。
私にクォーターバックの才能はないらしい。
普通に腕を掴まれた。
「逃げようとしたな、この罪は重い」
琴美の家についた。
話を聞くと、どうやら琴美の部屋のタンスがおかしいらしい。
また嫌な予感しかしない。
だが帰れない。先ほど掴まれた腕に、得体の知れないブレスレットをつけられたからだ。
普通ならそんなもの外せばいいのだが、琴美関連だとそうはいかない。
「無理に外せばあかりの家は、王様のブランチの収録スタジオになる」と琴美は言った。
そんなことになったら、大変だ。
大事な土曜日の大半がつぶされてしまう。
私はしぶしぶ了承した。
「じゃあ、あかりはそのタンスを開けてみて」
琴美は部屋のドア付近で私に言った。
タンスは部屋の奥にある、おそらくすぐ逃げれるようにだろう。
こしゃくなやつめ。
「ちょっと待って。先に何があるか教えてよ!」
「だーめ。お楽しみじゃない。先に言ったら面白くないでしょ?」
これ以上抗議してもだめだ。奴は、心を悪魔に売った人間だ。
「まだ売ってないけど?」
琴美が反論してきた。なぜ普通に心の声に返答してくるのか。
それに「まだ」とは。予定があるのか。
仕方なく私はタンスの取っ手を持った。
観音開きタイプのやつだ。嫌だな。一番何かが飛び出し安いやつだ。
そして私はタンスの扉を開けた。
中には、
人がいた。
こいつ、とうとうやったな。いや、いつかはやると思っていたんですよね。やっぱりあの子変わってる所があって、私もおかしいなって、、、
「よく見て」
いつの間にか琴美が私の隣まで来ていた。
「寝てるの、ずっと」
よかった。死体じゃないらしい。
「いや、寝てるってこの人どうしたの?なんで琴美んちのタンスにいるの?」
「知らないわ、昨日帰ってきたら突然いたの」
琴美は困った顔をしながら、そのタンス人をツンツンしている。
とりあえずわたし達はその人をタンス人と呼ぶことにした。
「でもどうすんのよ、警察呼ぶの?」
私は琴美に聞いた。
「呼ばないわよ、タンス人よりも見られたらヤバイものがたくさんあるんだもの」
「そのまま掴まれ」私はとりあえずタンスを閉じた。
瞬間突然タンス人が動き出した。
「わっ」と琴美
「ぎゃっ」と私
どうしてかわいい悲鳴が出せないのか。
そのタンス人は私の腕を掴んだ。そして
「隣の女はあ、、」
と何か言おうとしたが、琴美が思い切りドアを閉じた。
「ねえ、今なんか言おうとしてたよ」
私は琴美を見た。
琴美は言った。
「なにもなぁいよ?」
その時の琴美の顔はすごくきれいでムカついたのを覚えている。
容姿端麗は敵だ。
「あっそ」
私は答えた。
「気にならないの?」と琴美が聞き返してきた。
「別に、琴美元から怪しいし、慣れたよ」
「あかりぃ〜大好き〜っ」と琴美が抱きつこうとしてきたので、私は手で制した。
「やめんかい」
その時私のケータイが鳴った。母からだ。
「もしもし?どしたん?」
私の質問に母は今まで聞いたことないようなテンションで答えた。
「谷原っ、谷原章介さんがっ、LiLiCoが家にいる!」
私は琴美を制した手を見た。
ブレスレットが外れていた。