エピローグ 彼女の名前
とりあえず一区切り。ここまで読んでくれた方が居るのか分かりませんが。ありがとうございます。
「ウィース店長お疲れ様です」
「あ、的場君。お疲れ、あ、君だけシフト出して無いから早く出してね」
「すんませ~ん」
コンビニの夜勤を終え、俺は店頭で伸びをした。仕事終わりの朝日が身体にはキツイ。
「帰りますか~」
俺はコンビニで勝った缶コーヒを飲むと歩き出した。するとその前に、帽子を目深に被った。女性が現れる。
「ふふふ、帰りたければ私を倒して行きなさい」
「………………何してるんだ? リサ?」
俺はぼ~とした顔で現れた女性、リサを見る。しかし、こいつ滋賀に住んでるのにどうしてここに居るんだろう。
「ふふ、びっくりした? 遊びに来ちゃった」
「電話くらいしろよ」
「う~んサプライズ? 嬉しかったでしょ?」
「……まあ」
聞くと飯をまだ食べて無いみたいだったので、適当に近くの喫茶店に入る。リサは甘い物が好きなのかケーキを頼んでいた。
「あれから紗月ちゃんとも仲良くなったんだよ~毎日メールをする仲だよ」
「そっか、あいつ人見知り激しいのに凄いな」
大会が終わってから一ヶ月。紗月と松葉さんにはちょくちょく会って居る。最近ではゲーセンだけじゃなくて、動物園や映画にも行った。
「私も行きたかったな~動物園」
「まあ、仕方無いだろう。リサは滋賀に住んでるんだから」
俺がそう言うとリサは不機嫌そうに頬を膨らます。
「でも~ずるいじゃん! 三人で遊んで! 私も一緒に遊びたいのに!」
そこまで言うとリサは何かを思いついた様に手を叩く。
「そうだ! 的場君! 今からデートしようよ!」
「デート?」
「うん。動物園行って、映画館に行って、それから食事して……ね? 良いでしょ?」
エサを期待する犬の様な顔をされて断れるわけも無く俺は頷く。
「やった~! じゃあ行こうよ!」
リサは俺の手を引いて歩き出す。握ったリサの手は小さく柔らかった――。
「わぁ! 見て見てあの鳥! 私が見たら。羽を広げた!」
「ああ、凄いな」
リサはどの動物を見てもまるで初めて見るように喜んでいた。そんな姿を見ていると、何時から俺は動物を見て興奮しなくなったのだろうとか、変な事を考えてしまう。
だから自然と俺は動物よりもリサを見ている時間が多くなっていた。
「ねえ……ちゃんと見てる?」
そんな様子をリサにも察せられたのか、首を傾げてリサが尋ねて来た。
「あ、ああ……いや……ごめん」
「もう! 失礼だよ! 女の子と一緒に居るのに、ぼ~とするなんて!」
リサは怒った様に俺の肩を叩いた。しかし、直ぐに心配そうに俺を見る。
「もしかしてバイトで疲れてた?」
ああ、心配させてしまった。マズイな……。
「いや……リサの事を見てた」
本当にこの子と出会ってから俺の生活は……いや、生活は少なくともあんまり変わって無いか……だけど、確実に色付いた様な気がする。
「え……」
リサの頬が赤く染まる。確かに誤解を招く言い方だったかも知れない。
いや、誤解じゃないか……。
「リサ。そう言えば渡したい物が有ったんだ」
俺は内胸のポケットからスリーブに入ったカードを取り出す。
「これ、返すよ」
それは妖精姫リーザのカード。
「それずっと持ってたの?」
「あ、ああ……何か御守みたいな感じで、何時も持ち歩いてた」
「ふふ、変なの」
「まあいいじゃねえか……それより、全国一になったカードだぜ。このカードのおかげで俺達は全国一になれたんだから」
俺がカードを差し出すと、リサは大事そうにそれを受け取った。
「良いの? 別に持っていても良かったのに」
「いや、あの日はあれから色んな人に囲まれて忘れちまったけど、そのリサに持っていて欲しいんだ」
「相変わらずちょっと抜けてるね……」
リサは小さくありがとうと言った。
「あ~それで、どう?」
あの日、何かを言ってくれと頼んだ。俺がその事を言っているのだとリサは理解した様だった。
「言っても良いの? 女の私から」
「あ……う、う~んちょっと待ってくれ」
それは多分、結構な確率で俺に取ってのいい返事なのだろう。ならば、ここは俺から言うのが礼儀という物だろうか。
「その……リサ。俺と……」
「ちょっと待って」
「え! 何だよちょっと!」
俺は告白しようとする出鼻をくじかれて泣きそうな顔をしてしまった。折角勇気を出したのに!
「その……どうせ言うなら私の本当の名前で言って欲しいな……」
「本当の名前……」
そう言えば、今までリサと言い続けてたので違和感が無くなっていた。当然彼女にも名前は有るのだ。
「ちなみに紗月ちゃんと松葉さんはもう知ってます」
「何それ!」
あいつら俺と居る時はリサって言っていた。気を遣っていたのか? いや、あいつらの事だから面白がっていただけかも知れない。
「オホン……良い? 的場君。例え普通の名前でも、がっかりしないように」
「しねえよ」
「ふふ……私の名前は――――」
リサの名前は綺麗な響きだった。俺は彼女の名前を呼んで、そして告白した――。




