第七章 執念 5
『さ~て、デッキのセットが終わったようです。それでは見ていきましょう!』
滑らかな司会の声、しかし、お互いのデッキを見て、司会の声が詰まる。
『こ、これは……双方! 今まで使っていたデッキじゃない!』
『決勝で、変えて来ましたね……』
リサも驚いたような声をしている。確かに普通大会では使い慣れたデッキを使うのがセオリーだ。
『しかも両デッキとも私が見た事も無いデッキです』
『確かに……一つずつ見ていきましょう。まずは神代チーム』
神代……機神マキナ、古代のアーティファクト、機塔バベル
凛堂……魔界汽車ドーン、無限絡繰オニキス、楽園の風見鶏
す~たん……錆のゴーレム、悪夢の国、ブリキの兵士、朽ちた愛玩道具
『これは……機械系デッキでしょうか? しかし、サポートが多すぎる気が』
『ええ、分類するなら、機神マキナ、錆のゴーレム、ブリキの兵士、朽ちた愛玩道具以外は全部サポート要因ですね。極端な事を言うとディフェンダーが居ない』
『神代名人は今までどちらかと言うとディフェンダーを多用して相手を封殺して勝つという印象が有ったんですが』
『ええ、でもアタッカー単体デッキの様に力押しでも無い。これで成り立つとは思えないのだけど……』
リサの困惑した様な声。それに司会は何度も頷く。
『エキシビジョンという事で神代名人も少し遊びが入っているのかも知れません! これはチャンスか! チーム轟!』
司会の発言に会場から笑いが起こる。しかし、それをピシャリと重厚な声が遮った。
『いや、それは無い』
松方だった。その声は先程のふざけた様子は一切無い。
『神代に負けの美学など一切無い。あいつは誰よりも負けず嫌いじゃ。安易に負けるくらいならば死を選ぶ。それはお主らがいう軽い命懸けでは無い。本当の死じゃ。それがあの神代という怪物を支えておる。お主らにとってゲームかも知れんが。あいつはここに勝負に来ている』
『つ、つまり、これは神代名人が考える最強のデッキという事でしょうか?』
『さあのぉ……わしゃこのゲームの事は知らんし……しかし、あいつの眼付。あれはわしと竜王戦を戦った時と同じ……いや、それ以上に鋭くなっておる。生意気な奴じゃ』
松方の雰囲気に会場にも緊張感が走った。それほど本当の勝負をしている人間の言葉は重かった。
『そ、それでは次にチーム轟です!』
轟金剛……妖精姫リーザ、ヘドロバンド、諸刃の剣士
モグラ……ミンネゴールド、重労働のドワーフ、爆弾岩。
松葉麗……ウイローウイスプ、愛の壁、夢限兵隊ワルプス、沼地の魔女。
『こっちも……凄いですね……轟選手に至っては全部コモンカードですよ。おっとでも、リーザさんのお気に入りである妖精姫リーザが入ってますね! しかし、人気の有るカードですが、実践ではあまり見ないカードです』
『ええ、リーザの固有スキルは扱い辛いです。乱数によって四つの効果が得られるのですが、一つは属性変換、範囲内の味方の属性を土属性に変える物、二つ目が強化、味方の使い魔のスピードを強化する物です、そして三つ目が混乱、これが出ると範囲内に居る使い魔はリーザを含め混乱状態になります。そして最後に覚醒。これはリーザの力を大幅にアップするという物です。しかし、リーザのスキルで使えるのはこの覚醒のみ、他ははっきり言ってマナとの兼ね合いで実践ではほとんどハズレです』
『なるほど……という事は轟選手はこのリーザの覚醒に賭けたという事でしょうか? 確かに見ると他のプレイヤーは自爆系スキルが多い気がしますね。自爆で削ってリーザの覚醒で決めるという事でしょうか?』
『今見る限りではそうかも知れません……』
『さあ……どういう試合展開になるのか、全く未知の領域! そして皆さんにお伝えしなければならない事がもう一点! 何とこのエキシビジョンマッチ! インカムのスイッチを切り替えれば、対戦相手との通話も可能となっております!』
『えええええええ?』
観客から混乱した様な声が漏れた。対戦中に相手と会話する事なんて無い。事前に説明されていたが、使う気は更々無かった。
『それでは参りましょう! TRIBE WARスタート!』
こうして俺達の最後の戦いが始まった――。




