第七章 執念 4
『さて! 盛り上がったトライブ・ウォー埼玉大会! 残す所あと一戦! 最高に熱いエキシビジョンマッチの時間がやって来ました!』
『パチパチパチパチ』
会場から拍手が沸く。やはりカードゲームをやっている連中だけあって盛り上がり方も冷静だった。
『そしてこの決勝には解説が付きます! 勿論この方! 妖精姫リーザ!』
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
男たちが腕を上げて叫ぶ。やはり……下品な奴らだった。
手を振りながらリサは恥ずかしそうに着席する。その時俺に向かって微かにウインクした。
『そしてもうお一方は将棋連盟から、前竜王。松方成基さんです!』
『ふぉっふぉっふぉ……』
すると腰の曲がった老人が杖を突きながらゆっくりと入場した。会場中が俺を含めて誰? という視線を向ける。
『このゲームセンターというのは喧しいの。耳の遠くなった老人の耳にも音が届きよる』
『この御二方を迎えて実況をしていきたいと思います! ……が、松方先生はトライブ・ウォーはプレイされた事は有りますか?』
『いや、無いの~お、お嬢ちゃん可愛いの! ワシの孫なんかどうかの?』
『え……いえ、ちょっと……』
松方は自由奔放というか、司会も困った様な表情を浮かべる。
『何、神代が夢中になっておる物がどんな物か見に来たのよ。このゲームの事は分からんが、神代の事ならばここに居る誰よりも知っておる。それで良いじゃろ?』
急に鋭くなった目に戸惑いながらも司会は自分の職務を果たそうとする。
『それでは神代名人の話を交えながらこの戦いを楽しみましょう! さあ、いよいよ。両チームの入場です!』
『うぁおおおおおおおおおおおおおおおお!』
会場から歓声が上がった。俺は二人を振り返る。
「何というか……俺がここまで来れるとは思わなかった。二人共ありがとう」
「馬鹿。礼なら勝ってから言えよ。ここで勝たなきゃ何の意味も無いだろ」
「そうですわ。それにお礼を言われる覚えは有りません。勝ちたいと思っていたの皆、同じなのですから」
「そうか……」
本当に俺は仲間に恵まれた。
「じゃあ行こう。俺達の全てをここでぶつける」
俺達は特設ステージに上がる。それと同時に歓声もより一層熱を増した。
『さあ、両チーム入場しました。両チームのリーダーに意気込みを聞きましょう』
ステージに居た綺麗なお姉さんがマイクを神代に向けた。神代はそれをスっと離す。
『え……えっと……神代名人は集中している様です。それではチーム轟の轟さん!』
引き攣った笑みでお姉さんはマイクを俺に向けた。俺も苦笑いを浮かべる。
「勝ちます。それだけの為に今日……いや、今までやって来たから」
『強い想いが込められた言葉ですね! それでは両チーム準備をお願いします!』
俺達は席に着いた。するとインカムから紗月の声が響く。
『おい。あのデッキだよな?』
「ああ、頼む」
『ふふふ、私にクレオパトラ以外を使わせるとは……勝たねば承知しませんわ』
「頑張るよ」
俺はこの戦いまで温存していたデッキをセットした――。




