第七章 執念 2
『さて……厳しい予選を勝ち抜き、遂に本戦決勝! 神代名人への挑戦権を賭け、今、二つのチームが激突します!』
司会がそう言うと、会場から歓声が上がった。ここに居る人達、皆がトライブ・ウォーのファンだと思うとなんだか感慨深い。
『まずはAブロックを圧倒的な実力で勝ち抜いて来た。チーム御神楽! このチームは皆さん御存知の通り、全区大会で常に上位の戦績を収め、全国ランキングは二位。神代名人がトライブ・ウォーを開始するまでは最強の名を冠していたチームです』
司会の紹介に応じる様に、チーム御神楽さんが入場する。普段はサラリーマンだろうか? 中年の朗らかな笑みを浮かべた人達だった。
『対するは! こちらは予選から厳しい戦いを繰り返しながら、執念とも取れるゲーム運びで、勝利をもぎ取って来た。チーム轟。彗星のごとく現れ、この決勝の舞台に立っています!』
「行こう……」
「ああ」「ええ」
二人と共に決勝の舞台に上がる。それと同時に歓声が上がった。
『それでは早速決勝を開始します。二チームとも準備の方をお願いします』
「よろしく頼むよ」
相手のチームの人が握手を求めて来た。俺は微笑みながらそれに応じる。
「紗月、松葉さん。よろしく」
「当たり前だ。こいつらを飛ばして、さっさと神代と戦わなきゃならないからな」
「おほほほほほ! やはり我々は最強ですわ。今日は誰にも負ける気がしませんの」
『そして、この決勝では実況に神代名人がいらっしゃいます!』
『…………』
神代は静かに座っていた。必要な事しか話さない神代らしかった。
『神代名人。ここで勝ち上がった方が神代名人と対決するわけですが、どうですか? 今まで見た感想はどちらが有利でしょうか?』
神代は少し目を閉じた。そして平坦な調子で話し出す。
『御神楽は非常に安定している。私が見てきた中ではかなり優秀な試合運びをしている』
『なるほど! 確かに見ていて安心感がありましたね! 特別な事をしている訳でもなく、典型的なバランスデッキですが、その分隙が無いですよね! 対するチーム轟は如何ですか?』
『こちらは……』
神代はうっすらと笑う。
『随分歪なチームだと思ったよ。デッキは完成されていて個々人の……特に女性二人の実力はトップクラスだが、まだ……未完成だ』
神代の分析は正しい。俺が他の二人に比べて劣るのも確かだ。
『しかし……まだ何かを隠しているそんな印象だ。どちらが有利だという話しだが。それは意味の無い事だ。己の戦いを貫ければ、そちらが勝つ』
『ありがとうございます! おっと、ここで両チームとも準備が整った様です! それではTRIBE WAR スタート!』
司会の合図と共に試合が開始される。俺達は卓上にカードを設置した。
『さて、今回の大会はチームごとにインカムが配れています。これにより、より連動した戦いが可能となっています』
『おい。二人とも、作戦はさっき決めた通りだ。相手は魔人バランス型。中盤、終盤まで持ち込まれたらイフリートがキツイ。イフリートが完成する前に一気に方を付けるぞ』
紗月からインカムを通じて指示が送られてくる。俺はそれに返事をした。
「行きますわよ! スフィンクス! 召喚!」
松葉さんが高らかに叫ぶ。正直、この人はインカムがいらない。
『オオオオオオン!』
チーム神楽が淀み無い動きで、ワイト、ゲヘナ、グールを召喚する。序盤は堅実に、リードを許さず、後半に出るイフリートで一層する気だ。
『おい、的場、俺がウイローウイスプでマナを送る。松葉は陽動だ。その瞬間お前は最後の勅命を使え』
『おほほほほほほ! 最後の勅命とは! もし相手を崩しきれなかたら負けが確定してしまいますわ!』
『だからこそ意味が有る。決勝の舞台だ。相手は恥ずかしい試合はしたくないはず。そしてそれは俺達も同じだと考えているはずだ。だからこそこの奇襲は必ず決まる』
「トラップマスターがそういうんだから間違い無いだろうな」
俺は小さく笑った。この大舞台。そして負けられない戦いに置いても大胆に貪欲に勝利を目指す。主人公は紗月みたいな奴が選ばれるんだと思う。
でも良い。俺は凡夫で良い。この試合に勝って、次の神代と戦えるのならばなんでも!
『おほほほほ! では私の見事な陽動をごらんあれ! でもそのまま相手を倒してしまっても御承知を、おほほほほ! 松葉の攻め! 受けきれる物ならば受けきってご覧なさい!』
松葉さんがクレオパトラを中心に進軍する。それは普通ならばただの荒らしで、これほどの上位チーム相手ならば、いなす程度で済むだろうが、松葉さんは使い魔が死滅するのも構わずに相手の喉元に喰らいつこうとした。それによって相手はここで松葉さんを完全に倒して優位を築こうと、バランスデッキなのに序盤の勝利に欲を出した。
『今だ! 的場! 決めろ!』
その紗月の言葉を聞く前に、俺は既にカードの準備は済んでいた。
『固有スキル発動……最後の勅命』
最後の皇帝の固有スキルがマグナスに付加される。神楽さん達はウイローウイスプの事は勿論警戒していた。しかし、それはクレオパトラを操る松葉さんの方に送られているのだと、だからこそ、マナが無いと読んでいた俺が最大級のスキルを使った事は完全に予想外だった。
「行くよ」
俺は小さく宣言する。それと共にマグナスは神楽さんの城を二つ完全に破壊した。
「これで俺も手詰まりだな……後は頼む」
俺は効力によって死亡したマグナスを自陣に戻す。正直、マナもほぼ無いし、後は復活した雑魚使い魔で、守りに参加するくらいしかする事が無い。
『上出来だ的場。お前だけ下手くそだから相手の警戒も緩んだな。後は俺達に任せろ』
「ははっ! ありがとうよ」
俺は椅子にゆっくり腰を預けた。本当にいい仲間に恵まれた……。
「おほほほほほ! 殲滅! 殲滅ですわ!」
『おい! 松葉! お前は守ればいいんだよ!』
良い仲間……。
二人は揉めていたが、俺達は勝利した――。




