第七章 執念
『ただ今よりトライブ・ウォー埼玉大会を開催します!』
『パチパチパチパチ……』
ゲームセンターの特設ステージから司会がそう言うと周囲から拍手が起こる。俺も一応、凡人なので拍手しといた。紗月と松葉さんはガン無視していたが。
『今回は何と、世界ランキング一位の神代名人も参戦します! 神代名人どうぞ!』
『ザン……ザン……』
遠目にも只者では無い雰囲気を放ちながら袴姿の神代がステージに現れた。その強さが、戦っても無いのにヒシヒシと伝わってくる。
『名人ぃいいいいいん! 本当に来てしまいましたね!』
『来るとも……』
神代は周囲を見渡した。そして頷く。
『大切な一戦が有るのでね。正直、相手はまだ知らないのだが、リーザ君の推薦する男だ、楽しみにしている』
『リーザさん……そういえば、名人はリーザさんに告白したとか! どうなんですか! その件は!』
『事実だ。常に常勝を掲げて居るが、今回は……絶対に負けない』
神代は扇子を開いた。その扇子には常勝無敗の文字が刻まれている。
『名人戦よりも燃えているよ。ふふ、いかんな、勝負に必要なのは揺れぬ心、平安だというのに』
神代に刻まれた笑みは壮絶だった。本当に命賭けの勝負を戦い抜いて来た者にしか出来ない。そんな修羅の様な笑み。遠目に見ても背筋が凍ったし、その圧力に司会者も飲まれていた。
『で、では開始しましょう! 神代名人は決勝シード、他のエントリーチームは二回敗退で、脱落です! それではトライブ・ウォー……開始!』
「おい。俺達はBブロックだ。折角だからAブロックの戦いを見ておこう」
紗月が俺の袖を引っ張った。紗月はいつに無く真剣な表情をしている。俺はそれに頷いた。
「予選だからって油断するなよ。ここに居る連中、神代を倒そうってだけあってレベルが高いぞ」
「おおおおおおおおほほほほほほ! 私松葉麗の初陣ですわ! ド派手に! 目立ちまくって差し上げますわ!」
「ふふ、頼もしいね」
何時も通りのテンションで、俺達は戦いに向かった――。