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今この時を楽しむために  作者: とうゆ
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出会いと豹変

  「来年から下宿しなさい」

 父親からそう告げられたのは高校1年の3月だった。

 なぜ急にこんなことをいったかわからないが

 まぁ、俺にとって別に下宿することのメリットはいくつかあるし快くその要求をのんだ。

 例えばこれで学校までの通学時間が前より短くなるし、親という子供を縛り付ける鎖から解放されるし、それにもともと両親と仲良くなかった俺は最高だと思っていた。


 でも、この考え方があまいものであったと知るのは間もなくのことだった。





 始業式の1週間前・・・

 俺は今日からこの下宿先、由良美荘で生活をするので挨拶をしに来ていた。

 「すいませーん、誰かいませんかー?」


 すると玄関からちょうどまっすぐいった奥の部屋から、ショートカットの女の子が1人廊下をどたどたと走ってきた。

 「お、新入りさんかな!?、初めまして、噂に聞いてたよ!私、月野 咲(つきの さき)って言うんだ君と一緒の高校2年だよ、よろしくね!」

 「あ・・・どうも、俺柏木 晴哉(かしわぎ はるや)です、よろしくお願いします。」


 自分でも初対面の人相手にして、そんなに話せる方だとは思っていなかったし、最初からこんなにフレンドリーな子しかも女の子、が出てきてかなり圧倒されてしまい、その先の言葉が出てこなかった。


 「うるせーぞ、さきー」

 「いつもどうりの元気のよさだね」

 「元気が良すぎです・・・」


 と、3人の声が聞こえ、その声がする階段の方向をみると、いかつい感じで、The DQNといった感じの男がまず最初に降りてきて、続いて爽やかな雰囲気を醸し出し、かなりのイケメンの男、そして最後に髪が長く、黒縁メガネをかけている高身長の男が続けて降りてきた。


 「おう、新入りよろしくな、俺はここを仕切っている土門 亮斗(どもん りょうと)だ、よろしく。」 と、俺に手を伸ばし握手するのを待っている。

 かなりの強面で俺は少しびびりながら握手をした。



 「またー、誰が仕切ってるって? かってに亮斗がやってるだけじゃん」と苦笑し、手を腰にあて、ため息をついている。

「は?!、ここでは俺がリーダーなんだよ」

「まぁ、なんでもいいけどさ…」

すこしあきれながら土門と話しているのは、かなりの爽やかイケメンの男だった。

 男の俺でも少し目を取られるぐらいのイケメンだ。

 誓って、男に興味があるというわけではないが・・・


 「あ、ごめんね、こいつ誰に対しても、こんなだからさ、僕は一之瀬 竜海(いちのせ たつみ)って言うんだよろしくね」

 少し笑いながら、言ってきた。


 この笑顔はずるい、何人の女の子を虜にしてきたんだろう・・・

 そんなことを思いつつ、軽く会釈した。

 「じゃー次は俺の番かな?」


 そんな声が聞こえたので、声の主に目をやった。

 「俺は、橘 優貴(たちばな ゆうき)って言うんだ、高校3年で君より1つ先輩になるかな?」

 この人も・・・


 絶対本を片手にでも歩いていたら、画になる人だ。

 「高校2年の柏木 晴哉です、みなさんよろしくお願いします」

 「まぁーそんな硬くなるなって、これから楽しんでいこうぜ!」


 その言葉と同時に肩を組んできた。

 「みんなのことは名前で呼んでね」

 「俺のことは、先輩なんてつけなくていいから」


 硬くなるなって言ってもな・・・もう圧倒されまくって、軽く頭を下げることしかできない。

 俺ってもしかして、隠れコミュ障か?

 と疑ってもいいほど、なにも話せない。


 「ちょっと亮斗?、晴哉君ひいちゃってるよ?」

 「え?、あぁすまねぇ・・・」

 月野さんが助け舟をだしてくれたおかげで土門は俺から離れてくれた。

 嫌じゃないんだけど変に緊張していたので内心ほっとした。


 由良美荘の玄関先にて、5分少々、やけに長く感じる。

 そうこうしていると、今度は玄関から見て、右の廊下から一目見ただけで、お嬢様だとわかる女の子と


 ゆるふわな感じで、いかにも癒し系の女の子が歩いてきた。

 「あら、あなたが噂の新入りさんですね、お初にお目にかかります、白石 麗華(しらいし れいか)ですわあなたとは同学年ですのよ、よろしくお願いしますわ」


 「よろしくお願いします…」

 さっきと同じように挨拶をし、軽く会釈した。

 どこかの会社の令嬢だろうか?


 でもお嬢様なら何でこんなとこにいるんだろ?

 いろんな、疑問がありつつも、俺はそのとなりにいるゆるふわ系の女の子が気になっていた。

 どことなくおっとりしてて、かわいらしい


 「私、水瀬 心春(みずせ こはる)っていいます、あなたより1つ先輩だけど先輩なんていらないからね、それと私ここのお姉ちゃんみたいな存在だから、あなたも私のことお姉ちゃんだと思って接してね」

 お姉ちゃん・・・?


 どっちかというと妹っぽい感じがするけど・・・

 まぁ、でも見かけによらず中身がしっかりしているんだろうな…と自分で自分を納得させた。

 「わかりました、よろしくお願いします」

 みんな同じ学校だっていうのに、俺はここにいる全員のことを知らなかった。

 うちはマンモス高だから、初めてみる人がいてもそう不思議ではない。


 それに、ここのメンバーなかなかの個性的な人が多そうだ。

 下宿することになったのはいいけど、内心かなりあせっていた。


 もっと俺とあんまり変わらないような普通の人ばっかりだと思ってたんだけどな・・・

心配だけど、まぁ、なるようになるか。

 昔から、何事のなんとなくこなしてきたので今回も大丈夫だと自分に言い聞かせた。


 「これで全員、晴哉君に挨拶をすましたよね!とりあえずさ、私もっと晴哉君とお話したいからみんなでリビングで集まってお茶会しようよ!」

 月野はそんなことを言うと周りの反応をみずに俺の袖を引っ張って1階奥の台所のもう1つ奥にあるリビングまでもうダッシュしていった


 いやこれみんなこないんじゃない?特に土門なんてお茶会をするキャラでもなさそうだし、と

土門に対して失礼なことを思ったり・・・

 「月野、みんな来るかな?」


 すこし顔を引きつらせながら、小声で聞いてみた。

 そうすると、


 「大丈夫、みんな晴哉君がここに越してくるって知ったら、ずっとそわそわしてたんだから晴哉君に聞きたいことなんて山ほどあるよ!」


 とにやにやしながらいってきた。

 それが本当ならこの先起こることが目に見えてすごく怖い、予想すると1時間ぐらいは質問攻めにされるのだろう・・・


 まぁ、でも1時間ぐらいだろうし大丈夫かな、なんて心を落ち着かせる。

 

 「あ、あとさっきも言ってたけど、絶対みんなの事は名前で読んでよね!それがルールだからね。」

 「名前?!、あ、あぁなんとか頑張ってみるよ」


 急に名前って・・・

 

 ここの人たちには、驚かされっぱなしだ。

 あいにく、俺には初対面の人を名前で呼ぶという恐れ多いことをする勇気なんて持ち合わせていない。

 とりあえず少し話して仲良くなってから下の名前で呼ぼうと決めた。



 みんなで集まっている玄関から、リビングに着くまでの間に不安なことがまた増えた。

 俺達がリビングに入ろうとしたぐらいに、玄関付近の土門の耳に響くぐらいの大きな声が聞こえた

 「おい、まんじゅうはあるんだろうな!?」


 ん?、いまなんて言った?

 まんじゅう?

 俺の聞き間違いかな?


 「当たり前じゃん!ちゃんと用意してるから、早く来てね」

 「おう、わかったすぐ行くぜ」


 当たり前?

 まさか、あいつすごい強面で甘いものなんて食べないような顔してんのにまんじゅうが好きなのか。


 人は見かけによらないんだな・・・

 なんてことを再度認識させられた。 





 この後結局、リビングに全員集合、そしてお茶会開始。

 そこから3時間ほど、質問が雨のように俺に降り注いできた。

 予想に反してかなり長かったので俺は疲れてしまった

 その後は自分の部屋にいってから、すでに届いてあった荷物をあけることもできず、そのまま寝てしまった。





 ふと目を覚まし、携帯を見ると夜の1時を少しまわったところだった。

 まだ3月の終わり、布団もかけないで寝ていたので少し寒かった。

 あー寒い、布団だけでも出しておいたらよかった・・・


 後悔を感じるとともに、用を足したくなったのでトイレにいくことにした。

 場所はわかんないけど、まぁ歩いていたら行き着くだろうと思って部屋を出ると、

 廊下は真っ暗だった。


 みんな寝てしまったんだろうか?

 あたりはすごく静かだった。

 とりあえず、俺の部屋は三階建て建物の二階の正面からみて一番右奥だから、部屋からでて反対側にある階段のほうに向かって歩くことにした。


 トイレへと向かう間、なんで自分の部屋にトイレがないんだよ、と心のなかで文句を垂れながら歩いていった。

 少し歩いて俺はあることに気づいた。

 おかしい、こんなに廊下って長かったか?


 いやこんなに長いはずは無い。

 しかも、部屋を出たときにも少し疑問に思っていたが、部屋から階段が見える距離にあるはずなのに、部屋を出た時見えなかった。


 その時はただ単に暗いだけだと思っていたがいま考えると見えないのはどうも不自然だ。


 それに辺りは妙に静かで、ひんやりとした空気が漂っている。

 俺は少し不安になって持ってきた携帯に目をやる携帯は時刻、1時5分になっていた。


どこの下宿先に部屋からトイレまで5分以上かかるとこがあるんだよ!

 もしかしたらあるかもしれないけど長すぎるぞ…


 心の仲で1人明るくやっているが、実際はそんな場合じゃない

 いつの間にか、先が見えないからどこまでも続いているんじゃないかと思い始め今の状況に恐怖すら覚えるようになっていた。



それから歩き続け、何分かしたのち、地響きのようなものが聞こえた

「う、お、おいちょっと、」


立っているのもままならない強烈な風が後ろから吹いてきた。

全身に力を入れて這いつくばるようにして飛ばされないように耐える。


風はそんな俺を見て、呆れたようにそれ以上の風を吹かしてきた。

まるでこの廊下に居てはいけない、いますぐ立ち去れと言わんばかりに・・・・・

「も、もうだめだ・・・・・・」


そんな、弱々しい声を出すことぐらいしか今の俺にはできない。


案の定、そのまま、暴風なんて言葉じゃ足りない、それ以上に感じる風に体ごと目の前に広がる暗闇に持っていかれた。






「あぁ・・・痛てー」

先ほどの風に飛ばされ、地面に体を打ったのだろう


全身に少し痛みが走る。

まだ意識がはっきりしないがここがどこか気になったので、目を開け、辺りを見回してみるとそこは見覚えのある場所だった。


 「学校のグラウンド……」

 そう、そこは俺が通う高校のグラウンドだった。


 「俺、さっきまで由良美荘の廊下で立っていたのに・・・風の力だけで約2キロ近く離れている学校まで飛ばされたのか?」


 そんなことは物理的にありえないし、どうやって建物から出たのかも説明がつかない。

 それに、もしそんなことがあったとしても体が無事であるはずがない。


 少し不安になった俺はおもむろに携帯を見た。

 そしてその行動によって今の状況が普通でないことに確信を得た俺は、さらに頭の整理ができなくなっていた。


 携帯は時刻、22時00分を示していた。

 「さっき見た時と、時間が違う…」

 なにが起こっているのか全くわからない、パニック状態で精神が安定しない、


 呼吸も1回1回が大きくなりさらに不安を煽る

 「これって夢・・・だよな?」

 誰に聞いているのでもなく声が出てくる。


 そこにもう一つ追い討ちをかけるように、あることに気がついてしまう。


 光が街灯の光しかなかったのだ。

 学校の近くは住宅地が広がり、その反対側を少し行った場所にはスーパーなど、店が並んでいる。


 仮にもここは都会、この時間に街灯の光しかないというのはあまりにも不自然だった。


 いま何が起こっているのか頭をフル回転させて整理しようとしているとき校舎が爆発し、それと同時に、砂煙りが辺りに舞った。


 間も開けず、砂煙りが振り払われ、俺は頬に傷を負った。

 目に見えない、風の刃のようなものが飛んできたのだ。 

「いっ…」


 痛みを感じそれを言葉に出す前に俺は

 学校の屋上にあたる高さほどのところに高校生ぐらいの男と女が2人浮いているのに気付いた。


 人が浮いてる?!

 しかも、あそこにいるのって・・・・・・

 俺はそこにいる2人が誰なのか知っている。


 今日初めて会い、そしてお茶会で主に俺を振り回した2人、亮斗と咲だった。

 しかも2人はなにか武器のようなものを持っている。


 亮斗は真っ黒で剣の真ん中に1本の赤い線の模様が入った大剣を、咲は白を基調とし、色鮮やかに装飾された槍だった。


2人はにらみ合いを続け、いまいる場所からまったく動かない。

そこからは殺気立ったものが感じられる。


「お、、おい、2人共なにやってるんだよ」

まったく状況が読めない今、今日出会いそしてもう友達と言ってもいいような仲の2人がここにいたので少し安心して、声をかけてみたがそれは間違った行動であった気づくのはそんなに時間を要しなかった。


「なんだ、お前どっから入ってきた?、俺ら2人の勝負に入ってくるってことは死ぬこと意味してんだよ、まずはお前から殺してやるよ」


 数時間前の土門とは思えない言葉だった。

 質問攻めにされているとき、土門は俺に対して、


 「俺ら今日からダチなんだから、なんか困ったことあったら言ってこい、気にいらねーやつがいたらぶっとばしてやるよ、俺って喧嘩っぱやいところがあるけど、ダチには喧嘩ふっかけたり、暴力をふったりしねーから安心しな」


 なんてことを言ってくれた、最初は見た目に少しビビり気味だった俺だが、その言葉を聞いてから、土門に対する見方を変えたのだ。


 見た目は少し怖いが、友達は絶対に大切にする。

 今の社会じゃそうそう見かけない人情深いやつだと思った。


 その言葉に嘘はない、その時土門の目を見ていたが、嘘をついている目には見えなかったなかった。

 目だけで嘘か本当かを見分けられるなんて、ありえないと思うかもしれないが、俺は土門を信じる。

 でも、その言葉を聞いているからこそ、今の状況を信じることができなかった。


 "殺してやる"、そう言って土門は手に持っている大剣で俺に斬りかかってきたのだ

 その後ろで月野は数時間前まで見せていた笑顔とはまた別の、人を蔑み嘲笑うかのような笑顔を浮かべていた。


 「やばい」

 今の土門は本気で俺を殺そうとしている・・・

 それは、目を見開きまるで肉食動物が自分の餌である草食動物を1撃で仕留めようとしている亮斗の様子からすぐにわかった。


 逃げようとするが、腰が抜けて動けない。

 土門との距離は数十メートルもない

 こんな数秒の間がかなりの長さに感じられる。


 土門が近づくにつれ、心拍数がはやくなり、呼吸も荒々しくなっていく。

 この先どうなるかなんて明白だ、恐怖で体が震える。

「もうだめだ・・・・・・」

 

 恐怖に全身が支配され消え入りそうな、力の弱い言葉を発することしかできない。

 なにもできない自分の無力さを感じ、こんなところで死ぬのかと諦め、そこに膝をつき、脱力し切った。

 そこから1秒もしないだろうか


 土門の、両手でやっと持ち上げることができそうな派手に装飾された大剣で俺は真っ二つに斬られた。

 痛みは感じない、まだ少し意識が残っていて、自分の上半身が地面に落ちて行くのがわかる不思議な感覚だ。


 残った下半身からは血が吹き出し、臓物が飛び出しているのが見えた。

 少し意識があるのになにもできない、死んだ、すぐに理解できた。

 斬られた自分の上半身が地面に落ちるまでの少しの間


 「思った……簡単にやられて……したね、もっ…頑……ほしか……ですよ、この先が思いやら…て…まいますね」

 という若い男の声が微かに聞こえたがすぐに意識が途絶えてしまった。


初心者の拙い文章でありましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。

次回投稿はすぐにはむりだとは思いますが、できるだけ早くあげれるよう善処いたします。

最後にもしよろしければ、改善点など指摘していただけるととても嬉しく思います。


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