勉強会?
「さ~て、今日も頑張りますか…と」
俺は宿で目を覚ます。昨日の決闘で賞金が出て随分と金に余裕ができたな。宿の金なんて簡単に支払える。
「おはようございます、レントさん」
「え?」
宿の外でアリスが待っていた。というかなんで?いや、それよりも……。
「…何分くらい待ってた?」
「へ?」
「いや、もしかしたら待たせちゃったかなと思って」
「いえいえ、お気になさらず」
「いや、でもさ……ああ、なんなら明日から待ち合わせでもする?」
「あ、いいですね」
俺の春キタコレ!よっしゃああ!……おっとテンションがおかしくなってきた。
「ああそうだ、ギルドに着いたら聞きたい事が結構あるんだが?」
「え?」
「いや、俺って記憶喪失になっててさ、分からない事だらけなんだよ」
「記憶喪失……?」
「ああ、いいか?」
「ええ、構いませんよ」
天使かこの子。
そんなこんなでギルドに着き、俺は資料を広げる。
「ああ…まずはこの世界についてから」
「そこからですか?」
「ああ、頼む」
「はい、この世界はフラッティア、四つの国から成り立つ世界です」
たった四つしか国が無いのか……。
「いま私たちが住んでるトロイアの町はティスカ王国の大都市の一つです、他にはグラン共和国、ガイラ帝国、アカツキ国という国があります」
「アカツキ国って?」
「極東にある小国です、独特の文化形態をとっています」
いわゆる和風的な…か?
「昔、戦争でもあったのか?」
「はい、数百年前に大きな戦争があって、最終的に今の国が勝ち残った…そんな感じです」
「へえー」
「まあ、まだこの世界の全てが明らかになっている訳ではありません、仮説として、この世界が浮遊島ではないかとも言われてます」
「ん?」
「この世界は周りは海になっていて、最後は大きな滝になっているんです、滝の向こうも、滝の下もどうなっているかは分かってない状態なんです」
ということはあれだ…この世界は平らっていうことなんじゃ…そういやフラッティア…フラットだし、そう考えるとすごい世界に見えてきたぞ。
「この世界は平らなのか?」
「?」
あ、すごい不思議そうな顔された。そうか、当たり前のことだったんだな。この世界、太陽や月、星は普通に見えるんだよな……もしかして天動説か?
「あの…」
「ああ、悪い」
あまり当たり前すぎる事を聞くと怪しまれるな…注意せねば……。
「そうだ、外に出よう」
「そうですね、レントさんもそろそろ退屈になってきたんじゃないですか?」
「ん、まあな」
「なんだ?出るのか?」
ギルド長…影薄すぎんよ……今日初めて喋ったんじゃないか?
「いちおう依頼が来ている、道具屋からだ」
「えーなになに?」
「マナクリスタルの材料であるマナストーンを取って来てほしい…?」
「マナを知らんのか?」
ファンタジーものではよくあるな。MP、マナポイントとかそんな感じで。
「マナクリスタルは魔法を使う人達にとっては無くてはならないものですからね」
「やっぱりか……」
この世界にも魔法はある。たまにそれっぽい奴を見かけてたしな。マナクリスタルはいわゆるMPを回復させるアイテムなんだろう。
「マナストーンってマナクリスタルにする以外に何か利用法は無いのか?」
「え?知らなかったんですか?」
「記憶喪失だしな」
「いえ、街灯や建物の灯りとか見て何も思いまえんでしたか?」
確かに思う。街灯とかの灯りって火でも灯しているのかと思っていたが…よく見ると電球みたいなんだよな。そしてここにも付いてる電気。他にもガスコンロとか蛇口式の水道とかなんか妙に現代的だ。
「もしかして……」
「はい、マナをエネルギーにしています」
やはりな。この世界でマナというのは魔法だけでなく、様々なものに利用できる万能なエネルギーみたいだな。
「ちなみにマナを魔法関連以外に使うのは十年前にできたばかりの技術なんですよ」
結構、最近にできたことなんだな。まあいいさっさと行こう。
「よし、ならそろそろ行くか」
「そうですね、マナストーンは洞窟にあります、特に珍しくもないのですぐ見つかると思いますよ」
「そうか」
俺たちは洞窟へ向かっている最中だ。俺はアリスを見る。見たところ剣士のようだな。
「どうしました?」
「いや、アリスの装備って……」
すごい高級なものを使っていそうだ。俺と同じ大きさくらいの胸あてとか明らかに色が違う。籠手や金属製のブーツ、そして盾、どれもが明るい銀色だ。
「もしかしてミスリル銀?」
「分かるんですか!?というかミスリル銀は知っているんですね」
マジか…当たっちまったよ。ああ知っているよ。ファンタジーじゃ珍しくない。
「なんとなくな…」
「そうなんですか……あ、レントさんあれ」
アリスが指差す方に目を向ける。ラプターだな。しかもこっち気が付いているな。
「どうします?」
「意外と冷静だな、実戦は初めてじゃないのか?」
「初めてですけど…レントさんもいますし」
「じゃ、倒しておくか」
「はい!」
ちなみに俺は武器を変えた。というか巨漢から奪った大剣をそのまま使うことにした。
「でえぇいや!」
俺は剣を大きく横に振る。それだけで二体のラプターが倒れる。さすが大剣だな。そういえばアリスは……?
「ギャオ―――!」
ラプターが倒れる……え?何したの?
「ウィンドカッター!」
アリスがそう言った途端、風の刃みたいなのがラプターに飛んで行った。
「ギャ―――!」
またラプターが倒れていく。まさか…魔法が使えるとは。
「ハッ!」
「ギャウア――――!」
アリスは剣…レイピアか?で突き攻撃をする……早っ!なにあの動き!?
「すげえな…おっと」
「グギャッ!」
後ろから近付いてきたラプターに、俺は剣を突き刺す。
「すごいですね…レントさん」
いや、俺からしたら初実戦なのにここまでできるアリスの方がすごいよ……。
そんなこんなで俺たちはラプターの群れを全滅させた。
「なあ、アリス」
「なんでしょう?」
「剣と魔法、どこで習った?」
「それは幼いころからですね、プロの剣士と魔術師の方から家で習っていました」
多分そんなこったろうと思ったよ。俺は剣なんて習ってないし、はっきり言えば圧倒的な筋力でごり押ししかしてない。俺がこの世界の人達と力が同じならとっくに死んでいただろう。
「そろそろ着きますよ」
「ああ……って」
おいおい…ここは俺が最初に居た洞窟だぞ。
「じゃあ、行きましょう」
「そうだな」
洞窟はやっぱり暗いけど少し地面が青白く輝いているような……まさかこれ……!
「この青白く輝いているのって…」
「マナストーンですよ?」
やっぱりか!珍しくないどころかほぼ全ての石がマナストーンだぞ!?これだと普通の石の方が見つけるのが大変そう…あ、一応ある……ん?なんか今動いたような……。
ススス……
よく見たら石じゃない!?石でできた大きい芋虫……?
「アリス!あれは?」
「グラーモスですね、ファントスみたいに突進してきますし、高さが膝より低いのでガードしにくい厄介なモンスターです」
グラーモスはこちらを見つけるか否や、まっすぐ突進してきた。俺はグラ―モスの頭に足を乗せ、動きを止める。ふむ、軽いな。
「レントさん…大丈夫ですか?」
「心配はいらん」
多分、一般人がこういうことをしても止められんだろうな。まあいい、俺は大剣でグラーモスを斬る…というより叩き砕く。
「洞窟のザコモンスター…だな」
「レントさん…他にもいます」
また来たし……。俺は同じくグラーモスを片足で押さえつける。とその時俺は別のモンスターを見た。
「まさか…スライム!?」
俺は図鑑で一番最初に調べたモンスターだ。そしてこの世界のスライムはかなり厄介なモンスターだ。何せ、物理攻撃が効かないからな。下手に剣とか突き立ててみろ、剣が消化される。
「レ、レントさん……」
「ああ……」
スライムがこっちに近付いてくる。このままだとスライムに捕食されかねない。
「ならば……!」
仕方ないので俺はグラーモスをスライムに投げつけた。グラーモスはスライムに当たったのかと思った瞬間、スライムに取り込まれ、溶けていった。
「よし、マナストーンは回収しておいたしさっさと逃げるぞ!」
「はい!」
グラーモスを消化している隙に俺たちは洞窟を脱出した。
「スライムか……」
何か対策を考えないとな……。
ちなみに主人公の装備はギルド長が用意してくれたものです。