エアード家
やっとヒロインの登場まで来ました。
「…なんか…すげぇ…」
俺は町の広場にやって来ている。そこには掲示板みたいなのがあり、随時情報を更新していくらしい。現に俺の話題で掲示板が埋まっている。
「おい、あれがラプターの群れを一人で返り討ちにした新米冒険者なんだぜ?」
「へぇー、すごいなー」
昨日の一軒で俺は一躍有名人になってしまった。まさかあのラプターとかいうモンスター、そこまで強かったのか……。てっきり熟練冒険者からすればザコ同然かと思っていた。まあ確かに熟練冒険者からしたらまだ楽な相手なんだろうけど、油断したらダメだそうだ。
「ここにいると疲れるな…」
俺は足早にその場を去り、ギルドへ向かった。
俺がギルドに着いて暫くしてからだろうか、突然扉からノックする音が聞こえてくる。
「はーい」
俺は扉を開け暫く動くことができなかった。
「あの、レントさんがいるというギルドはここで……」
俺の目の前にいる女の子が話しかけてくる。だ…誰だ…?俺はこんな可愛い子、元の世界で見たことが無い。今ここにいるこんな女の子こそ本当の美少女だっ!……いかんテンションがおかしくなってきている。
「お、俺がレントだ…」
「あ、そうなんですね!実はお願いしたいことが……」
「依頼?」
「いえ…私をこのギルドで働かせて下さい!」
なんで俺に言ったんだろうか…こういうのはギルド長に話すのが普通なんじゃ…。
「……」
ギルド長は「任せたぞ」みたいな表情を送っている。なんと無責任な……。
「あ、あの…」
どうする?確かに俺が有名になったことでここにも依頼が増えてくるとみていい。人では多いに越したことはない。しかもかなりの美少女だ……。緑色の長いストレートヘア、クリーム色をしたカチューシャをし、そして肌は白く透き通っている。流石異世界だ、女の子の質が高いぜ!……おっとまたテンションが……。
「別に構わないよ」
「!ありがとうございます……!」
「じゃあ早速名前を……」
「アリス、アリス・エアードです」
その名前を聞いて突然ギルド長が喋りだした。
「うちはダメだ」
おいおっさん何を言っている!
「あのなレント、こいつは…」
「そこにいましたか、お嬢」
ビクッとアリスが振り返る。そこには厳つい巨漢が立っていた。
「さ、帰りますよ」
巨漢がアリスに手を伸ばす。
「帰りません」
「それはいけません」
「嫌です」
「ちょっと待った」
俺が話に割って入る。うわっ、巨漢の奴思い切り睨みつけてやがる。
「なんだ貴様」
「その子が入りたいと言っているのに連れ戻すというのはどういうことだ?」
「そうか、貴様は知らんのだな」
?何のことだが全くわからん。ギルド長も反対してたし……。
「あのなレント、こいつはエアード家の跡継ぎだ」
ギルド長が言う。エアード家?知らんな。
「おいおい、エアード家はここ、トロイアの町を納める領主の家の名だ」
……え?ということは何だ、かなりのお嬢様ってことじゃ……。
「そうです、今すぐに帰ってきてください」
「!お母様……」
どうやらアリスの母親も一緒に居たようだ。
「あなたには家の跡をを継ぐ義務があります」
アリスの母親は厳しく言う。アリスは不意に俺の方を見つめてきた。その目は助けを求めている感じだった。
…どうする?アリスがいてくれたら色々助かるだろう。この世界のことについて、より深く教えてくれるかもしれない。それにアリスが悲しそうな目をしている。そんな女の子を見捨てていいはずがない……美少女限定だけど。しかしどうする?おれは今ある知識を総動員して考える。ここに来た後で得た知識も使って考える……。
「……だ」
「あ?」
「俺と決闘だ!」
自分でも驚くぐらいに大声で叫ぶ。
「決闘だと?」
そうだ。この世界には決闘という制度がある。ここ何十年かはやってないみたいだけどこの制度は有効なはずだ。
「ふはは…おもしろい!」
「決闘は明日、コロシアムで行う。武器は自由、相手に止めを刺す寸前まで追い詰めたら勝ち!いいな!」
「ヴォルダーに勝てるわけないでしょう」
アリスの母親が言う。なんだと!?
「レントさん、ヴォルダーさんはエアード家の使用人の中で最強と言われているんですよ!」
アリスまで言ってくる。男としてここは引けないんだよ!ならば教えてやる!
「だからなんだ?」
「え?」
「何っ?」
「お前らは広場の掲示板を見なかったのか?俺はラプターの群れを返り討ちにした冒険者、レントだ!」
巨漢は不敵な笑みを見せる。
「面白い…ならばその実力、見せてみろ!」
「ふんっ、上等だ!」
もう後には引けない。結局、明日に決闘することになった。アリスは今のところは、ギルドに預けておくそうだ。
「ほ…本当にいいんですか?」
「何がだ?」
「私なんかのために…その…それに勝てるかどうか……!」
「勝てるさ」
余裕で答える。もちろん勝算はある。俺の考えが正しければこの世界はきっと……。




