ラミス村
「今日は大丈夫だったか」
昨日、洞窟を抜けた先の山道で、野宿をした。前みたいにデフォンズドラゴンの死体があるわけではなかったが、一応、街道になっていたので、モンスターは近寄ってはこない。
そして、寝る時、少し距離を離したからか……それとも二日連続でやると逆に嫌われると思ったのか、クリムは抱きついてこなかった。
そして、この日の丁度昼辺りに、彼女の住む村、ラミス村に着いた。
「やっと着きました」
「ああ、早く薬を母さんに届けるんだな」
「はいっ」
守りたい、このえ……いかんいかん。俺もクリムに毒されてきてるな。
アリスに知られたら……考えたくないな。
「ささ、こっちがわたしの家ですよ」
そしてクリムさん、なんで俺の腕を引っ張って家に連れて行こうとしてるんです?
まあいいか、しかしこの村……外壁も無く、柵で囲ってるだけとか……モンスターとか襲ってきたらまずいんじゃないか?
と思ったが入口近くで屈強な男が立っていたな。あいつが強いならモンスターの被害はあまり無いだろう。
そんな事を考えてる内に、クリムの家まで来てしまった。
「ここがわたしの家です」
普通だな……周りの家と違うとこが無い、普通の家だ。
というか規模がトロイアの町と比べて小さすぎる。やっぱりあの町は都会だったんだな。
「そうかい、で、俺はどうすればいいんだ?」
「えっと…その……家に泊まっていってくれませんか?」
まさかのお泊りのお誘い。積極的すぎるだろう!?
しかも……結構真剣な表情で頼むもんだから断れない……。
「……構わない」
「やった!ありがとうございます!」
くっ……可愛いなその仕草!
クリムの家に入ると、彼女の母親らしき人物が出迎えてくれた。
「あらクリム、帰ってたの?」
「ああ!お母さんったら寝てなきゃダメなのに……」
「そうはいっても……」
「はい薬」
「え?」
「この薬だったら、お母さんの病気もきっと治るよ?」
「クリム……」
なんか、この家族愛に俺は不必要なんじゃないかって思えてくる。
「あら、そちらの方は……?」
「レントさん、トロイアの町で有名な冒険者さんだよ」
「どうもです、村に着くまで彼女の護衛をしてました」
「これはこれは……ありがとうございます」
「それでお母さん、レントさんを一泊させてもいいよね?」
まあ、母親がダメと言ったなら俺はこのまま帰るがな……なんか普通にOKを出しそうな予感。
「勿論、レントさん、ゆっくり休んでいきなさいな」
ほらやっぱり。
「では、お言葉に甘えて……」
この日の昼と、夜はクリムの母親の料理を食べることになった。
ちなみに薬を飲んだ途端、体が軽くなったといって、料理をしだした。
効果早いなと思った……というかあの薬……数百万Gしたんだよな。普通の薬であれば一万Gもあれば十分に高級な薬に部類されるがその数百倍……効果はかなり高そうだ。
まあそんな話は置いといて、夜ごはんに関して……。
「ファントスの……ステーキ……!」
なんと、大好物が出てきた。
「レントさん、その肉が好きなんですか?」
「ああ、この味はクセになる……うん、美味い」
「安物で申し訳ありません……」
「気にしないで下さい、美味しいですから」
「そ、そうですか……?」
あれ?なんか二人引いてない?アリスと蒼馬も美味そうにファントスのステーキ食ってると引かれるんだよな。
で、美味しい思いをした俺だったがその日の深夜、事件は起こった。
「ん……?」
俺は空き部屋で寝ることになったが……なんか体が重い……。
「……まさか」
俺は布団を剥いで、ベットの上を確認する。
「………」
「あの~クリムさん?」
またもや俺に抱きついてきた……部屋の中にまで侵入してくるとは……しかも問題はそこじゃない……なんでクリムが半裸なんだああああ!
この状況……どうすりゃいいの?
「……もう、どうにでもなれ」
ついに諦め、そのまま寝てしまった。
そして、翌日。
「昨日はお楽しみでしたね」
ちょっと母さん?なにを言っているんです?
「いやいや……俺は悪くないっすよ……あと、もう少ししたら俺帰るんで」
「それは残念、でも朝ごはんぐらい食べていきなさいな」
言われるがまま俺は朝食を頂くことになった。
「さて……そろそろ帰りますよ」
「行ってしまうんですね……レントさん……」
「クリム……」
クリムは何かを決意したかのような顔を俺に向けてきた……このシチュエーションは……。
「わたしは……レントさんが好きです」
告白……やはり来たか。
「……俺にはアリスが居る、悪いが……」
「今は返事要りませんよ?いつかきっと……振り向かせて見せますっ!」
そう言った彼女の笑顔は……可愛かった。
だからだろうか……気休めだが俺は言った。
「そいつは……楽しみだ、またいつか会えると良いな」
「はいっ!」
本当は下手したら一生会わないかもしれないが、もし時間があったら会いに行こう……そんな事を思えるくらいは、俺だってクリムが気にはなってしまっていた。
「じゃあな!」
「またいつか……会いましょう!」
俺はラミス村を後にした。
ちなみに……帰りは馬車だ。早く帰った方が良いだろう……アリスのご機嫌取りだが。
これにて闇バトル編終わり……ですかね?
次回からちょっと日常会を挟んだ後、次のアカツキ国編に移行します。




