クリムの想い
「……朝か」
「ん~……」
「……はい?」
落ち着け……昨日野宿したんだからここが山の中腹の森の中だってことは理解できる……確かに隣り合って寝てた…まあ、寝袋だったしくっ付くほど近くはなかった……なのに。
「あの~クリムさん?」
「ん~……」
何故かクリムが俺に抱きついて寝ていた。……どういう状況だよ!?
「とりあえず……うまく剥がしておくか……」
俺は変に刺激を与えないようにクリムを引き剥がした。
「……確かにフラグっぽいものを立てたような記憶はあるが……」
まず命を救い、母親の薬代金渡し、村まで護衛とかなりクリムに優しくしすぎなのかもしれん……だが、アリスと付き合ってる事を予め言っておいたのに……油断ならんな。
「あ……おはようございまふ……」
何か可愛いなおい。
「ああ、起きたか、早速出るぞ」
しかしこのデフォンズドラゴンの死体、便利だな。わざと酷い傷をつけてあるのも理由だが、他のモンスターが俺たちを恐れて近寄ってこない。そのおかげで野宿でも安心できるわけだ。
「これは……どうするんだ?」
頂上近くまで来たが、崖になってこれ以上進めないぞ?
「ここの洞窟を抜けていくんですよ」
「洞窟……スライムが居ない事を祈ろう」
今、スライムスレイヤーは勿論持ってない、出会ったら基本は逃げるしかない。
「スライムの目撃情報はあまり無い筈なので大丈夫だと思いますよ?」
「フラグか?」
「フラグ?」
そういやフラグの意味なんて知ってるわけ無いか。理解できるのは蒼馬かランサーくらいだ。
「なんでもない、とっとと行くか」
「はい」
俺たちは洞窟へと入って行った……。
「なんでフラグは回収されるんだ……」
入って暫くして、早速スライムと鉢合わせしてしまった……それも結構な数。
「なんか…すみません」
「いやクリムのせいじゃ……いや、怒って無いから安心しろ」
フラグを立てたのはクリムだが責めるわけにはいかん。
「こうなりゃ賭けだ!こいつを受け取れ!」
「これは?」
「腕にはめて……魔法を唱えてみろ、炎属性のな」
「……?」
「俺を信じろ!」
「…わかりました!」
俺は彼女に賢者の石が填まった腕輪をクリムに渡す。
「フ…フレイムボルト……?」
そう言った途端、魔法は発動した。少し形がおかしい炎だが。多分あれだろう。ちゃんとイメージできてなかったんだろうな。一応スライムは殲滅できたみたいだが。
「……この腕輪はなんです?」
「ここに緑色の石があるだろ?これは賢者の石といって魔法の素質が無い奴でも魔法が使えるようになる」
「そんなものがあるんですね……」
「それ俺のだから今の俺は魔法使えないけど」
その腕輪には魔力を上げるコアストーンも一緒に填まってる為、今の俺は魔装斬や魔装障壁を使うのすら厳しい。
「じゃあ、返しますね」
「……いや、このまま貰ってもいいぞ?」
「え?」
またフラグを立ててしまうかもだけど、すこし試したいしな。
「なんか魔法…自分の体に関して気付いた事があるか?」
「へ?そうですね…胸の奥の辺りが少し熱くなったような……?」
「やっぱ、本って凄いな」
「どういう事です?」
「ああ、何かの要因で魔法に目覚めた場合、体に何らかの変化が訪れるらしい、ちなみにクリムの場合、炎属性に目覚めたんじゃないか?」
まあ、赤毛だったし、性格的には……分からないが髪色に関しては炎属性の特徴である赤だな。
ちなみに風は緑、水、氷は青か水色、雷は金髪、土は茶色、闇は黒、光は白など、属性によってその人の髪の色が違うらしい。もちろん例外もあるが。
性格も属性によって大体決ってるらしく、風はおっとり、炎は熱血、水、氷はクール、土は朗らか、雷は傲慢、闇は非道、光は信仰深いなどだな。これも例外はある。
「俺は町に帰ったらいくらでも新しいもの作れるからな、これは貰っておけ」
「ありがとう…ございます…」
なんか顔が赤くなってるぞ……俺からのプレゼントでまたフラグが立ったか?
……もうあまり気にしない方がいいか。だんだん自分が自意識過剰に思えてしまう。
「なら、早いとこ洞窟を抜けるぞ」
「はい」
幸い、あまり入り組んでる事は無く、広い為、動きやすい洞窟ではある。まあ、馬車が通れるんだから当たり前か。
こうして俺たちは、洞窟の出口目指して、先へと進んでいった。




