レントVSクリム
「……っ!」
「はあっ!」
クリムは試合が始まった瞬間、目にも止まらぬ速さで近付き、持っている二つの短剣で攻撃を仕掛けてきた。
予想以上に速い。見た目からシーフ系とは思っていたが……かなり動きが洗練されてやがる。
だが……!
「これなら……!」
俺は大剣を大きく横に振り、ジャンプでかわし、無防備になったクリムに向け、再び剣を振る……が。
「は?」
クリムは空中でもう一回ジャンプして、俺の攻撃をかわした。
「どういう理屈だ……」
「これで……決めるっ!」
そう言い、今度は何回も空中でジャンプし、多方向から素早い攻撃を繰り出してくる。
「ったく……厄介な……おっと」
俺はクリムの攻撃を避けたが、仮面が取れてしまった。
「あなたは……!」
前にも会ったからか、少し驚いた表情をしたクリムだったが……。
「……っ!」
いきなり攻撃してきた……さっきよりも攻撃が激しいな。
「もしかして……怒ってるのか?」
「見逃してもらった時は優しい人だと思ったのに……!」
もしかして……いい人だと思った俺が闇バトルなんぞに手を出して幻滅した……ということか?
だったらなんでこの子は闇バトルに出てるんだ?
「お前も…闇バトルに出てるだろうが!あいつらと同類だろ?」
「あんな奴らと一緒にしないで下さい!」
「ならなんでお前は闇バトルに出てる?」
「素直に言うとでも……?」
ちなみに会話しながらも、クリムの攻撃は止むことは無い。ここは脅して聞くか……。
「別に無理に聞きだすことはしない、だがな……あいつらと同類だってんなら、容赦なくお前を殺す」
可哀想だが……クズだったならここの戦力を潰す為に殺すしかない……。
「……っ!法外な金額を用意しないと……あの薬は買えない」
諦めたかのようにクリムは話し出した。しかし薬か……これだけじゃまだ分からないな。
「わたしだって……こんなのには頼りたくなかった……けど!」
だんだんクリムが涙目になってくる……少し気まずい。
「これ以上時間が掛かれば……お母さんが……!」
繋がった。重病の母さんを治すのに必要な薬の代金か……重い……。
「その為に…あなたには死んでもらう……!」
こっちも黙ってやられるわけにはいかないが……さて、どうしたもんか……。
「棄権しないか?」
「断る!それにあなたを殺せれば……薬に手が届く!」
そうなんだよなあ。闇バトルで賞金を持っている奴に勝てれば全財産奪えるもんなあ……。
「それに……あなたが戦っている理由はなに?あの言い方……まるで自分は他とは違う風に聞こえる」
「ん?ああ、それなら理由は簡単だ」
というかこの依頼を受けた理由はこれしかない。
「莫大な金だ」
「やっぱりあなたも同じじゃない!」
クズかそうじゃないかでいえば違うがな……俺は依頼で来てるんだ。もちろん言わないが。
「これ以上話しても無駄……本当に死んでもらう」
そう言い、一気に間合いを詰め、攻撃してくる。
「……っ!重い……」
「あなたの装備を見れば鈍重なのは分かる……なら多少隙ができても強い一撃を叩きこむ!」
確かにこの戦法は間違いじゃない……だがそれは本当に鈍重な奴にする戦法だ。
「甘い……」
俺は剣を捨て、少し後ろに下がる。
「何のつもりかは知らないけど……これで終わりっ!」
間合いを詰めながら攻撃しようとするクリムに対し、俺はある事を決断した。




