謎の男
今回から、闇バトル編、スタートです。
「ヘイ!いいかな?」
何か、急に変な男に話しかけられた。
何その西部劇に出てきそうなカウボーイファッション。
「……なんだ?」
俺は仕方なくその男と話をすることになる。
「おう!おれの名はラスタ、あんた、レントって冒険者だろ?」
「ああ、そうだが?」
「依頼を頼みたい」
「そんなもんギルドをと……」
「極秘の依頼だ」
いきなり男が真面目な表情になり言ってきた。
「この件はギルド長と…武器屋の店主ぐらいにしか明かさないでくれ」
「……一体どういう依頼だ?」
「まずはこれを……」
そう言って男が渡してきたのは一枚の招待状……そしてそれには……。
「闇バトル……」
「そう…法で定められていない場所、ルールで戦い……法外な賞金を得る……それが闇バトル…君にはそこで一番になってもらいたい」
つまり俺がこれに出場しろと……一体何のつもりだが知らないが……。
「もちろん報酬は弾むよ…何たって、報酬は闇バトルで得た法外な賞金なのだから」
「……本気か?」
「ああ、んで、ギルド長には一応報告は必要だろうし、武器屋には……君の闇バトル用の装備を作ってもらう為に……おれの計画を知ってもらう必要があるからね」
計画……またきな臭い依頼を持ちこんできたものだ……教団関係者か?一応こいつの事は疑うに越したことは無い……。
「で、どうだい?この依頼……受けてくれるかな?」
「お前の目的は何だ?それを知らないと納得は出来んな」
「そうだね…おれの計画、それは……」
俺とラスタ…だったかな?……は二人でギルド長に依頼について正式に許可をもらいに来ている。
「ということで御座いまして」
「なんなら……なにも問題はあるまい……別にわざわざ来なくてもな……面倒だし」
「おいギルド長……」
やる気ねえ……こんなのがギルド長で大丈夫かよ……。今さらだが。
「ありがとうございます」
ラスタ……こいつは名前で呼ぶ気はしないな。男がギルド長と雑談をしている間俺はアリスに話しかけられた。
「レントさん、誰です?あの人」
「何だ?アリスでも知らないのか?」
「へ?だってあの人、この町の人じゃないですよね……というか外国の方じゃないですか?」
アリスの言いたい事なんとなくは分かる。俺もこの世界に来てだいぶ時間が経った。とりあえずはティスカ王国の人間の顔の作りとかそういうのはなんとなく分かってきた。
だがこの男はどう見ても異国から来た奴だ。
「たぶんあの容姿は……グラン共和国あたりですかね」
「確かに……ランサーに……似ている訳ではないが…っぽいな」
「ところであの人は何の用があって来たんです?」
本当の事を言うわけには……いかないな。まあ、嘘を付くつもりもないが。
「俺はあの男から指名で極秘の依頼が入っている…とだけ言っておく」
「なるほど…がんばってくださいね」
「ああ、もちろんだ」
俺はアリスの頭にポンっと手を置く。
「レントさん……」
「アリス……」
「準備はいいかな?レント」
この男……アリスと良い雰囲気になってたのを……!
「あなたは…」
「アリス・エアードです」
「レントを借りていきますがよろしいですかな?」
「ええ、がんばってください」
「もとろんですとも」
やけに腰が低いな。貴族には敬意を払うってか?
というわけで武器屋にやって来た。
「頼んでたもの、出来てるかな?」
「おう、もちろんだ」
「おっさんとはとっくに話を付けてたのかよ」
こいつ…もし俺が断わってたんならどうするつもりだったんだ?
「ああ、君は多分引き受けてくれると思っていたからね」
随分と信頼されてんな、俺。
「見てくれ、自信作だ!」
そう言っておっさんが出したのは鎧一式……デザインと色が凄い禍々しいんだが……。
「闇バトルに出るんだ…似合うぞ?」
「おっさん……ノリノリだな」
正直言ってこの中二臭いセンスの鎧は蒼馬が似合う気がする。
まあ、俺も格好いいとは思ってんだけども……。
「はあ……仕方ない」
こうして、俺の極依頼が始まったのであった。




